「とびきりの長いお説教は短めにして」

 しまった。やられた。『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』48話「約束」を見たときに素直にそう思ってしまった。ずっと1期から視聴し、ヤクザ映画の物語構成を活用させていることに気付いていながらも、この48話のラストの可能性を無意識に脳内で削除していたのである。ガンダムというフォーマット、というかエンターテイメントでの物語構成を考えた場合は禁じ手ともいうべき物語の選択と言うしかない。そしてこれを躊躇なく選択肢に浮上させ、選ぶということは、残り2回の物語に自信があるのだろう。楽しみで仕方ない。どのような物語になるのであろうか。48話の放送日は3月19日、次の日は卒業式である。つまり体をプリインストールされた式次第に合わせて自動的に動かしながら、脳は延々とオルフェンズについて考えるしかなかった。

 4年生の皆さんは卒業後も自らを成長させるべく、手を抜かずに生きて欲しい。固い言い方をしてしまうと卒業式に出席したからといって勉学から卒業したわけではなく、今後も続いていく。社会人になるとこれまでと違い、様々な年代の人や様々な社会的背景を持つ人に出会うことになる。正直なところ何年経っても同じ話をしている人や同じギャグしか言わない人、同じ音楽を聴いている人もいる。若いうちは「うわ、おっさん、またゴルフの話をしてるよ」とか思って終わるかもしれないが言っておこう、気を抜くと君たちもすぐにそうなってしまう。会社の上司にそういう人がいたら10年後、20年後の自分かもしれないと思っておこう。そして勉学は本を読めば解決する問題でもない。読書によるインプットなど海水の塩分濃度よりも低い割合で情報が自分の中に蓄積されるだけだ。インプットだけではなくアウトプットも同時並行で行わないと、ほとんどが自分のなかを通り過ぎていく。誰かに話す、誰かに向かって書く。それだけで大きく違ってくる。引き続き皆さんは物語を受け止め、考え、自分の物語を紡いでいく、その連鎖を続けて欲しい。だからオルフェンズを見ても、ただ見るだけではなく、めちゃくちゃ考えてくれ。

 というようなことを卒業式において学生の皆さんに話をしたが、要はオルフェンズが面白かったということを述べたいだけである。そして数日経過した今は『けものフレンズ』を見てくれ、も付け加えておこう。『けものフレンズ』に関しては、キャラクター消費が先行している気がして毎回、きちんと見ながらも心の距離を置いておこうと言い聞かせていた。セーブしないとはまって抜け出せなくなる未来が容易に見える。そう、サーバルちゃんがどれだけかわいくても、と思っていたところに11話がやってきた。かばんちゃん……。かばんちゃん……!

BGM:みゆはん「ぼくのフレンド」