東北復興支援機構 | TRSO

影絵芝居「ヘビワヘビワ」|2016年公演をおこないました(2)

9月4日(日)、ヘビワヘビワ2016年公演の当日を迎えました。
前日からの練習と当日リハーサルを終え、準備は万端。
スクリーン裏で開演を待ちます。

IMG_4622k
DSC_0953k


19:00開演の時間です。
会場となる東北芸術工科大学7階の特設舞台には、定員を超える来場者が集まりました。

IMG_4666k

今回は、舞台袖を開放し影絵芝居の舞台裏を覗けるという演出もあり、
スクリーンの正面も横もお客さんでいっぱいです。

IMG_4604k

音楽を担当いただいたのは、シタール奏者のGO ARAIさんと、和太鼓奏者の五十嵐香乃さんです。
インドの民族楽器シタールの不思議な音色と、臨場感あふれる太鼓の音が、作品にさらなる表現力を与え、見る者を物語の世界へ引き込んでいきます。

IMG_4619k
IMG_4631k

物語は、盲目の琵琶法師の玉都(たまいち)が、流浪の旅の途中に南相馬の小高を訪れ、村人たちと出会うシーンから始まります。
(大悲山の大蛇伝のあらすじはこちらから)
スイカを割ってご馳走してくれる刀研ぎ師、裸足の玉市へ足袋を仕立ててくれる仕立て屋、自転車に乗せてくれる自転車屋と、個性豊かに登場する小高の村人たちは、南相馬市ご家族の実在したご先祖様たちです。職業ももちろん実際のもの。
ご先祖様の人形は2015年のキャンプで、親子で一緒に作成しました。

IMG_4630k
IMG_4628k

川村亘平斎さんが演じる玉都と、南相馬市の親子で演じる村人(ご先祖様)が都度即興で繰り広げるコミカルなかけあいは、ヘビワヘビワには欠かせない名シーン。
原作を忠実に再現するのではなく、演じる人たちの人間味や個性を出す演出が、ヘビワヘビワの見所でもあります。
今回も川村さんとご家族が、見事なアドリブの掛け合いで会場を沸かせました。



一変して、村を水に沈めようと大蛇が登場すると、コミカルだった世界観が一変。
息を呑むようななまめかしく鬼気迫るシーンに変わります。

IMG_4675k
IMG_4682k

大蛇を演じる大人たちが、大雨が降り雷鳴とどろく中、ウロコに扮し絶対的な強さでスクリーンを埋め尽くし、
対して立ち向かう村人を演じる子どもたちが、武器を持って恐る恐る大蛇の巣へ攻め込んで行きます。

IMG_4720k
IMG_4717k

スクリーン裏にも真剣な空気が流れます。

IMG_4697k
IMG_4708k

鎌首をあげ艶かしい鱗で襲ってくる大蛇と、小さな小さな村人たちの肉薄した戦いは幾度も繰り広げられ、最後は村人たちが突き上げた鉄釘に大蛇が倒れ終わりを迎えます。

IMG_4737k

勝どきを上げる村人たちと、その横で悲しげに天を仰ぐ大蛇の頭。
自然と人間の戦いの意味を問いかけるようなシーンでもあります。
大蛇の頭は、物語の終わりとともに再び動きだし、見るものにメッセージを送るように幾度もスクリーンを回り、静かに消えていくのでした。

IMG_4751k IMG_4756k

カーテンコールでは、出演者とスタッフが影になって登場。
会場の大きな拍手に迎えられながら、三度目となる公演の幕が降りました。

東日本大震災の福島第一原発事故後、避難や居住制限により一度は断ち切れてしまいそうになった土地に伝わる物語を、その土地に住むご家族が一緒になって全身で表現し、擬似体験することで生まれた「ヘビワヘビワ」。
土地と自らのルーツ(過去)をさかのぼり、現在に伝え、共有したみんなでこれからの未来を考える。ヘビワヘビワの公演をとおして、現在の南相馬市や東北に目を向け、これからの未来をどうつくっていくか思いをめぐらせる場を生み出せたらと考えています。

IMG_4714k IMG_4774k

3度目となる2016年公演にご来場いただいた皆様、そして再上演にあたりご協力いただきました皆様に、心よりお礼を申し上げます。
また、本公演は、東北復興支援機構の活動や理念に賛同いただいた、伊藤忠青山アートスクエア様からの寄付により開催をいたしました。関係者の皆様に重ねて感謝申し上げます。