文芸戦争と青色ラジオ その1 ―文芸ラジオ3号紹介―

 『文芸ラジオ』3号が発売になる。一年に一回、毎年のように販売されていくことができればよいと考えながら編集作業を行ってきたが、これで三回目。次の号が出れば、後世からカストリ雑誌と呼ばれることはないだろう。何より大学という公共性の高い組織の発行物である。売上や流行の影響はそれなりに受けるだろうが、それでも変わらずに出し続けるように尽力したい。というより公共空間を背負っている以上はすぐに辞めてしまっては、信頼が地に落ちてしまうし、何よりカッコ悪い。……と、これ以上書くと愚痴になっていく気がするので、『文芸ラジオ』3号の内容を紹介しながら思うところを書いていくことにする。肩の力を抜いて書くので、読む人もまあ、気楽にして欲しい。アニメを見ながら読んでもいい。

 3号の表紙は押切もえさんである。押切さんは皆さん、ご存知の通りモデルであり、タレントであり、そして小説家でもある。押切さんを初めて認識したのは『英語でしゃべらナイト』ぐらいからなので、実は遅い。ファッション誌を読む習慣がないのと、バラエティ番組を見ていなかったのでタレント活動を始められたときは目に入っていなかったが、次第にテレビで見かけるようになり、著名なモデルさんということは理解していた。そして2016年、『永遠とは違う一日』を手に取り、『文芸ラジオ』の活動でお会いすることになってしまう。

 ということは何があるかというと、特段、緊張することはなく、話を聞くことが出来て、良い経験だったのである。一番、驚いたのは『浅き夢見し』が初めて書いた小説だということ。その後、『永遠とは違う一日』まで作品レベルを一気に高めることができることを考えると「文化資本とは一体……」という気分になったものである。あのとき会場にいた人はほとんど気付いていないだろうが、ナチュラルに「この人、すげえ」と私は思い、凍り付いていた。さて緊張しなかったと書いたが、実は裏方的には冷や冷やする出来事がたくさん起こり、その一つは表紙に友情出演の猫のサンちゃんである。

 サンちゃん(猫)はその女優っぷりを遺憾なく発揮していただきまして、編集部メンバーおよび押切さんやスタッフの皆さんが逃げる彼女を追いかけたのである……。サンちゃん(大女優)が機嫌を損ねると面倒ということがよく分かったが、最後には押切さんとカメラマンの西槇太一さん、お二人のプロの仕事により、ベストショットが仕上がった。表紙で押切さんの頭が切れてしまっているのは、本当にギリギリのカットだったのだ。ファンの皆さん、すみません。でも中身には様々な押切さんの写真が掲載されているので楽しみにして欲しい。もちろん少しだけサンちゃん(空前絶後の大女優)もいるよ。

 もう一つドキドキしたのは、グラウンドでの撮影の際、「野球好きなんです」と仰る押切さんである。もう皆さん、ご存知だろうが、押切さんの旦那さんは千葉ロッテのエースピッチャー涌井秀章さんなのだが、この撮影時はまだそうではなく……。どう会話を繋げと。「わたしはオリックス・バファローズのファンなんです」という返事ではないだろう。それは敵ではないか。いや、そもそもいいのか? うーん、何がというか。と煩悶としていたら、カメラマンの西槇さんが「スポーツお好きなんですね」と切り返していた。さすが、プロだ。そして今年のロッテは心配だが、私はオリックスファンである。お互い、それどころではない。

(その2に続く予定)