EURO2016が始まった

たまには全然関係ない話を書こうと思う。

オープンキャンパスがあったり保護者会があったりしている間に6月も3分の1が過ぎ、サッカーのヨーロッパ選手権、すなわちEURO2016が始まった。

UEFA EURO2016公式サイト(日本語版)

http://jp.uefa.com/uefaeuro/

EUROはワールドカップと同じく4年に1度開催される。そしてワールドカップの2年後に、つまりワールドカップとワールドカップの間に開催される。そうなるとオリンピックと同じ周期でやってくるのだ。

ヨーロッパ選手権というだけあって、出場国はすべてヨーロッパの国々の代表チームに限られる。グループ分けして予選を行い、突破した24カ国が出場する。前回までは16カ国だったが、今回から24カ国に拡大された。

そして今回の開催国は、私の第二の母国(1年住んだ程度だが)であるフランス!

現地時間6月10日(金)に開幕試合があり、開催国フランスvsルーマニアが行われた。

そして順次、グループリーグの試合が行われていく。

日本では地上波放送はテレビ朝日系列。全試合放送はスカパーとWOWOWかな?

残念ながら金曜、土曜とリアルタイムで試合を観ることはできなかったので、本日、開幕試合とイングランドvsロシアを観た。

EUROの面白さは、何よりもガチなこと!

ワールドカップもガチだけれども、同じヨーロッパ同士ということで、各国の代表選手がワールドカップ以上にプライドむき出しで闘う。

それからハズレ試合が少ないこと!

ヨーロッパで予選を勝ち抜いた国だけが出場するので、出場国のレベルの差があまりない。そのため、どの試合も高いレベルになるのだ。今回は24カ国に拡大されたので、若干レベルが落ちる試合もあるかもしれないが、それでもヨーロッパの強豪同士が同じグループに同居してしのぎを削ることになる。

例えば今回のグループDはクロアチア・チェコ・スペイン・トルコ。

モドリッチ&ラキティッチと、レアル・マドリーとバルセロナの司令塔を両方擁するクロアチアが、スペインとどう闘うのか。そこに同じくバルセロナのトゥランやドルトムントのシャヒンを擁するトルコ、ベテランのロシツキーやチェフを擁するチェコがどう絡んでいくのか。

グループEは、ベルギー・イタリア・アイルランド・スウェーデン。

歴代最強と言われるベルギー代表と、ワールドカップ優勝経験国のイタリア。そこに大半がイングランドプレミアリーグで活躍する選手で固めたアイルランド、“王様”イブラヒモビッチ擁するスウェーデンがどう分け入っていくのか。

もう本当にヒリヒリする。

開幕試合はフランスが終了間際のパイェのゴールで勝利した。ゴールを決めたパイェは、まだ試合が続いているのに泣いていた。今大会、フランスは開催国として、かつての英雄にしてフランス最強時代の代表キャプテンを務めたディディエ・デシャンが監督を務めている。デシャンは規律を重んじ、ベテランでエースのベンゼマを外し(脅迫事件関与の疑いがあったため)、若手中心のフレッシュなチームで臨んだ。

前回フランスが開催国だったのは1984年。将軍プラティニ擁するフランスは開催国優勝を成し遂げた。そして2000年ベルギー大会では、ジダン擁する歴代最強のフランス代表がワールドカップとの連覇を成し遂げた。2度目の開催国優勝、そしてトータル3度目の優勝を狙うフランス代表“レ・ブルー”にかかる重圧は相当のものだったのだろう。パイェの涙はその重圧からの解放を意味していたと思う。

サッカーも長く観ていると、そして歴史を調べると、そのチームや選手、試合の「文脈」が見えてくる。「文脈」がわかると、試合の観方も変わってくる。

たとえば2015-2016シーズンに旋風を巻き起こしてプレミアリーグ優勝を果たした岡崎慎司のレスター・シティには、かつてEURO1992で補欠参加(ユーゴスラビア内戦の制裁により代替出場)からのミラクル優勝を果たしたデンマーク代表の名ゴールキーパー、ピーター・シュマイケルの息子カスパー・シュマイケルが所属しているのだ。

