なんというブログの記事タイトルであろうか。二週間分を一気に更新しようだなんて。授業期間中に毎週更新ぐらいはしてみよう、と大して深く考えもせずに取り組み始めてしまったが、この体たらくである。第三週どころか第四週まで食い込みながら、二週間分を一気にお届けするのだ。責任者出てこいの気分である。
日記をまじめに書いている人にはわからない感覚かもしれないが、1週間以上経過してしまうともう何が起こっていたのか、そしてその出来事を覚えていたとしても、自分自身がどう受け止め、何を考えていたのかは遠い記憶の彼方になっている。過ぎ去っていく日々は、どれも均質化されてしまい、単なる過去として脳内処理されがちなのだ。と言い切ってみたが、学問の端っこに身を置いている立場としては、本来はそう考えてはいけないものなのだろう。その誰かにとっては見るべくものない過去かもしれないしが、誰かにとっては重要かもしれない過去を、忘れそうな記憶を、忘れ去れられそうな記録をも、考えていかなければならない。
さて記憶を掘り起こしながら書いているが、一年生向けの「作品読解」という授業の第三回目では小嶋陽太郎さんの『友情だねって感動してよ』(新潮社、2018年)、第四回では町田そのこさんの『夜空に泳ぐチョコレートグラミー』(新潮社、2017年)を取り上げた。毎年、この授業は一年生が受講することが多いので(二年生以上で受講している場合は、前の年に単位を落としていることになる)、入学して間もない皆さんが抱えるいろいろな不安や新鮮な感動を描く作品を取り上げようとセレクトしている。特に今年は様々な短編を読んでいくうちに気になる作家や作品が数多く目に留まってしまったので、この路線を第五回の授業まで引き延ばすことにした。
個人的には物事を考えることへの矛盾や理不尽さは確実に存在していて、そのことを時間をかけて、ある部分では受け入れ、ある部分では反発しながら生きてきたように思う。そのことを今から振り返って考えてみると、学生のときに吸収した作品を自らの血肉として考え、文章でも論文でも何かしらアウトプットしていくことができるようになって、ようやく考えることができるようになったのではないだろうか。ただ、簡単に書いたけれども、インプットとアウトプットは連動しつつも、両方ともに一朝一夕にできるようになったわけではない。その最初の一歩として(人によっては二歩目、三歩目かもしれないが)、この授業を受け入れ、10年後ぐらいに振り返って欲しいなあ、というよくわからない気持ちで授業を行っている。要はおっさんになったということでもある。
その文脈で小嶋陽太郎さんの『友情だねって感動してよ』も町田そのこさんの『夜空に泳ぐチョコレートグラミー』も、両作品ともに既存の認識の枠組み内に居続けることの息苦しさを描いた作品として取り上げた。もちろん既存の枠組みに入り込むことが悪いわけではなく、それは社会としてそして人としてある一面では非常に正しいし、何より楽である。とはいえ、人間、譲れないものはどこかにあるもので、その線引きがどこに行われるか、そしてその線引きが枠をはるかに超えてしまう場合だって往々にしてあるのだ。そのときに周囲の目を気にして息苦しくなるよりは、別の場所で生きること、別の考えを身につけることは自分自身の大きな自信になるし、大きな武器になると思う。
そのことを忘れないで欲しい。そう書きつつ、今週末はオープンキャンパスが開催される。高校生の皆さんが、大学に来て、うちの文芸学科に来て、学びたい、考えたい、叫びたい(別に声に出して叫ぶ必要はないけど)という願望があれば、ぜひ足を運んで欲しい。我々は常に皆さんをお待ちしています。
オープンキャンパス情報は以下の通りです(大学全体のページはこちら)。教員の面談・作品講評は随時行っています。
- 5月25日(土)スケジュール
- 13:00-13:30 学科説明(担当:石川) 文芸棟(図書館2階)204教室
- 13:40-14:20 物語・ストーリー創作講座「ノベルクサ」(担当:玉井) 文芸棟(図書館2階)205演習室
- 14:30-15:10 物語・ストーリー創作講座「3キャラでストーリーを作ってみよう」(担当:トミヤマ)文芸棟(図書館2階)205演習室
- 14:30-15:00 (担当:石川) 文芸棟(図書館2階)204教室