山川健一デジタル全集 刊行記念バースデーライヴのお知らせ

山川健一学科長のデジタル全集が、7月1日に発売されます(iBookstore)。

それを記念して、ライヴをやるそうです!

場所は東京・神田にて。

皆さんお誘い合わせの上、ぜひお越しください!

※私、野上も登壇いたします。

 

□山川健一デジタル全集 刊行記念バースデーライヴ
出演/Rudie’s Club Band

日時 
2016年7月8日(金)
19:00 OPEN / 19:30 START

19:30~19:50 
トーク 山川健一 VS 野上勇人(東北芸術工科大学文芸学科)
20:00~ 
Rudie’s Club Band

会場
The SHOJIMARU 東京都千代田区神田須田町1-4-6 吉川ビルB1
TEL 03-6206-9596
HP http://fukumarurec.wix.com/shojimaru
Facebook https://www.facebook.com/THESHOJIMARU/

料金
¥3,000- プラスドリンクオーダー

石川忠司『吉田松陰 天皇の原像』を読んで思い出す何か大切なもの

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 いま、東北芸術工科大学の教員宿舎である。今日は研究室に文芸学科の1、2年の学生達が20名ほどやって来て、椅子が足りないので何人かは床に座ったりして、彼らが出そうとしている同人誌の相談にのってあげた。1年生には2時から5時近くまで講義した後なので、ぼくらはいったい何時間いっしょにいたことになるのだろう?

 その後、教員仲間の石川忠司がやって来て、最後はいつものように2人でいろいろ話し、解散した。明日も明後日も一緒である。

 今日はそんな石川忠司の新刊『吉田松陰 天皇の原像』を紹介したい。この本は藝術学舎から吉田松陰についての本を出したいと思い、しかし自分では書けないので石川忠司に頼んで書き下ろしてもらった本だ。

 原稿をもらった時、実に面白いと思った。さすがだな、と。「人民や藩士が直接天皇に忠誠を尽くす行為は許されず」というあたりから説き起こし、かつて「仁」をひっくり返したのと同じ手さばきでこれまでに言われてきた松陰の天皇像をひっくり返し、明治の天皇像の二重性から一気に現代にまで論を通している。石川忠司の仕事の中でも、これはかなりいいものだと思う。ぼくはこの本のいわば担当編集者で、立場的に本を売ることばかり考えていたのだが、改めて松陰の思想の過激さ、危険さに触れ、身の引き締まる思いがした。それから個人的には、三島由紀夫は松陰から一直線だったのかなと思ったのであった。

 明治維新以降、長州すなわち山口県出身の政治家達は(安倍首相もその1人だ)、松陰をさんざん利用してきた。そういう輩から本来の松陰を取り戻したの本書である──と、ぼくは断言したい。

 ところでぼくは本書に「解説」を書いた。

<彼の批評は年齢を経るにつれてむしろ若々しいロジックの煌めきを獲得し、余計な肉を削ぎ落とし、芭蕉的な大きな世界に挑むようになってきている。そのことに、ぼくは密かに驚嘆する。

 本書にぼくは編集者として関わっているわけだが、公平に見て、この決して長くはない吉田松陰論は批評家・石川忠司の現在における到達点を示しているのではないかと思う。しかし、芭蕉的に余計なものを削ぎ落としたロジックの煌めきからは、たとえばNHKの大河ドラマでも扱われた吉田松陰という人の生涯のエピソードがほとんど省略されている。

 そもそも原稿をくれた時、タイトルが付けられていなかった。

「タイトルは?」と怪訝な顔でぼくが問うと、

「あんたに任せる」という返事であった。

 お前はタイトルまで省略するのかよ、とぼくは思ったのであった。

 仕方なくぼくがいくつものタイトル案を考え、石川忠司が選んでくれたのがこの『吉田松陰 天皇の原像』である。

 そういうわけで、吉田松陰に興味を持ち本書を手に取って下さった読者の方々に、松陰の生涯の紹介を「田山花袋」的に補うのがこの原稿におけるぼくの使命だろうと思う次第である。>

