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【報告|スマイルエンジン山形 学生スタッフ】「キズナ強化プロジェクト」合宿セミナーに参加して

11月4日より約2週間にわたり、外務省の「アジア大洋州地域及び北米地域との青少年交流(キズナ強化プロジェクト)」として、ブータンとネパールから約30名の大学生たちが、東日本大震災の被害や復興状況、防災に関する講義を受け、被災地の視察等やボランティア活動をおこなう目的で来日しました。

そのプロジェクトの一環で、11月10日~11日にブータンとネパールの大学生たちと山形の大学生・専門学生約20名が一泊二日で山形市蔵王にあるアストリアホテルに集まり、レクチャーやディスカッションを通して東日本大震災についての理解を深める合宿セミナーが開催されました。その合宿セミナー一日目に、スマイルエンジン山形の学生スタッフ3名(鳥越さん、熊谷君、中川君)が参加し、災害ボランティアに関するレクチャーや、ブータンとネパールの学生たちと災害支援や社会問題などのディスカッションなどをおこなってきました。以下、スマイルエンジン山形の学生スタッフの参加レポートです。

TRSO事務局 須藤知美

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レポート①: 熊谷周三(山形大学研究生2年)

「アジア大洋州地域及び北米地域との青少年交流( キズナ強化プロジェクト)」の企画で、今日は蔵王でネパールとブータンの学生たちと交流して来ました。自分にとって非常に良い出会いでした。

日本人と殆ど同じ顔付き 会話は終始英語でしたが、とても愉しく彼らと話が出来ました(僕はpoor Englishでしたが)。
服装は伝統衣装でしたが、私服はカジュアライズされていて、僕らと変わらない印象でした。性格は皆さん素直で無邪気それでいてスマートでした。

そんな中、スマイルエンジン山形の説明もプログラムに入っており、ネパール、ブータン、日本の学生の前で、丁寧に説明させて頂きました。
プレゼンテーターはスマイルエンジン山形代表の鳥越さん。英語で書かれた板書に向かって熱心に説明しました。



発表後沢山の質問がありました。ネパール、ブータンなど実は自然災害が少なくない地域、関心はとても高い様でした。

食後のディスカッションも大変興味深い内容でした。その中で印象的だった会話を挙げさせて頂くと、

「ブータンは2009年の災害で今も家が無い人もいる。日本での技術や仕組みに触れ国の人に伝えたい。」
「日本には高い技術と仕組みがあるが、十全に機能していない様に感じる、それは国民と政府との信頼関係が無いからでは」
「ブータンは小さな国だが国王と国民は非常に強い信頼関係がある」
「災害を神の思召しとして受け入れる事はあるか?それが防災意識に影響(神の仕業に対し抵抗してはいけないなど)を与えているのか?」
「私の国には確かにその様な傾向はある。しかし僕はその様な考えばかりでは駄目だと思っている。今は小さい頃から災害に対しての教育活動もしている。」

「日本では、政府や自治体との信頼関係、地域同志の繋がりを失いかけていた。それが今回の地震、津波、そして原発事故でその弱さが被害の深刻さを強めてしまった。」
「ブータンでは今でも隣町の人の事まで皆良く知っている。2009年の災害でも当たり前の様に支援をしていた。」

「今僕は、子ども達に防災意識高めて貰う取り組みを続けている。意識の低い僕の国で、少しでも意識を持ってもらいたい」
「『釜石の奇跡』と言って、子ども対象に防災教育を熱心にしたところが被害軽減に非常に大きな成果を出した。是非とも続けて欲しい。」

国外からの支援、日本またはブータンやネパールから学ぶ事、災害と信仰についてなど、とても大切な話が出来ました。
議論を交わしたブータンの学生はマンチェスターの大学院へ災害支援について留学を考えているとの事でした。

今回は文化交流的な目的もあるので、それぞれの伝統的な踊りを披露。ネパールの踊りが個人的には印象深かったです。歌から始まり、輪になって、その中から踊る人が出て来て、最後はロウソクの火の熱風(?)を顔に着ける。リズムも独特でした。

ブータンの踊りは、社交的な雰囲気がある、男女対の踊りでした。慣れている人もいれば、照れながら踊る人も。モダンテイストのものも披露してくれました。
ブータン国王様と王女様の写真を持ちながら踊った人も。国民との信頼関係がとても強いのが良く分かりました。(今回の学生はこの写真の二人の様な美男美女が沢山いました。皆お洒落を愉しんでいる様でした。)



