東北ルネサンスTHE 猿まわし 〜伝統と現代 輪の中はおとぎの国〜
【開催にあたり】
本学東北文化研究センターでは、日本やアジアの文化の多様性を浮き彫りにし、この東北・山形の地から、新たな日本やアジアの文化の再構築を行うことを試みています。
このたび、その一環として、昨年に引き続き、山口県光市無形民俗文化財に指定された「周防猿まわしの会」をお招きし、 猿まわし公演を開催します。
日本における猿まわし芸能は、千年あまりの歴史をもつといわれています。日本の伝統芸能の中にあって能、狂言、歌舞伎などと並んで最も古い芸能のひとつとされており、動物をあつかった芸能としては唯一のものといっても過言ではありません。日本の猿まわしの起源は、古代中世に見られた信仰の中に求められます。大和時代、都が藤原京から平城京へ遷都した当時の708年に発行された「和同開珎」の裏面には、馬を曳く猿の絵が描かれています。当時、なぜ貨幣の裏面に駒曳き猿の絵が採用されたのか、その理由は定かではありませんが、猿は自然のカミの使いであり他の動物にはない霊力があるとされ、馬を疫病や悪霊から護る象徴的な動物と信じられていたようです。鎌倉時代から室町時代に描かれた『一遍聖絵』や『石山寺縁起絵巻』などを見ますと、当時の厩の前や横に猿が乗る台が設えてあり、そこに鎖などで繋がれた猿の姿が描かれています。当時の貴族や武家にとって、馬は貴重なものであり、これを災いから護ってくれる猿にはカミ的な力があると信じられていたのでしょう。やがてこの厩に繋がれていた猿が、特定の人々によって飼育され、武家や貴族の家々をめぐって厩を祈祷して歩くという動きが出てきます。これが猿まわしの起源なのですが、当初は芸能というよりもむしろ呪術的な色彩の濃い祈祷師、あるいは悪霊を追い払い清めるという陰陽師として位置付いていたようです。
本公演では、このような伝統的動物技芸である猿まわしの実演を通して、私たち日本人の自然(野生)に対する態度がどのように変化してきたのか、猿まわしの笑いと感動が現代社会に存在する意味を考えます。
東北芸術工科大学学長 根岸吉太郎
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日時:平成24年6月6日(水) 10:30−11:30、18:00−19:00(2回公演)
場所:東北芸術工科大学大学正面広場
出演:愛吉・源太、Qたろう・順平 (山口県光市無形民俗文化財「周防猿まわし」)
入場協力金:一般1,000円、他大学生500円、高校生以下無料、本学生・教職員無料
主催:東北芸術工科大学
申込先:東北芸術工科大学東北文化研究センター/TEL 023-627-2168
東北ルネサンス THE 猿まわし 〜伝統と現代 輪の中はおとぎの国〜 【周防猿まわしについて】
山口県光市に伝わる伝統芸能「周防猿まわし」が、平成16年、市無形民俗文化財に指定された。
全国で約100の個人・グループが猿まわしを行っているとされるが、光市教育委員会は「無形民俗文化財の指定を受けるのは、国や自治体レベルでも例がないのではないか」としている。
周防猿まわしは江戸時代から行われていたとみられており、60年代に一時途絶えた。俳優や民俗学者らが復活運動に取り組み、現在は光市に本拠地を置くプロの芸能団体「周防猿まわしの会」(村崎洋一会長)が継承し、全国各地で公演を行っている。
同会は、光市の小劇場をけいこ場として、若手調教師を育成しているほか、熊本県長陽村と山梨県富士河口湖町に専用劇場を持つ。二度の米国公演もこなし、昭和62年には、猿の初代「チョロ松」がテレビCMに出演、話題を呼んだ。
同会は「文化財として、もう一度、ふるさととの縁を確認したい」と、平成15年12月、光市教育委員会と光市に文化財指定の要望書を提出。光市教育委員会は、市文化財審議会の答申を受け、市無形民俗文化財に指定した。