 石川忠司とぼくは志を同じくする同志みたいなもので、仲はいいと思うのだがしばしば喧嘩する。いっしょにやった講演会でも喧嘩になり、研究室での議論は日常茶飯事で、実は昨日も電話で怒鳴り合ったばかりだ。なぜそんなにぶつかるのか。それはきっと、二人ともお互いに、もっと遠くへまで行けるはずだと信じているからだろう。

 さて、ぼくが伝えたいことは以下の通りです。

 是非とも石川忠司の『吉田松陰 天皇の原像』をお読みください。あなたは、石川忠司と罵り合った後のぼくのように、きっと何か大切なものを思い出せるはずだ。

※この本は山川研究室でも販売しています。学生諸君、是非とも読んでね。

EURO2016が始まった

たまには全然関係ない話を書こうと思う。

オープンキャンパスがあったり保護者会があったりしている間に6月も3分の1が過ぎ、サッカーのヨーロッパ選手権、すなわちEURO2016が始まった。

UEFA EURO2016公式サイト(日本語版)

http://jp.uefa.com/uefaeuro/

EUROはワールドカップと同じく4年に1度開催される。そしてワールドカップの2年後に、つまりワールドカップとワールドカップの間に開催される。そうなるとオリンピックと同じ周期でやってくるのだ。

ヨーロッパ選手権というだけあって、出場国はすべてヨーロッパの国々の代表チームに限られる。グループ分けして予選を行い、突破した24カ国が出場する。前回までは16カ国だったが、今回から24カ国に拡大された。

そして今回の開催国は、私の第二の母国(1年住んだ程度だが)であるフランス!

現地時間6月10日(金)に開幕試合があり、開催国フランスvsルーマニアが行われた。

そして順次、グループリーグの試合が行われていく。

日本では地上波放送はテレビ朝日系列。全試合放送はスカパーとWOWOWかな?

残念ながら金曜、土曜とリアルタイムで試合を観ることはできなかったので、本日、開幕試合とイングランドvsロシアを観た。

EUROの面白さは、何よりもガチなこと!

ワールドカップもガチだけれども、同じヨーロッパ同士ということで、各国の代表選手がワールドカップ以上にプライドむき出しで闘う。

それからハズレ試合が少ないこと!

ヨーロッパで予選を勝ち抜いた国だけが出場するので、出場国のレベルの差があまりない。そのため、どの試合も高いレベルになるのだ。今回は24カ国に拡大されたので、若干レベルが落ちる試合もあるかもしれないが、それでもヨーロッパの強豪同士が同じグループに同居してしのぎを削ることになる。

例えば今回のグループDはクロアチア・チェコ・スペイン・トルコ。

モドリッチ&ラキティッチと、レアル・マドリーとバルセロナの司令塔を両方擁するクロアチアが、スペインとどう闘うのか。そこに同じくバルセロナのトゥランやドルトムントのシャヒンを擁するトルコ、ベテランのロシツキーやチェフを擁するチェコがどう絡んでいくのか。

グループEは、ベルギー・イタリア・アイルランド・スウェーデン。

歴代最強と言われるベルギー代表と、ワールドカップ優勝経験国のイタリア。そこに大半がイングランドプレミアリーグで活躍する選手で固めたアイルランド、“王様”イブラヒモビッチ擁するスウェーデンがどう分け入っていくのか。

もう本当にヒリヒリする。

開幕試合はフランスが終了間際のパイェのゴールで勝利した。ゴールを決めたパイェは、まだ試合が続いているのに泣いていた。今大会、フランスは開催国として、かつての英雄にしてフランス最強時代の代表キャプテンを務めたディディエ・デシャンが監督を務めている。デシャンは規律を重んじ、ベテランでエースのベンゼマを外し(脅迫事件関与の疑いがあったため)、若手中心のフレッシュなチームで臨んだ。