すると私のようなオールドファンは「あのシュマイケルの息子かー!」と感慨を覚えるのである。

今回のEURO2016でも、たとえばウェールズ代表など、EUROに出場しているだけでも泣けてくる。かつて若い頃から天才と謳われ、マンチェスター・ユナイテッドで数々の栄冠を手にしたライアン・ギグスという選手がいた。彼はウェールズ代表のエースとして何度もワールドカップやEUROの予選に挑み、いつもあと一歩で出場を逃してきた。そのウェールズからようやくガレス・ベイルやアーロン・ラムジーといった才能ある選手が出てきて、今回、晴れて初出場に至った。

私のようなオールドファンは「ギグスもきっと喜んでいるだろうな」と感慨を覚えるのである。

とにかくこれから約1カ月、熱い闘い(の録画)が私を待っている。

今回はやはり若きフランス代表に優勝してほしい。

決勝はスペインvsフランスを期待している。そして若く、よく走る“多人種軍団”フランス代表が、スペインの手慣れた“ティキ・タカ”を粉砕するのだ。

でもドイツも強いし、イタリアもしぶといだろうし、クロアチアも爆発するかもしれないし、若いイングランドも面白いし、イブラのスウェーデンにクリスティアーノ・ロナウドのポルトガルもいるし、レバンドフスキのポーランドも気になるし・・・などといろいろ考えながら予想にふけるのが、今は楽しくて仕方ない。

「僕らは少しずつ進む あくまでも」

 本屋で三沢陽一の『不機嫌なスピッツの公式』(富士見L文庫)が平台で並んでいるのを見たとき、スピッツは犬だろうか、バンドだろうか、と立ち止まって考えてしまった。本屋の平台で立ち止まるのは、いつものことなので、別に「ラブソング嫌い」とか「音楽マニア」などの帯の文言で立ち止まったわけではない。草野マサムネが出てきて「そんなことよりバンドやろうぜ」と言って名探偵の邪魔をし続ける作品であったり、登場人物が「ロビンソン」、「チェリー」、「若葉」、「つぐみ」の4人組がメインで活躍する作品であったりするだろうか、いや、さすがにそれはないだろう、と帯を見ているにも関わらず作中で描かれているのは犬なのだろう、と思いながら、買ったのである。

不機嫌なスピッツの公式<不機嫌なスピッツの公式> (富士見L文庫)

 犬はどこだ。犬の力! とかそういうわけではなく、バンドのスピッツを愛するがゆえにスピッツがあだ名となってしまった登場人物の話であった。しかし内容以上に衝撃的であったのは、もうスピッツですら、語られる対象としての歴史性を帯びてしまったということである。デビューが1991年のバンドに対して何を当然のことを書いているのだ、と思うが、うすうす気づいていたことを明示されることの怖さは確実に存在する。ちなみに作中ではその他、90年代に大活躍したバンドが引用されており、作者と同世代の私は頭を抱えているのだが(特段、悪い意味ではない)、これは若い世代に届くのであろうかと少し心配してしまった。学生からスピッツの話が出てきたことはないが、我々の世代が20歳前後のころにチューニングして考えるとTHE ALFEEぐらいだろうか。わかったようなわからないような釈然としない気分ではある。

 昨日は保護者会が開催された。私が学生のころを考えると大学で保護者会が行われるということ自体に驚いている。そして、熱心に質問をし、話をしてくれる親御さんを前にすると、学生のみんなはいい加減な気分で授業に出て、適当なレポートや課題を書いたりしてはいけないぞ、と思うわけである。もちろん自分自身が学生のときに、どうしていたのかは脇に置いている。大体が毎日のように読書をして、ゲームをして、ラジオを聞いて、と過ごしていたので、褒めるべきことはないように思うが、それでも全てがネタの宝庫である。どう昇華して、血肉とするかは自分自身の問題であり、難しいかもしれないが短期的・中期的・長期的な計画を脳内で随時補正しながら歩み続け、今ここで本を読んでいるわけだ。とカッコつけているが、親御さんとしゃべりながら、自分自身の学生時代を反芻し、頭を抱えていたのである(もちろん、これはダメな意味である)。

