赤坂憲雄 『婆のいざない 地域学へ』 2010年4月11日 「おれは河童を見たことがある。若いころのことだ。夕方だったよ。 裏の畑に、河童が立っていたんだ。河童はキュウリをくわえて、パンツ一丁だったな。 うん、あれは隣のアンチャだった…」 わたしはおそらく、東北の婆が物語りしてくれた、もうひとつの『遠野物語』のかけらとの出会いがなければ、民俗学へも、東北の地へも赴くことがなかったにちがいないと、いまにして、ある深い確信とともに思います。(本文より)