前回フランスが開催国だったのは1984年。将軍プラティニ擁するフランスは開催国優勝を成し遂げた。そして2000年ベルギー大会では、ジダン擁する歴代最強のフランス代表がワールドカップとの連覇を成し遂げた。2度目の開催国優勝、そしてトータル3度目の優勝を狙うフランス代表“レ・ブルー”にかかる重圧は相当のものだったのだろう。パイェの涙はその重圧からの解放を意味していたと思う。

サッカーも長く観ていると、そして歴史を調べると、そのチームや選手、試合の「文脈」が見えてくる。「文脈」がわかると、試合の観方も変わってくる。

たとえば2015-2016シーズンに旋風を巻き起こしてプレミアリーグ優勝を果たした岡崎慎司のレスター・シティには、かつてEURO1992で補欠参加(ユーゴスラビア内戦の制裁により代替出場)からのミラクル優勝を果たしたデンマーク代表の名ゴールキーパー、ピーター・シュマイケルの息子カスパー・シュマイケルが所属しているのだ。

すると私のようなオールドファンは「あのシュマイケルの息子かー!」と感慨を覚えるのである。

今回のEURO2016でも、たとえばウェールズ代表など、EUROに出場しているだけでも泣けてくる。かつて若い頃から天才と謳われ、マンチェスター・ユナイテッドで数々の栄冠を手にしたライアン・ギグスという選手がいた。彼はウェールズ代表のエースとして何度もワールドカップやEUROの予選に挑み、いつもあと一歩で出場を逃してきた。そのウェールズからようやくガレス・ベイルやアーロン・ラムジーといった才能ある選手が出てきて、今回、晴れて初出場に至った。

私のようなオールドファンは「ギグスもきっと喜んでいるだろうな」と感慨を覚えるのである。

とにかくこれから約1カ月、熱い闘い(の録画)が私を待っている。

今回はやはり若きフランス代表に優勝してほしい。

決勝はスペインvsフランスを期待している。そして若く、よく走る“多人種軍団”フランス代表が、スペインの手慣れた“ティキ・タカ”を粉砕するのだ。

でもドイツも強いし、イタリアもしぶといだろうし、クロアチアも爆発するかもしれないし、若いイングランドも面白いし、イブラのスウェーデンにクリスティアーノ・ロナウドのポルトガルもいるし、レバンドフスキのポーランドも気になるし・・・などといろいろ考えながら予想にふけるのが、今は楽しくて仕方ない。

「僕らは少しずつ進む あくまでも」

 本屋で三沢陽一の『不機嫌なスピッツの公式』(富士見L文庫)が平台で並んでいるのを見たとき、スピッツは犬だろうか、バンドだろうか、と立ち止まって考えてしまった。本屋の平台で立ち止まるのは、いつものことなので、別に「ラブソング嫌い」とか「音楽マニア」などの帯の文言で立ち止まったわけではない。草野マサムネが出てきて「そんなことよりバンドやろうぜ」と言って名探偵の邪魔をし続ける作品であったり、登場人物が「ロビンソン」、「チェリー」、「若葉」、「つぐみ」の4人組がメインで活躍する作品であったりするだろうか、いや、さすがにそれはないだろう、と帯を見ているにも関わらず作中で描かれているのは犬なのだろう、と思いながら、買ったのである。

不機嫌なスピッツの公式<不機嫌なスピッツの公式> (富士見L文庫)

