【「戦略」調査報告】「阿仁根子」ブックレット作成のための第2回現地調査:伝統的罠(ウッチョウ・ゴモジ)の記録と集落調査
山に囲まれた、すり鉢状の小さな段丘に広がる秋田県北秋田市阿仁根子集落。マタギ発祥の地とも称され、明治中期には100人を超す猟師がいたと言われています。「戦略」では、この阿仁根子を調査地の一つとし、学生たちによる集落調査をおこない、集落での暮らしの移り変わりを生業活動や住まい方を中心に調べます。そしてその成果をブックレットという形にまとめ、地域へお配りすることを目指します。
今年6月に関係者へのご挨拶と予備調査をおこないました。今回はそれに続き2回目の現地調査。この阿仁でかつて用いられていた罠の記録と、集落内を見学し集落図を作成するための情報集めをおこないました。
今回、寸法を実測し、その構造や使い方の記録をおこなったのは、タヌキやイタチ、テンなど小型動物を捕るためのウッチョウと呼ばれる罠と、ゴモジと呼ばれる鳥捕獲用罠です。北秋田市が実施している「文化遺産を活かした観光振興・地域活性化事業」の一環として、地元猟師たちにより復元されたものです。罠の実測・記録作業には、「戦略」の共同研究者で、民俗建築研究所の鈴木清氏の指導を仰ぎました。
これらの罠は、秋期を中心として農耕地周辺や、人里近くの森林でかつて仕掛けられていました。マタギの狩猟というと、クマの巻き狩りなど鉄砲を用いた集団猟が有名です。しかし、マタギたちは一年中そのような狩猟をおこなっていたわけではなく、稔りの時期などに人里へやってくる動物も、これらの罠を用いて捕獲していたのです。これらの伝統的罠の記録は、そのような山村の暮らしを理解するための重要な資料と言えるでしょう。
(蛯原 一平)