お知らせ

赤坂憲雄 『婆のいざない 地域学へ』


「おれは河童を見たことがある。若いころのことだ。夕方だったよ。
 裏の畑に、河童が立っていたんだ。河童はキュウリをくわえて、パンツ一丁だったな。
 うん、あれは隣のアンチャだった…」

わたしはおそらく、東北の婆が物語りしてくれた、
もうひとつの『遠野物語』のかけらとの出会いがなければ、
民俗学へも、東北の地へも赴くことがなかったにちがいないと、
いまにして、ある深い確信とともに思います。(本文より)