 犬はどこだ。犬の力! とかそういうわけではなく、バンドのスピッツを愛するがゆえにスピッツがあだ名となってしまった登場人物の話であった。しかし内容以上に衝撃的であったのは、もうスピッツですら、語られる対象としての歴史性を帯びてしまったということである。デビューが1991年のバンドに対して何を当然のことを書いているのだ、と思うが、うすうす気づいていたことを明示されることの怖さは確実に存在する。ちなみに作中ではその他、90年代に大活躍したバンドが引用されており、作者と同世代の私は頭を抱えているのだが(特段、悪い意味ではない)、これは若い世代に届くのであろうかと少し心配してしまった。学生からスピッツの話が出てきたことはないが、我々の世代が20歳前後のころにチューニングして考えるとTHE ALFEEぐらいだろうか。わかったようなわからないような釈然としない気分ではある。

 昨日は保護者会が開催された。私が学生のころを考えると大学で保護者会が行われるということ自体に驚いている。そして、熱心に質問をし、話をしてくれる親御さんを前にすると、学生のみんなはいい加減な気分で授業に出て、適当なレポートや課題を書いたりしてはいけないぞ、と思うわけである。もちろん自分自身が学生のときに、どうしていたのかは脇に置いている。大体が毎日のように読書をして、ゲームをして、ラジオを聞いて、と過ごしていたので、褒めるべきことはないように思うが、それでも全てがネタの宝庫である。どう昇華して、血肉とするかは自分自身の問題であり、難しいかもしれないが短期的・中期的・長期的な計画を脳内で随時補正しながら歩み続け、今ここで本を読んでいるわけだ。とカッコつけているが、親御さんとしゃべりながら、自分自身の学生時代を反芻し、頭を抱えていたのである(もちろん、これはダメな意味である)。

 その保護者会でも好評であった『文芸ラジオ』2号のamazon在庫がようやく復活したので、ぜひご購入願いたい。最後は宣伝で終わるのである。

文芸ラジオ 2号 ([テキスト])

BGM:スピッツ「夢追い虫」

色色衣

文芸ラジオのラジオ 第7回

久しぶりに更新しました。お時間があるときにお聞きください。

東北芸術工科大学芸術学部文芸学科が発行する文芸誌『文芸ラジオ』の編集部がお送りす­るラジオです。編集部の教員(池田雄一、玉井建也、野上勇人)および学生編集長である­佐久間くんがが喋っています。内容は新編集長紹介、『文芸ラジオ』2号に関して、第1­回文芸ラジオ新人賞、春のオープンキャンパスなどです。

第2回文芸ラジオ新人賞応募規定のお知らせ

「文芸ラジオ」では、創作小説・評論の新人賞を募集します。

    • [締切]
      2016年9月30日(金) 当日消印有効
    • [応募要件]
      未発表の小説[長編/短編]・評論
      ◇長編小説・評論:400字詰原稿用紙換算で50枚以上200枚まで
      短編小説:400字詰原稿用紙換算で30枚以上50枚まで
      ◇表紙にタイトル・ペンネーム・本名・連絡先・簡単なプロフィールを記載の上、紐またはWクリップで綴じること
      対象外:同人誌発表作、他の新人賞への応募作、卒業論文、Web掲載済み作品等
    • [宛先]
      〒990-9530 山形県山形市上桜田3-4-5
      東北芸術工科大学 文芸準備室 「文芸ラジオ新人賞」係
    • [賞]
      最優秀賞(金 10万円) 、優秀賞 ほか
    • [選考委員]
      池田雄一(文芸評論家)、川西蘭(小説家)、山川健一(小説家)
  • ※応募原稿は一切返却いたしません。また、応募要項・選考過程に関する問い合わせには一切応じられません。
    ※受賞作の出版権は藝術学舎に帰属します。
    ※選考委員・賞・発表時期・その他、詳細は東北芸術工科大学文芸学科Webサイトhttp://blog.tuad.ac.jp/tuad_bungei/(BUNGEIWeb)にて発表があります。ご確認ください。