 その保護者会でも好評であった『文芸ラジオ』2号のamazon在庫がようやく復活したので、ぜひご購入願いたい。最後は宣伝で終わるのである。

文芸ラジオ 2号 ([テキスト])

BGM:スピッツ「夢追い虫」

色色衣

文芸ラジオのラジオ 第7回

久しぶりに更新しました。お時間があるときにお聞きください。

東北芸術工科大学芸術学部文芸学科が発行する文芸誌『文芸ラジオ』の編集部がお送りす­るラジオです。編集部の教員(池田雄一、玉井建也、野上勇人)および学生編集長である­佐久間くんがが喋っています。内容は新編集長紹介、『文芸ラジオ』2号に関して、第1­回文芸ラジオ新人賞、春のオープンキャンパスなどです。

第2回文芸ラジオ新人賞応募規定のお知らせ

「文芸ラジオ」では、創作小説・評論の新人賞を募集します。

    • [締切]
      2016年9月30日(金) 当日消印有効
    • [応募要件]
      未発表の小説[長編/短編]・評論
      ◇長編小説・評論:400字詰原稿用紙換算で50枚以上200枚まで
      短編小説:400字詰原稿用紙換算で30枚以上50枚まで
      ◇表紙にタイトル・ペンネーム・本名・連絡先・簡単なプロフィールを記載の上、紐またはWクリップで綴じること
      対象外:同人誌発表作、他の新人賞への応募作、卒業論文、Web掲載済み作品等
    • [宛先]
      〒990-9530 山形県山形市上桜田3-4-5
      東北芸術工科大学 文芸準備室 「文芸ラジオ新人賞」係
    • [賞]
      最優秀賞(金 10万円) 、優秀賞 ほか
    • [選考委員]
      池田雄一(文芸評論家)、川西蘭(小説家)、山川健一(小説家)
  • ※応募原稿は一切返却いたしません。また、応募要項・選考過程に関する問い合わせには一切応じられません。
    ※受賞作の出版権は藝術学舎に帰属します。
    ※選考委員・賞・発表時期・その他、詳細は東北芸術工科大学文芸学科Webサイトhttp://blog.tuad.ac.jp/tuad_bungei/(BUNGEIWeb)にて発表があります。ご確認ください。

第1回文芸ラジオ新人賞発表

 文芸ラジオ新人賞は意欲的な小説・評論を全国から募集し、46作品の応募がありました。厳正なる審査の上、下記のように第1回受賞者を発表いたします。

  • 最優秀賞 丸山千耀「星屑のブロンシュ」
  • 優秀賞 該当作なし

最終候補作
吉川敦「須弥山としゅみせん」
丸山千耀「星屑のブロンシュ」
蒔田あお『フェイス・トゥ・フェイス』

 全国から多くの応募をいただきまして、まことにありがとうございました。なお受賞作の丸山千耀「星屑のブロンシュ」は『文芸ラジオ』2号に掲載されております。講評はこちらに公開しております。また第2回文芸ラジオ新人賞の応募受付が開始になっております。

文芸ラジオ 2号 ([テキスト])

「必殺チョップで今に砕いてみせるわ」

 数年前までは大学で教えている際、「セカイ系ってなんですか?」という質問をよくされた。当意即妙に答えたというよりは、適当な対応をしていたような気がするので、学生にとって疑問はさらなる疑問を生み出していたように思える。というのも私自身が同時代的にエンタメを享受していながらもセカイ系というbuzzワードに対する興味関心が極度に低かったのである。したがって、ここ数年は聞かれてうんざりすることがなくなったので、もうbuzzワードではないのか、と安心している。単純に声の大きい人が言わなくなっただけかもしれない。辞書的には(そういう辞書があるのかは知らない)、「キミとボクの関係性とセカイの滅亡などの大きな事象が、中間的に位置するはずの社会を抜き取って直結している」ことを描いた作品といえばよいだろうか。

