2019年度前期ゼミ(漫画ゼミ)と作品群(玉井ゼミのみ)

 前回の更新で取り上げたゼミ1コマ目は多様な作品を読み、多様な考えに触れることを一つの目的としていたが、ゼミの3コマ目では漫画を読むことに主眼を置いている。このようなゼミを行っている理由として一つにはゼミには漫画家志望の学生が参加する傾向にあるためと、もう一つには物語を紡ぐのは何も小説という媒体だけではないので、小説家志望の学生も数多くの作品に触れる必要があるからである。

 とはいえ3コマ目は学科全体のイベントが開催されることがあるため、定期的に休みとなる。漫画ゼミが開かれなくとも、ゼミ自体は全体イベントへの参加となるので特に休みではない。

1:井上智徳『CANDY & CIGARETTES』(講談社)

 爺と幼女の組み合わせによるアクションは初回の景気づけに最高ではないか。

2:田村由美『ミステリと言う勿れ』(小学館)

 2回目は会話で物語を進めていく方法を学ぼうと選んだ。当然だが議論では「見事すぎる」が主たる内容となってしまった。

3:学科イベントによりお休み

 学科の青果賞(2年の最終課題から学生自身が投票して決まる賞)の講評会があった。

4:澤江ポンプ『パンダ探偵社』(リイド社)

 これは名作。コマやカメラワークの上手さは当然ながら、ストーリーも素晴らしい。

5:藤緒あい『かわるがわる変わる』(祥伝社)

 ここらへんで女性向け作品を読もうと思ってのセレクト。女性のゼミ生が楽しそうに読んでいたのが印象深い。

6:靴下ぬぎ子『ソワレ学級』(徳間書店)

 社会で生きるなかで普通を志向することは当然ではあるが、そこにしか目を向けない創作はありえないのではないか。という感じでのセレクト。

7:田川とまた『ひとりぼっちで恋をしてみた』(講談社)

 物語を動かすとき、非常に難しいのは奥手な主人公なのだが、困った作者が2話以降どうしていったのかを読もうというセレクトである。

8:影待蛍太『GROUNDLESS』(双葉社)

 戦争を描くことは必ずしも大局的に国家を描くことだけではない。

9:須藤佑実『みやこ美人夜話』(祥伝社)

 須藤作品は毎回買ってしまうぐらいなのだが、細部から物語全体にいたるまでの作りこみに感心している。

10:磯谷友紀『本屋の森のあかり』(講談社)

 読者がキャラクターを把握し、物語がドライブするようになったあと、コマ割りやカメラワークが変化していくのが非常に興味深い。

11:学科イベントによりお休み

 就活に向けてのマナー講座が開催された。

12:増田里穂『春庭』(集英社)

 少女漫画=恋愛と大枠でくくってしまうことは非常に危険なのだが、その大雑把なイメージですら、細かいところでズレがあることは認識したほうがいい。

13:こがたくう『宇宙のプロフィル』(講談社)

 アイデアの連作短編。アイデアで短編を動かせることの一つの証左である。

14:熊倉献『春と盆暗』(講談社)

 この作品は本当に秀逸。キャラクターの浮遊性が主人公と物語を飲み込んでく感じが良い。

15:野村亮馬『ベントラーベントラー』(講談社)

 ラストは肩の力を抜いた作品で終わらせた。ご近所圏内で起こるドタバタ喜劇とSF要素との融合はお見事。