第1回文芸ラジオ新人賞発表

 文芸ラジオ新人賞は意欲的な小説・評論を全国から募集し、46作品の応募がありました。厳正なる審査の上、下記のように第1回受賞者を発表いたします。

  • 最優秀賞 丸山千耀「星屑のブロンシュ」
  • 優秀賞 該当作なし

最終候補作
吉川敦「須弥山としゅみせん」
丸山千耀「星屑のブロンシュ」
蒔田あお『フェイス・トゥ・フェイス』

 全国から多くの応募をいただきまして、まことにありがとうございました。なお受賞作の丸山千耀「星屑のブロンシュ」は『文芸ラジオ』2号に掲載されております。講評はこちらに公開しております。また第2回文芸ラジオ新人賞の応募受付が開始になっております。

文芸ラジオ 2号 ([テキスト])

「必殺チョップで今に砕いてみせるわ」

 数年前までは大学で教えている際、「セカイ系ってなんですか?」という質問をよくされた。当意即妙に答えたというよりは、適当な対応をしていたような気がするので、学生にとって疑問はさらなる疑問を生み出していたように思える。というのも私自身が同時代的にエンタメを享受していながらもセカイ系というbuzzワードに対する興味関心が極度に低かったのである。したがって、ここ数年は聞かれてうんざりすることがなくなったので、もうbuzzワードではないのか、と安心している。単純に声の大きい人が言わなくなっただけかもしれない。辞書的には(そういう辞書があるのかは知らない)、「キミとボクの関係性とセカイの滅亡などの大きな事象が、中間的に位置するはずの社会を抜き取って直結している」ことを描いた作品といえばよいだろうか。

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 昨年だったか三宅陽一郎さんとコーヒーを飲んでいたときに、この話になり、「現実世界がどれだけ引きこもろうとも、社会性から完全に逃避することはできなくなってしまったからではないか」と言われたのだが、それも一理ある話である。Twitterやfacebookや何でもよいのだが、ネット上ですら引きこもろうとも、社会的な事件を目にしないわけにはいかない。社会的な事件や事象を目に入れないためにはtwitterをやらないのが一番で、誰一人としてフォローしていなくともトレンドで無理やり知らされてしまうし、フォロワーからのクソリプで知らされてしまうかもしれない。どちらにせよ、根本的には興味がないのでセカイ系はどうでもいいし、三宅さんと私は下戸なので二人が会うとコーヒーを飲んだり、下北沢のマックでジュースを飲んだりしている。なのでセカイ系警察のみなさんは僕に何かを教える必要はないし、シモキタならもっと美味しいコーヒー屋があるよとも教えなくてもいい。

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 それでもキミとボクの関係性自体に興味がないわけではない。キミとボクというのは他者関係の最初の一歩として認識されるものだろうか。親や兄弟というような生活文化や血縁を同じ背景に持つ人たちではない、何から話していいのか分らない人と結ぶ関係性という意味においては初めて経験するであろう最小単位である。この最小単位は様々な媒体で描かれている。恋愛であったり、同級生であったり、同僚であったり、と精神的な側面から社会的な側面に至るまで様々な点を含み、濃淡を描きながら物語化されていく。

 The pillowsはこのキミとボクを常に描き続けているバンドである。最初に聞き始めたのが中学生の時であったから、もう20年以上は聞いている。これほどまでに長く続くバンドになるとは思っていなかったし、中学生から聞くバンドが変わらないとも思わなかった。そして息が詰まらないのか心配してしまうほどに、山中さわおは同じ世界を傷つけるように歌い続けている。初期作品である「ガールフレンド」や「Tiny Boat」で描かれていた二人だけの甘い世界は、『Please Mr. Lostman』以降はぐっと減り続け、テーマ性をシャープに研ぎ澄ませていく。時に思春期の、時に何かに挑戦する人の、時に夢破れた人のそれぞれの心情を切りつけながら、キミとボクの世界は進行していく。そしてバンドの休止を経て、この2016年も活躍している。