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 昨年だったか三宅陽一郎さんとコーヒーを飲んでいたときに、この話になり、「現実世界がどれだけ引きこもろうとも、社会性から完全に逃避することはできなくなってしまったからではないか」と言われたのだが、それも一理ある話である。Twitterやfacebookや何でもよいのだが、ネット上ですら引きこもろうとも、社会的な事件を目にしないわけにはいかない。社会的な事件や事象を目に入れないためにはtwitterをやらないのが一番で、誰一人としてフォローしていなくともトレンドで無理やり知らされてしまうし、フォロワーからのクソリプで知らされてしまうかもしれない。どちらにせよ、根本的には興味がないのでセカイ系はどうでもいいし、三宅さんと私は下戸なので二人が会うとコーヒーを飲んだり、下北沢のマックでジュースを飲んだりしている。なのでセカイ系警察のみなさんは僕に何かを教える必要はないし、シモキタならもっと美味しいコーヒー屋があるよとも教えなくてもいい。

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 それでもキミとボクの関係性自体に興味がないわけではない。キミとボクというのは他者関係の最初の一歩として認識されるものだろうか。親や兄弟というような生活文化や血縁を同じ背景に持つ人たちではない、何から話していいのか分らない人と結ぶ関係性という意味においては初めて経験するであろう最小単位である。この最小単位は様々な媒体で描かれている。恋愛であったり、同級生であったり、同僚であったり、と精神的な側面から社会的な側面に至るまで様々な点を含み、濃淡を描きながら物語化されていく。

 The pillowsはこのキミとボクを常に描き続けているバンドである。最初に聞き始めたのが中学生の時であったから、もう20年以上は聞いている。これほどまでに長く続くバンドになるとは思っていなかったし、中学生から聞くバンドが変わらないとも思わなかった。そして息が詰まらないのか心配してしまうほどに、山中さわおは同じ世界を傷つけるように歌い続けている。初期作品である「ガールフレンド」や「Tiny Boat」で描かれていた二人だけの甘い世界は、『Please Mr. Lostman』以降はぐっと減り続け、テーマ性をシャープに研ぎ澄ませていく。時に思春期の、時に何かに挑戦する人の、時に夢破れた人のそれぞれの心情を切りつけながら、キミとボクの世界は進行していく。そしてバンドの休止を経て、この2016年も活躍している。

 この聞く人によれば青臭いとも評されるべき世界観だが、現実世界ではいつしか脱却していかなければならない。その第一歩が大学という人もいるであろう。先日、オープンキャンパスが行われた。文芸学科では私の模擬授業(創作初級編)だけではなく川西蘭先生の模擬授業(こっちは創作上級編)、石川忠司先生の学科説明が執り行われ、教室内ではカフェが開設され、訪れた高校生たちと現役の学生や教員たちが語らいをする場が設置された。模擬授業は昨年は3人前後の参加人数であったのに、今年は40人以上のみなさんに参加いただいた。レジュメが足りなくなり、どたばたしてしまったことは申し訳なく思っている。

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 教員の相談コーナーにも様々な学生さんが来ていただき、入試の相談から大学生活に至るまで色々と話をしたし、好きな本や漫画の話もした。なかなか上手く話せなかった高校生の方もいるであろう。ずっと下を向いて何を話せばよいのかと思考停止状態になっている人もいたし、私はあまり他人に意見が言えないのですと言いながらもしっかりとこっちを見ている人もいた。誰がよくて誰が悪いわけでもない。キミとボクとの関係性から大きく飛び出していけるのが大学という場である。でも二人の関係性を捨てていいわけでもない。

全てにこだわりを、全てのチャンスボールにフルスイングを。今しかないときを今しかない両手で、ぎゅっと掴んで騒いでる(the pillows「I know you」)

