文芸戦争と青色ラジオ その3 ―文芸ラジオ3号紹介―

 「未来はさ、チューブの中に車が走ってるんだよ」と手塚治虫作品みたいなことを言っていたら、学生から白い目を向けられた。「そこはアーサー・C・クラークだろ(しかも車じゃなくて電車だろ)」とか、「『メトロポリス』を挙げるよりはましな発言だ」などというツッコミはなく、自然に流された。そう、私は第二特集「僕らのいなくなった世界〜22世紀を考える〜」の主担当ではなく、野上勇人先生に任せていたので気楽なことが言えるのだ。言えるはずだったのだ。

 この特集は編集部内では通称22世紀と呼ばれていたため、恐らくは誰も正式名称は覚えていないだろう。私も忘れていて自分で書いた目次のブログ記事を見に行ったぐらいである。しかし気を抜いて取り組んでいたわけではなく、この特集は最初からインタビューを行っていこうと意欲的に立ち上がっていった企画である。遠い未来の話をするというのは、今生きている人のほとんどが死滅する世界の話をすることになる。つまり、そこまで距離感が出れば、お話いただく皆さんの個性がより発揮されるのではないか、となり、実際、三者三葉の内容になった。

 特に深くコミットしていかないつもりであったが、根本的にファンである米代恭さんのインタビューが執り行われることになってしまったので私もいそいそと参加したのである。お会いした米代さんは現在連載中の『あげくの果てのカノン』の主人公カノンのように可愛らしく、しかしカノンよりはるかにクレバーな方であった(と書くとカノンに申し訳ない……のだろうか)。近未来を取り上げたSFを描く方だから、という安直な考えで依頼した我々が恥じ入ってしまうぐらい、面白いインタビューとなったので、ぜひ一読して欲しい。個人的には『あげくの果てのカノン』を私のゼミの講読テキストとして取り上げたことをご本人に伝えられたので満足である。続いては中沢健さんである。松井玲奈が出演したドラマにもなった『初恋芸人』を書かれているが、それよりは動く待ち合わせ場所としてメディアに取り上げられていることで存じ上げていた。こちらに私は参加していないので印象論だが、『初恋芸人』を書かれている人がこのように考えているのか、というよりこうなってああなってデビューしているのか、と感心してしまった(悪い意味ではないです)。インタビューの最後は本学建築環境学科の教授であり、みかんぐみのメンバーとしてエコハウスの開発を行い、豊洲問題でも活躍中の竹内昌義さんである。今さらの感想かもしれないが、建築というものは人々の思想や地域・社会・文化をダイレクトに反映しているので、様々な文化の混在する高度な事象なのだということが再確認できた。インタビューを行った学生も自分の知識のなさを再考したのではないだろうか。

 この特集はインタビューだけではなく、エッセイも小説も掲載している。エッセイを寄稿していただいた相沢沙呼さんは、デビューから応援し作品が出れば買うポジションに脳内的に位置しており、私が担当する授業で講読テキストとして取り上げたことがある。3号はそのような感じで私の好きな作家への依頼が行われたものが多くみられ、「これが編集長ということか、チョーがつくとすごいな」と客観的な感想を抱いてしまっているが、別に不健全な会議で議論が進んでいったわけではない。はず。さておき相沢さんのエッセイは今回のテーマに真正面から向き合っていただいた内容で頭の下がる思いである。そして小説は本学科の卒業生で今は編集者として活動している荒川匠さんが書いている。『ガンスミス』の人である。そのうち仕事をください。

(その4に続く予定)