たいていの大学では紀要と呼ばれる論文誌を発行している。学科やコースごとに発行している場合もあれば、大学単体で一つ持っている場合もある。持っていないと研究者同士の会話で「え、紀要ないすんか!?」と言われてしまうほどである。小学生のときにドラゴンクエストをやっていなかったら、「まじで! なんで?」と聞かれてしまうようなものである。昔はamazonなどなかったし、予約販売ということもなかった。並んで買うしかなかったのだ。小学生にはハードルが高いといえる。私は並びましたが。どちらにせよ、年度ごとに発行されるケースが多く、したがって3月という月は帳尻合わせのように紀要が多く発行される。
昔の紀要は査読制度が課されておらず、奇想奇天烈な論文が掲載されてしまうことが多かった。数年前にネットで話題になった某大学の某論文がわかりやすいであろう。日本はムー大陸だったか、ユダヤ人の末裔だったかだそうだ(なんだってー!?)。最近はさすがにこのような論文が載るとブランド名を傷つけてしまう恐れがあるためか、純粋に学問上の知見のためか査読が行われるケースが散見されるようになっている。もちろん、本学紀要も査読が行われており、それをクリアした論文が掲載されることになる。したがって「STAP細胞はあります!」と書いても、掲載されないかもしれない。すべては査読次第である。
ようやく本題だが、『東北芸術工科大学紀要』23号に文芸学科の紹介論文(というのだろうか)「文芸学科における授業構築・運営と展望」が掲載されている。最近の流れとして紀要論文は研究成果の社会還元の一つとして考えられており、オープンアクセスの傾向にある。本学もその流れの中にあり、23号からは完全電子化されたのである。ぜひ、ご一読いただきたい。
もう一つ出ている。学習院大学東洋文化研究所の紀要である『東洋文化研究』18号に拙稿「物語文化と歴史イメージ、コンテンツツーリズム」が掲載されている。この雑誌は基本的に東洋史研究が多く掲載されており、フィールドが日本であり、さらにはエンターテイメントに関して述べた論文が掲載されていることは、ほとんどなかったのではないだろうか。私の論文だけが精いっぱい背伸びをし、ほかに引けを取らないように頑張って掲載されているような感じがしてならない。内容としては、ここ数年取り組んでいる歴史イメージに関して「岩」、「岩見重太郎」、「猿飛佐助」という三点から考え始め、コンテンツツーリズムの文脈を踏まえながら、物語文化と現実世界との連関性について述べたものになる。大学図書館や大きな公立図書館、国会図書館には所蔵されると思うので、近場にない場合は所属自治体や大学図書館を通じてコピー取り寄せを申請すると手に入る。
なお、この論文のなかで言及した作品で、純粋に好きな作品は『朝霧の巫女』と『花咲くいろは』である。『花咲くいろは』はクラムボンの主題歌もいい。
BGM:クラムボン「はなさくいろは」