 この聞く人によれば青臭いとも評されるべき世界観だが、現実世界ではいつしか脱却していかなければならない。その第一歩が大学という人もいるであろう。先日、オープンキャンパスが行われた。文芸学科では私の模擬授業(創作初級編)だけではなく川西蘭先生の模擬授業(こっちは創作上級編)、石川忠司先生の学科説明が執り行われ、教室内ではカフェが開設され、訪れた高校生たちと現役の学生や教員たちが語らいをする場が設置された。模擬授業は昨年は3人前後の参加人数であったのに、今年は40人以上のみなさんに参加いただいた。レジュメが足りなくなり、どたばたしてしまったことは申し訳なく思っている。

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 教員の相談コーナーにも様々な学生さんが来ていただき、入試の相談から大学生活に至るまで色々と話をしたし、好きな本や漫画の話もした。なかなか上手く話せなかった高校生の方もいるであろう。ずっと下を向いて何を話せばよいのかと思考停止状態になっている人もいたし、私はあまり他人に意見が言えないのですと言いながらもしっかりとこっちを見ている人もいた。誰がよくて誰が悪いわけでもない。キミとボクとの関係性から大きく飛び出していけるのが大学という場である。でも二人の関係性を捨てていいわけでもない。

全てにこだわりを、全てのチャンスボールにフルスイングを。今しかないときを今しかない両手で、ぎゅっと掴んで騒いでる(the pillows「I know you」)

 そうフルスイングなのだ。心配であったり、不安であったり、どうしていいのかわからない時も全てあるだろう。それでもチャンスボールがきたらフルスイングだ。次のオープンキャンパスはAO入試直前の7月末に行われる。AO入試で行われるグループワークの体験授業があるのだ。学科が公式で行う模擬試験というやつである。希望する人はぜひ参加して、我々教員と語り合おうじゃないか。なお試験本番で本当にバットを持ってフルスイングをする必要はないし(それはそれで面白いが)、無理やり気合を入れる必要もない。我々教員側が何を見ているのかというと気力だとか精神だとか面白さだとか可視化しにくいものではなく、自らの目標を明確にし、そこに至るための手段と労力を認識すること。これだけで大きく違ってくるという話である。そう。その場限りのフルスイングには何も意味はない。

BGM:the pillows「I know you」

ペナルティーライフ

もう間に合わない、ということはない。

 先週、5月28日に本学では春のオープンキャンパスが開催されました。文芸学科にもたくさんの高校生の来場がありました。ありがとうございました。

 当日は、入試相談と模擬授業を担当しました。
 スプリングセミナーに引き続き、模擬授業にはたくさんの高校生の参加がありました。
 模擬授業では、既存の物語の構造とキャラクター配置を利用して、新しい物語(小説)を創作する方法について話をしました。40分と短い時間でしたので、ややつめこみ気味でした。
 参加した高校生でよくわからないことがあったら、文芸学科まで質問のメールをください。可及的速やかにお返事します。

 さて、今回の投稿は、入試相談の際に受けた質問への回答でもあります。

「私はスプリングセミナーにも参加しなかったし、オープンキャンパスに参加するのも初めてなのですが、もう、AO入試には間に合わないでしょうか?」

 そういう質問を受けました。
 AO入試を目指す熱心な高校生の中には、1年生の頃からオープンキャンパスで大学を訪れ、スプリングセミナーにも参加し、作品も持ち込んで教員に講評を求めている方もいます。
 でも、そういう高校生だけが、AO入試を受験するわけではありません。

「今からでも充分、間に合います!」

 私(川西)は質問に対して答えました。

 AO入試は9月上旬に実施されます。出願はまだ先です。
 これまでAO入試を考えず、春になって思い立った高校生には「遅れた!」という意識が強いかもしれません。が、間に合わない、ということは、ありません。
 これから準備をすれば、充分に間に合います。

