トークを振り返る「東北の未来を考える」
2011/08/22
3回目のトークは三瀬夏之介さん(日本画コース准教授)と馬場正尊さん(建築環境デザイン学科准教授)による対談。
実はこのふたり、お互いに顔は知っていたけれども、きちんと話をするのは初めてだそうです。
まずは三瀬さんから。
地震の前からチュートリアル「東北画は可能か?」のメンバーは、リアスアーク美術館で行う展示のため、大きな方舟を描いた絵の共同制作を行っていました。
ところが震災が起こり、まさに東北の地は旧約聖書に出てくる「ノアの方舟」状態となったのです。
展覧会が行われるはずだった気仙沼にあるリアスアーク美術館は、震災の被害を受け、再開の目処はまだ立っていません。
こちらがその「方舟計画」。
リアスアークでの展示は中止になりましたが、その代り仙台にあるenomaで展覧会が行われました。
展覧会会期:2011.7.19-7.31
馬場さんはまず建築家としてのお仕事、R不動産について説明してくださいました。
東京R不動産
http://www.realtokyoestate.co.jp/
山形R不動産
http://www.realyamagataestate.jp/
一方、建築環境デザインの学生たちも、<理想の東北>についてアイディアを出し合い、ひとつの絵をまとめたそうです。
それは「まんが日本昔ばなし」に出てくるような、昔ながらの田園風景が広がる絵でした。
建築の学生が考える<未来の東北像>というと、
高層ビルが立ち並ぶ近未来的な都市が出てくるんじゃないかとイメージしていましたが、そうではなかったんです。
みんなの求めている風景は、結局のところ緑豊かで素朴な田舎の風景なんだな、と改めて思いました。
三瀬さん
「アーティストにとってのリアリティがこんなにきついものとは・・・」
<リアリティ>について語るふたり。
おふたりから会場へ質問。
「この中で、芸術学部とデザイン工学部の比率ってどれくらいなんだろう?」
なんと8割が芸術学部生でした。
会場からの質問。
「私は正直、テレビで被災の映像を見ても冷静というか、心を動かされることはなくて、『なるようになるんだから』って思ってしまいます。先生方が<リアリティ>について話されているのを聞いて、自分にとっての<リアリティ>が何なのかよくわからなくなりました」
馬場「僕も君の言ってることがわかるよ。僕も地震のとき日本に居なかったから、喪失感みたいなものがあって。。たとえば普段でもみんなが盛り上がっているときに冷静なもう一人の自分がいて、不感症なんじゃないかなって思うことがある。だからそういうスタンスがあっても間違ってないと思うよ」
「アート系の学生はスパッとくる質問が多いね。デザイン系にはあまりないから、とても新鮮」と馬場さん。
会場からの質問。
「私は関東の出身ですが、先生方も山形(東北)の出身じゃないので、東京など他の地域との温度差を感じましたか?」
馬場「物理的な距離感を感じたのは、やはり僕はその時海外にいたし、東京とも実際に距離がある。
でも距離感があるのはしょうがないことだし、僕らはその距離感で感じることを大切にしたい」
三瀬「僕は阪神淡路大震災を経験しているので、そのときにも温度差を感じました。同じ被災地でも全然違っていて、個人個人でも違うし、やはりケースバイケースじゃないのかな」
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「東北の未来を考える」には、みんなの前向きな気持ちが必要です。
東北の未来をしょって立つ若者たちよ!
自分たちの将来だけでなく、さらに次の世代へ向けたよりよい環境づくりを、一緒に考えていきましょう。
「東北って素敵なところだよね」と、みんなが憧れる理想郷になりますように・・・
トークを終えてそんなことを考えました。
企画・ナビゲーター:和田菜穂子(美術館大学センター准教授)