東北復興支援機構 | TRSO

荒井良二とふらっぐしっぷ多賀城

8月29日。
宮城県多賀城市は、3番目の『ふらっぐしっぷ』寄港地です。
震災後、はじめて石巻入りしたときは、まだ高速道路が復旧していなくて、国道45号線で仙台→多賀城→塩竈→松島→石巻と車で移動したのですが、その時の多賀城周辺の国道の惨状は酷いものでした。多賀城に入ったとたん、風景が一変するのです。
信号はみんな止まっていて、マクドナルドやディーラーなど、おなじみの大型店舗に大破した車が突っ込み、工業港から吐き出されたヘドロや瓦礫が累々と積み上がっていました。3.11から5ヶ月。現在の国道45号線は、すでに営業再開した大型店も多く、国道沿いは表向き震災前の風景を取り戻したように見えます。

多賀城を抜けて塩竈、松島と石巻に近づくにつれ、またその先の女川、南三陸ではさらに…(まだらではあるものの)津波の被害が激しくなっていく沿岸部の震災グラデーション。その時の強烈な移動体験が、『ふらっぐしっぷ』のキャラバン型の展開につながっています。
つまり、被害の大きかった三陸方面から溯上するように、東北のキャピタル・仙台に向かっていくフラッグの行進。災害ボランティアセンターも、地域の復興プランも、自治体ごとにつくられていますが、被災した港町同士の復興の絆をパブリックアートによって可視化できないだろうか? と。

多賀城入りの前に塩竈を再訪問した荒井さん。

多賀城市市民サポートセンターには、現地コーディネーションをお願いしているビルドフルーガス・高田彩さんの呼びかけにより、多賀城市民約40名に集まっていただきました。6月の塩竈とはちがって、赤ちゃん連れのお母さんが多かったのが印象的。
荒井さんのイベントでは、小さな子どもたちがたくさん集まるので、僕はいつも「子どもたちが泣いたり騒いだりしても、みなさんどうぞ寛容に。小さい子どもたちとの時間を一緒に楽しみましょう!」とお願いするようにしています。はじめそう言っておくと、乳児を連れたお母さんも周囲をあまり気にしないですむし、他の大人たちも気兼ねなく赤ちゃんと遊べるので。

この日の宮城県沿岸部は久しぶりの晴天で、海からの風が涼しく心地よく、エアコンは不要。窓も扉も開け放っていました。荒井さんは時折、会場との丁々発止 を楽しみながら、2時間で4枚のフラッグをいつもの調子で一心不乱に描き上げました。赤ちゃんたちはクレヨンを食べたり(大騒ぎ!)、荒井さんの描いてる ヨコで昼寝したり、おむつを替えに一時退場したり、泣いたり踊ったりしていました。
母親たちはお互いの子どもにちょっかいを出しながら、井戸端会議を楽しんでいます。荒井さんのファンたちは…コーヒーエイドが提供するコーヒーを飲みながら、ゆったりと荒井さんの描く絵物語や、母子の楽しむ姿を眺めていました。


穏やかで平和な午後。

しかし、描きながらのおしゃべりに耳を傾けると「この子は避難所に居た時に生まれたんですよ。いま5ヶ月なんです」「えー そうなんだ。たいへんだったねぇ…」といった会話。この平和な午後に辿り着くまでに、多賀城のみなさんに、さまざまなドラマがあったことがうかがえます。また、地元図書館の司書さんからは、蔵書9千冊が津波に流されてしまったと聞きました。図書館が完全復旧するメドは現時点でもまったく立っていないそうです。

多賀城で生まれたフラッグは、『むかしはみらいをしっている(鳩)』、『ありがとう おとなりさん(クローバー)』、『あげる/あがる(花火)』の4枚。「おとなりさん〜」のコピーは会場の若い女性から寄せられたもの。クローバーと花火も、会場からのリクエストで荒井さんが描きました。

この4枚の原画を塩竈とおなじようにフラッグに仕立てて、多賀城市の被災した図書館と、小児科病院に設置させていただくことにしました。この他、子どもたちが描いた絵も、何枚か荒井さんが描き加えて、小さな旗にする予定です。

次回の『荒井良二とふらっぐしっぷ』は、9/18(日)14:00〜『七ヶ浜国際村』。そして翌9/19(日)の仙台キャラバンはぐっと拡大して、フェス形式で開催いたします。
仙台会場の『せんだい演劇工房 10-BOX』は仙台市民限定ではなく、どなたでも無料で参加できます。ブックカフェやワークショップ、お楽しみサプライズ企画も荒井さんと考え中。みなさんのお越しをお待ちしておりますぞ!

宮本武典(TRSOプログラムディレクター)

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『荒井良二とふらっぐしっぷ』仙台キャラバン
2011年9月19日[月・祝]13:30→16:30(開場 13:00)
会場:せんだい演劇工房10-BOX 〒984-0015(宮城県仙台市若林区卸町2-12-9)
最 終回の仙台では、これまでの巡航で生まれた原画を実際のフラッグにして一堂にお披露目するとともに、会場となる10-BOXの屋外テラスで『ふらっぐしっ ぷ』の総仕上げとなる、巨大な○○型オブジェを荒井さんが公開制作します。ぜひ目撃してください!荒井良二とふらっぐしっぷキャラバン。最後の寄港地・仙 台でのフィナーレ!