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【写真展】 東北発見! めくるめく写真の宇宙


【写真展】 東北発見! めくるめく写真の宇宙 TUADリンク

日 時:平成24年1月12日(木)〜1月26日(木)
    9:00−17:00(土曜日16時閉館、日曜休館)
会 場:東北芸術工科大学本館7階ギャラリー(入場無料)
主 催:東北芸術工科大学東北文化研究センター
問合先:東北文化研究センター(Tel:023-627-2168)

■ギャラリートーク■
日時:平成24年1月17日(火)18:00−19:00
場所:本館7Fギャラリー
講師:内藤正敏
参加:無料

ぜひご来場ください

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【開催にあたり】
この写真展は、冒頭の壁面が伊藤早樹子さんの「CORE−わたしの3・11」ではじまる。
彼女の生まれ育った自宅が石巻にあり、3・11の東日本大震災で、津浪の惨禍に襲われて
多くの知人や友人を失った。伊藤さんは、まるで自分が生きていることを確かめるかのよ
うに、家庭アルバムの中に自分自身を探して、 この作品を創った。
 今回気づいたのは、多くの学生が虫や魚や鳥など、はかなく小さな生命を写しているこ
とだった。 これは学生たちが心の奥底で3・11の東日本大震災に強い影響を受けているよ
うに思えてならない。そこで今回の写真展は「生命」をメインテーマとして会場を構成し
た。
 山崎裕さんの「生命のミクロコスモス」は、 電子顕微鏡で雑草や昆虫の1000分の1ミリ
から1ミリのミクロの世界を超拡大撮影したものだが、 地球生命35億年の生物進化の時間
が創りだした神秘な造形には圧倒される。 まるで宇宙船で別な惑星に迷いこんだみたいだ。
これと竹原優さんの「inevitable」とで壁面いっぱいに構成した。佐々木優衣さんの「イタ
チ群像」は、生きているイタチをスキャナーで撮ったもの。いずれも斬新な現代美術で、生
命の本質に肉迫している。
 草なぎ裕さんの「田沢湖・玉川流域物語」は、 彼が住む角館を流れる玉川流域が舞台。
玉川上流には玉川温泉があり、強酸性水で毒水とよばれていた。 1940年、水力発電所の
建設と農業振興のために玉川の水を田沢湖に導入した。 その結果、田沢湖は急速に酸性化
して魚類は死滅し、固有種のクニマスも絶滅した。しかし1972年からアルカリ性の石灰水
による中和対策が始まり、田沢湖や玉川流域に魚が再生しつつある。人間が自然を破壊し、
人間が自然を再生するドキュメント。 これを美しい自然写真で表現している。
 こうした自然に対して、たか橋美帆さんの「モーリオ」、佐藤詠美梨さんの「SENDAI
MIYAKO GIG」、井上和則さんの「山形」は、それぞれ盛岡、仙台、山形といった都市を
ユニークな切り口で写している。
 そして写真展の会場入口は、 私の「コアセルベーション・地球生命の発生」を飾り、最
後の壁面は「出羽三山」を展示する。
  出羽三山など、日本の修験道では、山を母胎と考え、山中の修行は、山伏が胎児となっ
て成長して出生する儀礼と意味づけられている。 山はあらゆる生命を生みだす巨大な生命
体なのである。
  NASAの火星生命探査計画に参画した科学者のJ・E・ラブロックは、膨大な科学デー
タを集め、地球は単なる無機物ではなく、大気や海洋、土壌、それにあらゆる動植物をふ
くめた総合的な複合体で、 自己調節機能をもつ巨大な生命体であるとして、これをガイア
と名づけた。
  ラブロックの説くガイア仮説は、新しい生命の思想として注目されているが、出羽三山
の修験道が本来的にもっていたのは、ガイアに近い生命観であり、これは人類未来の思想
といってよいのではなかろうか。
         東北芸術工科大学大学院教授・東北文化研究センター研究員 内藤正敏