文芸学科の卒業制作展(2021年度)が始まっております。

2月8日(火)から2月13日(日)まで卒業制作展が開催されます。ぜひとも図書館2階の文芸学科スペースにお越しください。11日(金)・12日(土)・13日(日)は予約をされた方のみの来場となっており、現在(2月8日)は予約が終了しております。8日(火)から10日(木)は予約なしで来場が可能です。

詳細はこちらの卒展サイトでご確認ください。

https://www.tuad.ac.jp/sotsuten/

また学生が運営している文芸学科卒展のInstagramtwitterもご覧ください。文芸学科自体のInstagramも随時更新しています。

卒業制作のうち優秀賞・部門賞を受賞した作品に関する講評は下記にアップしておりますので、ぜひご覧ください。

・卒業制作 優秀賞講評会

・卒業制作 現代文学部門賞講評会

・卒業制作 エンターテインメント部門賞講評会

卒制作品だけではなく、長岡ゼミ制作の「おじさん構文ポーカー」、野上ゼミ制作の「ジャンゴ写真集」も販売中です。「おじさん構文ポーカー」は大人気なので、在庫が少なくなっています。お早めにお願いします。また文芸学科と版画コースがコラボした画文集展も併催しております。

冬のストーリー創作講座開催のお知らせ(2022年2月12日)

冬のストーリー創作講座が開催されます。ご興味ある方はぜひご参加ください。

 

日時:2月12日(土)10時半-15時
場所:東北芸術工科大学(山形)
参加費:無料(要参加登録)
申込締切:2月8日(火)まで(下記のサイトからお願いします!)

当日の講義は玉井がしゃべりますが、石川先生とトミヤマ先生が優しく講評してくれます(玉井も講評には参加します)。

https://www.tuad.ac.jp/oc/winter/

webオープンキャンパスにて公開された動画(尾崎世界観さんトークショー/総合型選抜入試[専願体験型]模擬体験授業)

9月11日にwebオープンキャンパスが開催されました。ご参加いただいた皆様、まことにありがとうございました。その日からいくつかの動画が公開されております。文芸学科と関係あるものとしては以下の2つになります。

  • 【東北芸術工科大学・夏のオープンキャンパス】尾崎世界観さん × 文芸学科トークライブ

2021年7月31日の「夏のオープンキャンパス」にて行われました尾崎世界観さんのトークショーです。当初は9月14日までの期間限定公開でしたが、好評でしたので9月29日(水)までに延長されました。

  • 文芸学科『総合型選抜入試[専願体験型]模擬体験授業』

こちらも「夏のオープンキャンパス」で行われました入試模擬体験授業の様子を解説しています。単なる模擬授業紹介だと面白くないので、採点ポイントや試験対策まで踏み込んで話しています。入試を検討されている方はぜひ視聴してください。こちらの動画も9月14日までの公開でしたが、延長されまして10月8日(金)までとなりました。なお入試に関してはこちらのサイトをご覧ください。総合型選抜入試[専願体験型]の出願締切は9月29日です。

夏のオープンキャンパスの文芸学科イベント(7月31日・8月1日)

7月31日(土)・8月1日(日)に夏のオープンキャンパスが開催されます。参加される方はこちらよりお申込みください。文芸学科では以下のイベントを行います(場所はすべて図書館2階)。

〇小説『母影』などを上梓した尾崎世界観さん(リモート参加)と文芸学科教員によるトークイベント

日時:7/31(土)のみ 12:45-13:45

小説『母影』が第164回芥川賞候補作にノミネートされるなど、ミュージシャンとしてだけでなく執筆活動でも活躍する尾崎世界観さんがリモート参加し、文芸学科教員で、文芸評論家の池上冬樹先生、石川忠司先生と鼎談します。

※会場およびコロナ対策の関係上、入場を制限させていただく場合がございます。予めご了承ください。
※参加は受験生・高校生に限らせていただきます。
(会場の都合により、保護者・引率者の皆さまはご参加いただけません)
※鼎談のみで、歌唱・演奏はありません。
※鼎談の様子は、後日行われる本学イベントにおいて、限定配信する予定です。

〇『塩対応の佐藤さんが俺にだけ甘い』著者で文芸学科卒業生の 猿渡かざみさんトークイベント

日時:8/1(日)のみ 12:45-13:45

文芸学科の卒業生で、『塩対応の佐藤さんが俺にだけ甘い』(小学館「ガガガ文庫」)などが大ヒット中の作家・猿渡かざみさんに、在学生がインタビューします。在学中に猿渡さんが考えていたことやプロデビューしてからの苦労話など、文芸学科入学から作家になるまでのキャリアパスを在学生が聞き出します。

