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【公開講座】放射能汚染と東北の自然

【公開講座】放射能汚染と東北の自然 TUADリンク

【講 師】  田口洋美(東北芸術工科大学教授・東北文化研究センター副所長)
【日 時】  平成23年12月21日(水)18:00−19:45
【会 場】  東北芸術工科大学本館2階207講義室
【主 催】  東北芸術工科大学東北文化研究センター
【入場料】  一般500円、他大学生・高校生以下・本学学生・教職員無料
【申込み】  東北芸術工科大学東北文化研究センター (TEL:023-627-2168)

【開催にあたり】

 今、東北の自然が危うい。

 他でもない、福島第一原子力発電所の事故でイノシシなど野生動物たちから放射性セシウムが検出される実態が明らかとなってきたからである。

 8月に試験的捕獲が行われた福島県北東部に生息していたイノシシの捕獲個体12頭から放射性セシウムが肉1キログラムあたり563〜3221ベクレル(Bq/kg)という国の暫定基準値を超えた値が検出された。また、栃木県日光市足尾のツキノワグマから677ベクレル(Bq/kg)の放射性セシウムが検出されてもいる。現時点では山形県下において国の基準値を上回る汚染個体は確認されていないが、10月12日から11月30日にかけて汚染状況の調査が実施されている。このような状況を受けて、11月9日付で内閣総理大臣から福島県知事に対し福島県の一部地域において捕獲されたイノシシ肉について、摂取制限および出荷制限が指示されたことは新聞報道や厚生労働省のHP等で報じられた。

 現在、最も危惧されるのは阿武隈山地や栃木・福島県境の日光から帝釈山地東側などの山地および丘陵地帯に生息している野生動物がどのような状態にあるかがまだ詳細について明らかとなっていないことである。そして東北の狩猟がこの影響下でどのように変化するかである。ほとんどの狩猟者(猟師)は野生鳥獣を食資源として活用できること、また農作物被害等の軽減を目的に狩猟免許を取得し、狩猟を継続しているが、この放射能汚染問題で狩猟者の減少に拍車が掛かると、当然捕獲圧は弱まり、個体数は増加し、県境を越えて汚染個体と非汚染個体の混在も進むことが予想される。

 近年、都市や人口密集地周辺に大型獣の出没が多発する傾向にあったが、この放射能汚染で自然と人間の圧力の均衡が益々崩れることになる。今回の公開講座では、この放射能汚染問題と野生動物の問題に焦点を絞り、今後の方向性をさぐる。
                 田口洋美(東北芸術工科大学教授・東北文化研究センター副所長)

講演者:田口 洋美(たぐち・ひろみ)

◆略歴◆ 1957年茨城県生まれ。 東北芸術工科大学芸術学部歴史遺産学科教授、 同大東北文化研究センター副所長。1996年狩猟文化研究所を設立、現在同代表を勤める。東京大学大学院博士課程修了、博士(環境学)。専門は環境学、民俗学。日本ペンクラブ、日本文藝家協会会員。著書に、『越後三面山人記』、『マタギ』、『マタギを追う旅』、『ロシア狩猟文化誌』(共著)など。