 そうフルスイングなのだ。心配であったり、不安であったり、どうしていいのかわからない時も全てあるだろう。それでもチャンスボールがきたらフルスイングだ。次のオープンキャンパスはAO入試直前の7月末に行われる。AO入試で行われるグループワークの体験授業があるのだ。学科が公式で行う模擬試験というやつである。希望する人はぜひ参加して、我々教員と語り合おうじゃないか。なお試験本番で本当にバットを持ってフルスイングをする必要はないし(それはそれで面白いが)、無理やり気合を入れる必要もない。我々教員側が何を見ているのかというと気力だとか精神だとか面白さだとか可視化しにくいものではなく、自らの目標を明確にし、そこに至るための手段と労力を認識すること。これだけで大きく違ってくるという話である。そう。その場限りのフルスイングには何も意味はない。

BGM:the pillows「I know you」

ペナルティーライフ

もう間に合わない、ということはない。

 先週、5月28日に本学では春のオープンキャンパスが開催されました。文芸学科にもたくさんの高校生の来場がありました。ありがとうございました。

 当日は、入試相談と模擬授業を担当しました。
 スプリングセミナーに引き続き、模擬授業にはたくさんの高校生の参加がありました。
 模擬授業では、既存の物語の構造とキャラクター配置を利用して、新しい物語(小説)を創作する方法について話をしました。40分と短い時間でしたので、ややつめこみ気味でした。
 参加した高校生でよくわからないことがあったら、文芸学科まで質問のメールをください。可及的速やかにお返事します。

 さて、今回の投稿は、入試相談の際に受けた質問への回答でもあります。

「私はスプリングセミナーにも参加しなかったし、オープンキャンパスに参加するのも初めてなのですが、もう、AO入試には間に合わないでしょうか?」

 そういう質問を受けました。
 AO入試を目指す熱心な高校生の中には、1年生の頃からオープンキャンパスで大学を訪れ、スプリングセミナーにも参加し、作品も持ち込んで教員に講評を求めている方もいます。
 でも、そういう高校生だけが、AO入試を受験するわけではありません。

「今からでも充分、間に合います!」

 私(川西)は質問に対して答えました。

 AO入試は9月上旬に実施されます。出願はまだ先です。
 これまでAO入試を考えず、春になって思い立った高校生には「遅れた!」という意識が強いかもしれません。が、間に合わない、ということは、ありません。
 これから準備をすれば、充分に間に合います。

 AO入試で求める学生は、意欲があり、熱意があり、それを持続できる人です。才能に恵まれているかどうかは問題ではありません(どうやってそれを判断するのでしょう?)。才能を開花させることができるかどうかが問題なのです。そのためには、熱意と意欲を失わず努力し続けることが大切なのです。

 それとともに協調性も必要です。大学の演習ではグループ単位でおこなう課題も多くあります。一人だけでできることは限られています。チームで課題に取り組むことで一人ではできなかったことが可能になります。チームで課題を完成させることで個人の力も伸びます。

 春のオープンキャンパスに参加できなくて、「もう間に合わないかもしれない」と焦っている高校生がもしいたら、私はこう申し上げたいのです。

 まだ、全然、大丈夫ですよ。

 夏のオープンキャンパスが7月の終わりに開催されます。
 その時に参加してください。
 入試相談にも応じますし、学科で普段なにをやっているのか、演習内容についても紹介します。小説を書くためになにをすればいいのか、編集をするためになにが必要なのか、教職員や在学生が説明します。

 まだ、全然、大丈夫です。

 文芸学科への入学を目指すあなたがすべきは、将来、なにをやりたいのか、を明確にして、今の自分がそのためになにができるのかを考え、日々コツコツとそれをこなしていくことです。
 困ったら、不安に思ったら、相談してください。
 私たちは、できる限りの対応をしますから。

 

オープンキャンパスでした。

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5月28日(土)に東北芸術工科大学のオープンキャンパスが開催されました。

文芸学科では、教員・副手&学生スタッフ20名弱で、高校生や保護者の皆様をお迎えしました。

今回のオープンキャンパスでは、川西先生&玉井先生のストーリー創作の模擬授業が行われました。

どちらもすごい人気で、教室に入りきれないほどの高校生が参加してくれました。

「去年は3人くらいとほのぼのやったのに・・・!」と玉井先生もビックリ。

3月に開催したスプリングセミナーに参加してくれた高校生が、今回も来てくれたんですね。そのままぜひ文芸学科を受験して、もっとガッツリとストーリーづくりに取り組んでもらえると頼もしいです。

お待ちしております!