 AO入試で求める学生は、意欲があり、熱意があり、それを持続できる人です。才能に恵まれているかどうかは問題ではありません(どうやってそれを判断するのでしょう?)。才能を開花させることができるかどうかが問題なのです。そのためには、熱意と意欲を失わず努力し続けることが大切なのです。

 それとともに協調性も必要です。大学の演習ではグループ単位でおこなう課題も多くあります。一人だけでできることは限られています。チームで課題に取り組むことで一人ではできなかったことが可能になります。チームで課題を完成させることで個人の力も伸びます。

 春のオープンキャンパスに参加できなくて、「もう間に合わないかもしれない」と焦っている高校生がもしいたら、私はこう申し上げたいのです。

 まだ、全然、大丈夫ですよ。

 夏のオープンキャンパスが7月の終わりに開催されます。
 その時に参加してください。
 入試相談にも応じますし、学科で普段なにをやっているのか、演習内容についても紹介します。小説を書くためになにをすればいいのか、編集をするためになにが必要なのか、教職員や在学生が説明します。

 まだ、全然、大丈夫です。

 文芸学科への入学を目指すあなたがすべきは、将来、なにをやりたいのか、を明確にして、今の自分がそのためになにができるのかを考え、日々コツコツとそれをこなしていくことです。
 困ったら、不安に思ったら、相談してください。
 私たちは、できる限りの対応をしますから。

 

オープンキャンパスでした。

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5月28日(土)に東北芸術工科大学のオープンキャンパスが開催されました。

文芸学科では、教員・副手&学生スタッフ20名弱で、高校生や保護者の皆様をお迎えしました。

今回のオープンキャンパスでは、川西先生&玉井先生のストーリー創作の模擬授業が行われました。

どちらもすごい人気で、教室に入りきれないほどの高校生が参加してくれました。

「去年は3人くらいとほのぼのやったのに・・・!」と玉井先生もビックリ。

3月に開催したスプリングセミナーに参加してくれた高校生が、今回も来てくれたんですね。そのままぜひ文芸学科を受験して、もっとガッツリとストーリーづくりに取り組んでもらえると頼もしいです。

お待ちしております!

 

さてさて、オープンキャンパスは毎度のことながら準備が大変でした。

学科説明のための資料を毎回更新しているのですが、その更新の指示が、石川先生→野上という流れできました。

その一部をここでご紹介しちゃいます。

4~10 このままでもいいのですが、もっとかっこいいデザインが可能であればお願いします。

13~16 このままでもいいのですが、もっとかっこいいデザインが可能であればお願いします。

19 作品読解、もっといい写真ないですかね?

28 「漫画コース」を表現する画像、なんかないですかね?

不明な点があればご質問ください。

・・・・・。

かっこいいデザイン・・・。

わりと困惑しましたよ(笑)

そして今回一番「マジで!?」と思ったのは、学科のカリキュラム概念図が画像ファイルだったこと。

わかる人にはわかると思いますが、画像だと修正するのがかなり大変なんです。

そこで今後のことを考え、新たにつくりました。

途中で泣くかと思ったぜ。

つくり直したカリキュラム概念図
つくり直したカリキュラム概念図

 

そして今回のオープンキャンパスで芸工大中を騒然とさせた、野上ゼミのフリーペーパー「GEIKO’S KNUCKLE」。

※注:表紙はその筋の人ではありません。
※注:表紙はその筋の人ではありません。

おちゃらけた企画に思えますが、中身の編集制作はけっこう大変な作業でした。

1カ月弱という短い期間で、12人の教職員のアポをとり、取材撮影し、確認をとって入稿するという一連の工程を、ゼミのメンバーは本当によく頑張ったと思います。

コラム的に入った記事「まさみちのさかみち」や「TUADラクガキポイント」、相馬香織さんの4コマ漫画も面白かったです。

まだ残部があるので、欲しい人は芸工大食堂前から取るか、野上研究室に来てください。

早い者勝ちです。