彼らとのコミュニケーションについて。多少言語共有が不自由なくらいの方が実は豊かなやり取りが出来るのではないかという実感が有ります。それは ①歩み寄りの気持ちが生まれ互いの尊重が生まれる。②ノンバーバルなやり取りが重要となり、身体的なやり取りが親密さを生む。
僕はこういう方が好きだと感じました。日本人同士だとこうはなりませんね。(議論には向かないですが)

最後にはEメールアドレスやFacebookIDのやり取りをするなどしました(彼らのFB利用率はほぼ100%でした)。彼らは国の人達の為に真剣な意思を持っていました。災害支援だけで無く文化や様々な事をこれから伝え合えればと思っています。僕らこそ彼らに学ぶ事は多いはず。

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 レポート②:  鳥越渚(東北芸術工科大学3年/スマイルエンジン山形 代表)

スマイルエンジン山形のレクチャーでは、震災後から今までの被災地での災害ボランティアにおけるニーズのうつろいを、私たちの活動の流れに沿って説明しました。また、現在の支援活動の広がり、今後の展望を話しました。

質疑応答で、ブータン・ネパールのそれぞれの学生から「リスクマネジメントはどうしているのか?」「ボランティアセンターの運営についてもっと知りたい」、「スマイルエンジン山形には、防災教育はないのか?」「現地でのトラブルはあったか?」、「(南三陸町の防災庁舎で亡くなった職員さんのエピソードを聞いて)大津波警報のアナウンスは、人力ではなくてテクノロジーでどうにかならないか?」などといった質問があがりました。

レクチャー後の夕食の時間では、ブータンで防災について研究している学生が「話をしたい」と言ってくれて、一緒にご飯を食べました。

 ブータンの話を聞くと、ブータンでは、日本より国土が狭い分、テクノロジーは発達していないがコミュニティーの繋がりは強く、また国と市民の信頼関係もとても良好であると聞きました。郊外の地域同士でも顔見知りであったため、2009年のブータンで起きた地震の際には、お互いに支援活動をしたそう。(※2009年9月21日、ブータンにてマグニチュード6.1の強い地震が発生した。この地震により道路が遮断され、少なくとも8人が死亡した。)

また、防災教育として子どもに災害の絵を描かせて街に貼ったり、過去にあった災害は、「被災の日」というものが設けられ、国民の祝日になっている(日本にも防災の日はあるが、日本ほど風化していない印象)。老人福祉も充実していて、若者に対する大人の理解もブータン独自の良い文化が発展していると感じられました。

 日本は高度経済成長期以降、都市開発はすすんできたが、それとともに良い文化は廃れ、気候や風土に合わない都市型の生活になってしまったのだと、今回、ブータン・ネパールの学生の話を聞いて、改めて思いました。彼らの質問から“テクノロジー”という言葉がよく出てきましたが、日本の持っている技術は結局、自然災害には敵わなかった。技術だけでは、防災はできない。そこに住んでいる人間が防災意識を持つ工夫や教育からの働きかけ(釜石市での事例など)がもっと重要になるのではないかと感じています。

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 レポート③: 中川遼太(山形大学3年)

ネパールやブータンの学生からの視点では、日本は様々な技術が発達している国であり、それらを使うことで地震に強いのではないかというイメージがあるようだった。逆に日本側の感覚としては技術では防ぎきれない部分の弱さを感じることが多かったので、その違いが興味深かった。ブータンではまだ近隣にすんでいる人達のコミュニティがまだ強く残っているとのことだったので、防災、あるいは復興期の問題の現れ方は国によって大きく異なるということを再認識させられた。

また、社会における大学生の立場に対する認識の違いも交流の中で感じさせられた。彼らは大学生ということに対して高度な教育を受けているという自負と社会に対する責任を持っていた。それの現れとして、スマイルエンジン山形との比較で、大学生らしくもっと専門性を生かした支援の形はないのだろうか、という質問があった。もちろん復興の段階に合わせた支援のあり方ということもあるが、私は普段活動していて大学生という立場を、高度な教育を受けている責任ある立場として捉えたことがなかったので新鮮な驚きがあった。

今回のプログラムでは、外国の学生ならではの率直な質問や意見のやり取りがあり、今まで意識してこなかったことに気づかされた。これを刺激にして今後のスマイルエンジン山形やその他の復興支援に繋げていきたい。