活動報告

【「戦略」公開シンポジウム報告】「日本と中国にみる文化継承リスク―伝統は生き残れるか―」(2月8日)

 

東北地方にあまたとある農山漁村では、高度経済成長期以降の産業構造の変化に伴い、第一次産業が低迷し、生業の多様化が進みつつあります。また急速に進む少子高齢化や都市部への若年人口の流出ともあいまり、これまで集落(村)内で守られてきた社会制度(しきたり)を維持してゆくことや、民俗芸能をはじめ様々な地域文化を継承することが困難になっています。その現状とそこから派生する諸問題を整理し直し、理解することが、今後の地域再生や集落再編のあり方を考える上できわめて重要であると言えます。
本研究プロジェクト(「戦略」)では、当問題について考えるのにあたり、国内事例とともに中国の少数民族社会にも注目しています。黒竜江省や内モンゴル自治区といった東北部あるいは雲南省などを中心に、中国には数多くの少数民族が暮らしており、なかには遊牧狩猟活動など独自の生業活動を営んできた集団もいます。しかし、国家的な定住化政策や経済のグローバル化などの影響を受け近年、その生活が変化しています。
今回のシンポジウムでは、国内外から3名の研究者をお招きし、中国東北部と雲南省における文化継承の現状について報告していただきました。そして、それらをふまえ、現代社会における伝統的生業の変化・置換に伴う文化継承の問題についてパネルディスカッションで話し合われました。このようなシンポジウムを開催することで、早急に何らかの結論をだせるものではないのですが、まずは“文化継承リスク”という問題を提起することができ、実りのあるシンポジウムとなりました。

(蛯原 一平)