 

さてさて、オープンキャンパスは毎度のことながら準備が大変でした。

学科説明のための資料を毎回更新しているのですが、その更新の指示が、石川先生→野上という流れできました。

その一部をここでご紹介しちゃいます。

4~10 このままでもいいのですが、もっとかっこいいデザインが可能であればお願いします。

13~16 このままでもいいのですが、もっとかっこいいデザインが可能であればお願いします。

19 作品読解、もっといい写真ないですかね?

28 「漫画コース」を表現する画像、なんかないですかね?

不明な点があればご質問ください。

・・・・・。

かっこいいデザイン・・・。

わりと困惑しましたよ(笑)

そして今回一番「マジで!?」と思ったのは、学科のカリキュラム概念図が画像ファイルだったこと。

わかる人にはわかると思いますが、画像だと修正するのがかなり大変なんです。

そこで今後のことを考え、新たにつくりました。

途中で泣くかと思ったぜ。

つくり直したカリキュラム概念図
つくり直したカリキュラム概念図

 

そして今回のオープンキャンパスで芸工大中を騒然とさせた、野上ゼミのフリーペーパー「GEIKO’S KNUCKLE」。

※注:表紙はその筋の人ではありません。
※注:表紙はその筋の人ではありません。

おちゃらけた企画に思えますが、中身の編集制作はけっこう大変な作業でした。

1カ月弱という短い期間で、12人の教職員のアポをとり、取材撮影し、確認をとって入稿するという一連の工程を、ゼミのメンバーは本当によく頑張ったと思います。

コラム的に入った記事「まさみちのさかみち」や「TUADラクガキポイント」、相馬香織さんの4コマ漫画も面白かったです。

まだ残部があるので、欲しい人は芸工大食堂前から取るか、野上研究室に来てください。

早い者勝ちです。

 

『文芸ラジオ』第2号が発売になります

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東北芸術工科大学芸術学部文芸学科編『文芸ラジオ』2号が全国書店にて5月末に発売となります。ぜひ本屋にて手に取って、お買い求めください。

●目次
【Guest Talk 1】「小橋めぐみ 本に恋した私の、自分なりの「好き」を伝えたい」
【Guest Talk 2】「前田日明 闘うために、文学者たれ」
【Guest Talk Special】「吉木りさ 失敗して、恥をかいて、ボロボロになったほうが面白いものが書ける」

【特集】“ブラックニッポン”の歩き方
佐久間洋文「実態が見えないブラック社会の“不安”」
【鼎談】戸室健作・山本一輝・栗原康「ブラック社会を生きる若者たち」
ブラック社会“サバイバル”ブックレビュー
【小説】
笠原伊織「メメさん」
本間広夢「童女埋葬」
菅澤大樹「偽りの森のスクルーター」

【特集】人が歴史を語る時
辻井南青紀「ふたつ目の声(テクストの中の)獄中の吉田松陰・獄の外の杉文」
【対談】秋山香乃・石川忠司「吉田松陰はなぜ幕末を代表する存在なのか」
【小説】
平野謙太「友殺しの剣」
海谷南津子「紫の皿」

【小説】
川西蘭「スイム・ライク・フィッシュ」
狗飼恭子「同じ月を見ようとしただけ」
森田季節「ダイスの神様/研究ノート 概略日本感動史/四十九日恋文/文と文と文が手をとりあって、泥の上で」
山川沙登美「一時三分の女神夜行」
荒川匠「Carly」

