【「戦略」展示報告】「謝黎コレクション展 北と南の混淆 ~旗袍に隠された近代中国の歴史~」:2013年10月19日―11月5日
去る10月19日から11月5日まで、本学本館7階のギャラリーにて謝黎(本学歴史遺産学科専任講師、東文研研究員)がこれまで収集してきた、チャイナドレス(旗袍)のコレクション展が「戦略」の一環で開催されました。
震災や少子高齢化の進行にともない地域再生や集落再編のありかたが問われている現代社会。「戦略」では、集落という「場」に目を向け、それらが現在に至るまでいかに維持され、あるいは変化してきたのかを明らかにしてゆくことで、今後の集落形成に求められる新たな理念の構築を目指しています。「戦略」では、国内、とくに東北地方の集落を主な研究対象としていますが、中国の少数民族の集落での現地調査もあわせて進めています。そこでは、狩猟採集生活や遊牧狩猟生活を送っていた少数民族の人々が定住化政策などの影響を受け、いかに生業を変え、集落をつくり、暮らしているのかについて具体的に探ることを主なテーマとしています。
そして、そうした少数民族の暮らしを理解する上で重要となるのが、民族間あるいは主流社会との文化交流という視点です。中国では歴史の早い段階から様々な分野で北方と南方の文化は交流してきました。また、南北間での対立や抗争も絶えませんでした。そのような「北」と「南」の文化の混淆が、じつはチャイナドレス(旗袍)という衣装のデザインの変化に見て取れるのです。本企画では、チャイナドレスの持つ文化的、歴史的価値をお伝えし、ファッションにとどまらない魅力を発見していただくことを目的としました。
これまで謝が集めてきたチャイナドレスは800点を越えるといい、そのうち約150点が会場に展示されました。神戸ファッション美術館に企画協力をいただき、浜田久仁雄氏(神戸ファッション美術館主席学芸員)、大山弘美氏(同館衣装コーディネーター)および謝の監修のもと、チャイナドレスが時代の変遷に沿う形で優美に配置されました。また、同じく謝が、調査で収集した少数民族の民族衣装を紹介するコーナーも会場には併設されました。会期中の10月23日と11月5日には、会場においてギャラリートークもおこなわれました。
7階の大ギャラリーを埋め尽くしたチャイナドレスの数々。あまりの素朴さに思わず見入ってしまうもの。あるいは、逆に、艶やかな色で目を楽しませてくれるもの。チャイナドレスのバリエーションの多さに驚かされるとともに、その背景に漂う近代中国の雰囲気も感じることができ、観る者を非日常の世界へと誘い、安らぎと感動を与えてくれる展覧会となりました。
(以上、『東北文化友の会会報 まんだら』54号に所収されたものを加筆訂正)
(蛯原 一平)