〇総合型選抜入試[専願体験型]模擬体験

日時:両日とも11:15-12:00、14:00-14:45

総合型選抜入試[専願体験型]で行われるグループワーク「昔話のリライト」を誰よりも早く体験できます。実際の入試のスタイルで、昔話を読み、仲間と話し合いながら、物語の再構築案をつくっていきます。在学生もサポートしますので、受験生はもちろん、高校1・2年生もぜひ参加してください。

入試個別相談、持ち込み原稿講評などは随時行っております。お気軽にご参加ください。

『文芸ラジオ』7号が発売になります。

『文芸ラジオ』7号が6月1日に発売となります。お近くの本屋またはネット書店にてお買い求めください。また5月22日・23日のオープンキャンパスで先行販売をいたします。

【メディア情報】

コミックナタリーさんにてお取り上げいただきました。
2021年5月24日(月)放送のFM山形「WAVE4 yamagata」にてお取り上げいただきました。
2021年6月6日(日)放送のYBCラジオ「re:にじぽり」にてお取り上げいただきました。

目次
〇Guest Talk

伊藤美来「あまり飾らないで、背伸びをしすぎず、自然体で表現する」

〇特集 陰キャのすすめ

Interview 桜井のりお「変化していく関係性の中でも、変わることができないもの」
Interview 尾崎世界観「まだ言葉になっていない気持ちをずっと探している」
Interview 清田隆之(桃山商事代表)「陰キャの自己認識はアドバンテージになる」
Interview 酒井順子「大人として生きていくというのは、キャラクターを被らないと成立しない」

陰キャが恋愛に向いていないってホント? 陰キャの恋愛を大調査
対談 陽キャ vs. 陰キャの初対面“恋バナ” 陰キャに恋愛はできるのか
陽キャ? 陰キャ? あなたのキャラと、気に入る本がわかる! 陰陽キャラクターチャート診断
評論集 陰キャのための処世術

〇特集 虚構旅行 行ったことのない場所に行ったつもりで紀行文を書いてみた

森田季節「東邦電鉄岩割線」
猿渡かざみ「クロガザミを求めて」
黒木あるじ「Mの王国」
餅井アンナ「バイトのできないサトゥルヌス」
小林希「神寄島」

〇小説・散文

市川拓司「隣のうちの少女」
二宮敦人「あなたへ」
天沢夏月「世界で一番美しい名前」
有間カオル「人を呪わば穴二つ……で足りるだろうか?」
みかみてれん「全自動的な女同士の恋の行方」
門田充宏「社会的舞踏(ソシアル・ダンス)」
櫻木みわ「セヴンデイズ」
星野舞夜「夏の終わりの空は」

小林唯人「褪せた写真に身を焦がす」
佐久間このみ「紅茶を飲む、手紙を書く」
鈴木龍「ルタキハレカ」
竹永上葉「靴のにおいを嗅ぐ女」
永尾天晴「双眸」

〇Book in Book 再録 文芸ラジオPetit Vol.03

 

文芸ラジオ7号
発売日:2021年6月1日
販売価格:1100円(税込)
出版社 : メタブレーン
ISBN-10 : 4905239990
ISBN-13 : 978-4905239994

オープンキャンパスにおける文芸学科イベント(5月22日・23日)

5月22日(土)・23日(日)にオープンキャンパスがあります。参加される場合は登録が必要になりますので、こちらにてお願いいたします。文芸学科(図書館2階)では、以下のイベントを予定しております。

〇『ラスト・サバイバル』シリーズ著者で文芸学科卒業生の大久保開さんトークイベント

日時:5/22(土) 12:45-13:30

文芸学科卒業生で「ラストサバイバル」シリーズや『絶滅世界』でお馴染みの大久保開さんをお迎えして、トークイベントを行います。在学中からの取り組みや卒業後、仕事をしながらの執筆などさまざまな点をお聞きします。またこちらで最新インタビューをご覧いただけます。

〇『スライム倒して300年、気づけばレベルMAXになってました』著者・森田季節さんトークイベント

日時:5/23(日) 12:45-13:30

ただいま『スライム倒して300年~』のアニメが放送中の森田季節さんをお迎えして、創作活動についてお聞きいたします。具体的な作品執筆の裏側だけではなく、コミカライズやアニメ化など幅広く活動されている森田さんならではのお話になるかと思います。

〇総合型選抜入試[専願体験型]模擬体験

日時:11:15-12:00、14:00-14:45(両日とも2回)

総合型選抜入試[専願体験型]で行われるグループワークを実際に取り組むことができます。1日2回開催しますので、都合の良い時間にご参加ください。受験を検討している方だけではなく体験してみたい1年生・2年生の参加も大歓迎です。