第1回文芸ラジオ新人賞発表

黒木あるじの怪談教室

【対談】
森田季節・玉井建也「幼なじみとは恋愛できない!?」

【評論】
三宅陽一郎「人工知能が拓く物語の可能性」

【小説】
佐藤滴「ストックホルム恋愛学」
八木鹿ノ子「樹下葬」
遠藤沙緒梨「私は加藤を忘れない」
藤田遥平「セックスと耳掻き」
佐々木ヒロミ「六月に手をふる」
岡田エツコ「明日はなにを食べようか」
嘉村詩穂「雪花物語」
焼坂しゅり「区内のもめごと(仁茂田、第二地区版)」

文芸ラジオ 2号
文芸ラジオ 2号

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日販アイ・ピー・エス

 

藤枝市にいってきた

 田中城の取材で藤枝市にいってきた。
 田中城は、日本では非常に珍しい円形の縄張りを持つ平城だ。
 残念ながら縄張りの大部分は宅地開発され、遺構はわずかだが、緩いカーブを描く道や水路にその面影が残っている。

 縄張りをぐるぐるとめぐったあと、藤枝市立郷土物館・文学館を訪れた。
 近くには蓮華寺池もあり緑も豊富で非常に環境が良い。
 池端のベンチで本でも読みながら、二三時間すごせれば、いいリフレッシュになるだろう。
 藤枝市郷土博物館と文学館は隣接している(出入り口は別だが、同じ建物かもしれない)。
 文学館のポスターが掲示されていて、それは藤枝静男の展示案内だった。

 藤枝静男は(御存知のように)独特の世界観を持つ文学作品を書いた作家だ。藤枝市出身で、筆名の由来は出身地だ、とどこかで読んだ記憶がある。眼科医でもあり、医院を維持しながら執筆に励んだ。ただし、開業したのも執筆が行われたのも浜松市だ。今回、藤枝文学館で展示されている『一家団欒』の原稿も浜松文芸館の所蔵だ。

 時間があれば、展示を観たかったが、残念ながら、今回は郷土博物館だけで時間切れになった。『作家医師をとりまく世界 ~藤枝静男「一家団欒」から50年~』の展示は、7月10日まで開催されているので、次のチャンスを狙いたい。

 藤枝静男の作品を読むようになったのは、中年になってからだ。それまでは文章のうまい作家だな、とか、変な世界を描くな、とか思う程度だった。『空気頭』という作品があるが、落語の『頭山』みたいなものだろう、と読む前に決めつけていたりした。若気の至りである。お恥ずかしい。
 「私小説」という範疇で紹介されていたことも作品を敬遠していた理由のひとつだ。私が「私小説」を読むようになったのも中年以降だ。二十代に葛西善蔵や嘉村磯多を流し読みして、お腹一杯になったのだ。

 中年になって、私は仏教を知り(僧侶となり)、その縁で藤枝作品を読むようになった。『欣求浄土』という、そのまんまなタイトルの作品もあるが、藤枝作品には仏教の影響が濃い。しかし、仏教的思考・感性だけに惹かれたわけではない。藤枝静男が創出する、突拍子もない(常識を軽々と越えた、破天荒な、けれど、出鱈目ではない、ユニークな)世界に魅了され、どっぷりとはまってしまったのだ。
 生あるものと無機物が交合し融合するような不可思議な世界、支離滅裂の一歩手前(しかし、整合性は担保され、安易に妄想で回収されない)、寂寥、孤独、生死、無常……といったものが、透徹な筆致で描き出される。

 歳を取ったら、腰を据えて、こんな作品を書きたい、と藤枝作品を読んだ中年の私は思ったのだが、そのことを藤枝市郷土博物館・文学館からの帰り、蓮花寺池のほとりを歩きながら思い出した。
 あれから私は歳を取ったが、到底、藤枝作品の高みには手が届かない……。
 そんな思いが湧き上がってきたが、さほど悲しくも寂しくもなかった。夏のような明るい日差しと木々を渡る乾いた風のおかげだろうか、妙にさっぱりとした気分だった。
 歳を取るだけでは足りないなにかを得るには、どうすれば良いのか、私にはわからない。わかっているのは、書き続けなければならない、ということだけだ。書かなければ、なにも生まれてはこない。書いていれば、なにか生み出せるかもしれない。そんな、漠とした期待だけが私を前に進ませるのだろう。