【「戦略」公開シンポジウム報告】「八戸の集落一万年」(12月14日)
東北芸術工科大学東北文化研究センターでは、地域再生の学として「東北学」を提唱し、その実践的研究として平成19年度から2期、10年間にわたり文部科学省私立大学学術研究高度化推進事業「オープン・リサーチ・センター整備事業」を実施しています。その流れを汲む本事業においては、生活の場としての「集落」に焦点を当てています。
古く八戸においては、大正-昭和初期に設立された大山史前学研究所(東京)などによる是川遺跡の発掘調査に始まり、戦後の早稲田大学や慶応義塾大学の調査、高度経済成長期に飛躍的に増加した緊急発掘調査等によって、質量ともにきわめて重要な遺跡が多数調査されています。八戸はその歴史的特質から、東北における集落一万年の変遷を辿ることができる優れたフィールドです。
この度考古班では、八戸市教育委員会のご協力を受け、八戸における集落変遷一万年のあいだで大きな変化の画期となったと考えられる縄文時代早・前・中期、縄文時代後・晩期、そして弥生・古代以降の3回に分けて、公開講座を開く計画を立てました。今回の公開講座「八戸の集落一万年:なぜムラができ、消えたか?vol.1」では、八戸における縄文時代前半期の集落の移り変わりについて、立地条件の変化やそれに関係する居住痕跡、住居の消長などの具体的な事例から、掘り下げました。
質疑応答では会場から熱い質問が寄せられました。東北・縄文社会の複雑さを平易な言葉で言い尽くすまでには至らなかったものの、研究の深みを再発見するには充分な実りある講座になったと思います。
(長井謙治)