〇そのほか

面談や持ち込み作品の講評などを随時行っています。

文芸論5と文献リスト(2019年度)

2019年度の文芸論5のまとめを2020年度が終わりそうな2021年3月に書いている。この授業がスタートするまでは、一度も批評文や学術論文を読んだ経験もないのに「論文とか簡単に書けると思うので、研究者になれると思うんですよね」と学生から面と向かって言われる状況であったため、池田先生から授業を引き継いだときにまずは読む授業をやろうと思ったのである。

当然のごとくいきなり論考を執筆するのは無理なので、読んで接すること、内容を整理し、様々な考えや理論があること、最後に自分自身で書いてみること、この点を授業として取り組んでみたのである。

1:阿部純「好きなものを好きなように、どこまでも過剰により愉しく 自主制作メディアにおける「図像」の結び方」(『ユリイカ 特集 図鑑の世界』50巻14号、2018年)

私が赴任したときは学生たちの同人誌制作が活発で文フリへの参加も当然のように行われていたが、いつの間にかに外に出なくなっている気がする。自主制作という点ではZINEも同人誌も同じ枠組みなのだが、それぞれで認識の差異は存在しており、考えうるべきポイントだなと思っている。

2:田島悠来「越境・多層化する「アイドル」:人・物・場所の「アイドル」メディア論」(岡本健・松井広志編『ポスト情報メディア論』ナカニシヤ出版、2018年)

毎年のようにアイドル論を取り上げているが、アイドル自体に興味はない。けれどもなぜかアイドルをめぐる議論は面白く読んでいる。

3:西兼志「ライブ時代のアイドル/コミュニケーション・コミュニティ」(『アイドル/メディア論講義』東京大学出版会、2017年)

続けてのアイドル論である。メディアやコミュニケーションの問題に踏み込んで考えている。

4:柴那典「過圧縮ポップの誕生――「ジャンルの混在」と「八九秒の制約」から生まれた日本独自のポップミュージック形式」(高馬京子・松本健太郎編『越境する文化・コンテンツ・想像力』ナカニシヤ出版、2018年)

音楽の論考は実際に聞かないと始まらないだろうと流してみた。かけた曲は以下の通り。

斉藤由貴/卒業
AKB48/桜の花びらたち
BABYMETAL/ギミチョコ!!
THE MAD CAPSULE MARKETS/PULSE
聖飢魔II/蝋人形の館
MAKE-UP/ペガサス幻想
泉こなた……/もってけ!セーラーふく
どうぶつビスケッツ・PPP/ようこそジャパリパークへ
影山ヒロノブ/CHA-LA HEAD-CHA-LA
小沢健二/ラブリー
Betty Wright/Clean Up Woman
電気グルーヴ/Shangri-La
Bebu Silvetti/Spring Rain
TM NETWORK/Get Wild
JUDY AND MARY/そばかす
川本真琴 1/2
電気グルーヴ/ポケット カウボーイ

5:松井広志「メイルゲーム/ネットゲームのコミュニケーションと文化 ―多元的なゲーム史、ゲーム研究へ―」(松井広志・井口貴紀・大石真澄・秦美香子編『多元化するゲーム文化と社会』ニューゲームズオーダー、2019年)

ゲーム研究の流れを把握しつつ、メイルゲーム(手紙などで行われるPBM)を取り上げている。受講生の皆さんには昔のゲーム形態(しかもデジタルゲームではない)は馴染みのない様子であった。

6:加藤裕康「ゲーム実況イベント──ゲームセンターにおける実況の成立を手がかりに」(飯田豊・立石祥子編『現代メディア・イベント論』勁草書房、2017年)

ゲーム実況というとプレイ動画が喋りとともに配信されているイメージだが、ゲームセンターで行われる現象を取り上げている論考である。実際に見ないとわからないかもしれないと思い、複数のゲーム実況動画を流してみた。

7:嵯峨景子「吉屋信子から氷室冴子へ 少女小説と「誇り」の系譜」(『ユリイカ 特集 百合文化の現在』46巻15号、2014年)

少女小説研究を牽引している嵯峨さんの論考である。さておき受講生のなかには、これを読んで初めて少女小説というジャンルを知ったという人もいたので、それも一つの出会いである。

8:倉田容子「男装少女のポリティクス―一九七〇年代から八〇年代にかけての〈少女を愛する少女〉表象の転換」(西田谷洋編『文学研究から現代日本の批評を考える』ひつじ書房、2017年)

少しジェンダーを考えようとなった。現在進行形の百合ではなく、男装女性に含まれる様々な論点が迫ってくる論考である。

9:久米依子「トラブルとしてのセクシュアリティ――〈男の娘〉表象と少女コミュニティ志向」(一柳廣孝・久米依子編『ライトノベル・スタディーズ』青弓社、2013年)

