関野吉晴写真展「海のグレートジャーニー~人類の旅~」
期間:平成25年6月12日(水)―6月28日(金)9:00−17:00 土曜日16時閉館、日曜休館
会場:東北芸術工科大学大学本館7階ギャラリー 入場無料
主催:東北芸術工科大学東北文化研究センター(問い合わせ:TEL 023-627-2168)
【期間中特別イベント】
6月22日(土) 関野吉晴氏来場
映画上映会&トーク「僕らのカヌーができるまで」
13:30-16:30 本館408講義室
高校生以下・東北文化友の会会員・本学学生・本学教職員 無料
一般・他大学生 500円
申し込み・問い合わせ/東北芸術工科大学東北文化研究センター(TEL 023-627-2168)
【ごあいさつ】
本企画展は、現在、本研究センターが取り組んでいる研究プロジェクト「文部科学省私立大学戦略的研究基盤形成支援事業 環境動態を視点とした地域社会と集落形成に関する総合的研究」に関わる活動の一環として実施するものです。
このプロジェクトでは、日本の東北地方を中心として、広く全国や海外も視野に入れながら、先史から現代にいたるまでの人びとの生き方と命をつないでゆく場としての集落の歴史的文脈を解明し、これをふまえて来たるべき次世代型の集落・地域社会像を創出することを目指しています。
本企画展では、「海のグレートジャーニー」という壮大な人類史の旅の再現を通して、関野吉晴氏が各地で体験してきたさまざまな人々との出会いと発見のドラマをご紹介いたします。これからの時代を生きて行こうとする開拓者であり、冒険者でもある若者たちに多くの生き方へのヒントを与えてくれる展示になるであろうと思います。ぜひご高覧ください。
東北芸術工科大学東北文化研究センター所長・歴史遺産学科教授 田口洋美
【開催にあたり】
アフリカで生まれた人類は世界中に拡散し、悠久の時を経て、やがて南米最南端まで到達しました。そのルートをイギリスの考古学者は「グレートジャーニー」と名づけました。1993年から2002年にかけて、私はそのルートを逆ルートで自分の腕力と脚力で移動しました。その後、2004年からは太古の時代に人類が日本列島にやってきたルートを辿りました。数多くあるコースの中で主要な三つのコースを選びました。まずは、シベリアからサハリン経由で北海道に来るルート。次に、ヒマラヤの山麓を通って、中国、朝鮮半島経由で日本まで来るルートを辿りました。
最後のルートとして、インドネシアとマレーシアとインドシナ半島が融合し形づくられていたスンダランドから、海を通り日本列島へとやって来た人類の足跡を辿りました。カヌーでの移動です。
そのカヌー制作にはひとつのコンセプトがありました。「自然からすべての素材をとって来て、自分たちで作る」ということ。舟材となる大木を伐る斧。あるいは船を加工するための道具。それら道具をつくるための材料集めから自分たちでおこないました。インドネシアではスラウェシ島のマンダール人に協力してもらい、大木を伐り、半年がかりでカヌーを完成させました。船体、帆、アウトリガー、ロープ、紐、塗装すべてが自然からとってきたものを利用しました。
インドネシアのスラウェシ島から沖縄の石垣島までおよそ4700km。それを3年がかりで航海しました。今回の旅では島影と星だけを頼りとし、コンパスやGPS、チャート(海図)は使いませんでした。五感を使いナビゲーションした太古の人々に思いを馳せながら航海したかったからです。
しかし、風任せ、潮任せの旅でカヌーは思うように進みませんでした。航海を始めた10日間で120kmしか進めなかった時は暗い気持になりましたが、我慢強く、待ち、漕ぎ、帆走して、最後に台湾を出た時には2日で300km近く走りました。改めて自然は恵みを与えてくれるが、恐ろしいものでもあり、思いどおりにはならないものだと実感しました。
今回の写真は、そのようなカヌー作り、航海とともに漂海民バジョなど海に適応して暮らす人々の姿をとらえた写真を展示しました。4年間専念した「海のグレートジャーニー」の記録です。ご覧いただければ幸いです。
関野吉晴