【「戦略」公開講座報告】「「百姓」繚乱の江戸時代 ―東北の村人たちの生き方―」(6月21日)
公開講座「「百姓」繚乱の江戸時代 ―東北の村人たちの生き方―」が開催された。
はじめに本研究センター講師の中村(東北芸術工科大学東北文化研究センター)により、シンポジウムの趣旨説明「なぜ、今「百姓」なのか?」が行われ、江戸時代の「百姓」とはどのような存在だったか、農民だけでなく海の民・山の民も含まれるとの説明がなされ、特に「豪農」についての研究上の評価が近年変化している点をシンポジウムの課題として設定した。これを受けて、渡辺尚志氏(一橋大学大学院社会学研究科)による講演「江戸時代出羽国村山地方の百姓たち」と斎藤善之氏(東北学院大学経営学部)による講演「江戸時代三陸沿岸の大規模イエ経営体と村社会」が行われた。
渡辺氏は、江戸時代に領主がばらばらだった村山地方において、領域を越えて百姓たちが結束する地域自治であった郡中議定のあり方について、わかりやすく解説され、彼らは年貢米の輸送にも責任を持った点など、具体的事例を通してその性格などを述べられた。また斎藤氏は、東日本大震災にて被災した三陸唐桑地方の鈴木家の事例を紹介して、鈴木家が代々村社会において果たしてきた役割を明らかにされた。
講演2本ののち、パネルディスカッション「東北の沿岸と内陸をつないで考える」が行われ、ここで斎藤氏の講演の舞台となった鈴木家の現当主・鈴木伸太郎氏によって、特に東日本大震災の時に鈴木家の果たした役割などについて、お話しがあった。鈴木氏のお話は、「豪農」と呼ばれていた旧家が今なお地域社会にて果たすべき、あるいは期待されている役割のあることが明確になり、大変興味深かった。
今回のシンポジウムは会場が満員となるほどの盛況ぶりであり、村や百姓の歴史に対する関心の高さが伺えた。
(佐藤健治)