男装女性を取り上げたので、男の娘を取り上げてみた。学生からのレポートも痛快な内容が書かれるなど、論点が複数把握されて面白い回となった。

10:石原千秋「読者にできる仕事」(『読者はどこにいるのか』河出書房新社、2009年)

作品自体を考えるのはもちろん重要だが、どう受け取られているのかという受容論も考えるべき点である。

11:小山昌弘「『風の谷のナウシカ』―物語の系譜マンガとアニメの相違点」(『宮崎駿マンガ論―『風の谷のナウシカ』精読』現代書館、2009年)

数年前にナウシカの論考を別の授業で取り上げて、ふとナウシカを見ているかどうか確認したら、数名しか見ていなかった事実を目の当たりにしたというのに、私はまた取り上げている。論考は物語論だけにとどまらず、マンガとアニメそれぞれを踏まえて考察されており、深い内容となっている。

12:小池隆太「物語構造論(ナラトロジー)―アニメ作品の物語構造とその特徴について」(小山昌宏・須川亜紀子編『アニメ研究入門 応用編』現代書館、2018年)

物語構造は文芸学科の必修授業で取り組んでいるので、復習と捉えている。物語構造論の流れを学ぶことができ、よくまとまった論考である。

13:河野真太郎「無縁な者たちの共同体――『おおかみこどもの雨と雪』と貧困の隠蔽」(『戦う姫、働く少女』堀之内出版、2017年)

毎年、最後の数回は具体的な作品論や作家論を取り上げるようにしている。最終課題では作品や作家を取り上げるのもOKにしているので、その先行事例としてである。この論考は貧困や労働の観点から作品を切り取っており、非常に興味深い。

14:泉政文「〈世界〉と〈恋愛〉―新海誠の作品をめぐって」(黒沢清・吉見俊哉・四方田犬彦・李鳳宇編『アニメは越境する』岩波書店、2010年)

ここで驚いたのは新海作品の認識度合いが高く、かなりの数のレポートで作品を踏まえたうえで論考批判を行っていたことである。具体的な作品内容を踏まえて語るのは必要な基礎能力である。

15:受講生の最終課題講評

毎年のように受講生の皆さんが書いた最終課題を検討していったのである。

〇過去の文芸論5
文芸論5と文献リスト(2017年度)
文芸論5と文献リスト(2018年度)
文芸論5と文献リスト(2020年度)

文芸論5と文献リスト(2020年度)

2020年度後期の文芸論5はコロナ禍のなか完全オンラインで行われた。途中、大学のWi-Fiの調子が悪くなり、自宅からの講義となってしまった……のが後に思い出になると良いのだが。

授業内容としては毎年のようにまずは批評や学術研究の文章になれること、次のステップとして様々な考え方(理論や方法論など)があるのに触れることを目的としている。そしてただ受講するだけではなく、文芸学科の授業なので最後に自ら書いてみるという流れである。

1:堀野正人「メディアとしての都市の演出空間」(遠藤英樹・松本健太郎『空間とメディア』ナカニシヤ出版、2015年)

初回は都市空間の話をしていた。山形市という都市空間に存在するという点はもちろん加味しているが、それだけではなく都市的なものに我々はそれなりに接しているのではないか。と思い、取り上げたのであった。

2:岡本健「多様な「空間」をめぐる多彩な「移動」 ポスト情報観光論への旅」(岡本健・松井広志『ポスト情報メディア論』ナカニシヤ出版、2018年)

コロナ禍で物理的な移動を見つめなおす機会が増えたと思うが、それだけではなく物理的ではない移動も目を向けなければならないのかもしれない。

3:西兼志「〈キャラ〉と〈アイドル〉/拡張されたリアリティ」(『アイドル/メディア論講義』東京大学出版会、2017年)

アイドルの話というよりはキャラクター論に終始した授業となった。とはいえキャラクターをめぐる議論は創作だけに関わるものではなく、アイドルはもちろんのこと、我々の日々の生活にも入り込んでいる。

4:香月孝史「アイドルが「演じる」とは何か」(『乃木坂46のドラマトゥルギー 演じる身体/フィクション/静かな成熟』青弓社、2020年)

そして乃木坂46という具体例を検討してみたのである。乃木坂の活動はバナナムーンゴールドで零れ落ちる情報しか接していないので(要はほぼ知らない)、乃木坂の活動内容を含めて、考えさせられていた。

5:松井広志「〈複合的メディア〉としてのゲーム:TRPGをめぐる人・モノ・場所から考える」(岡本健・松井広志『ポスト情報メディア論』ナカニシヤ出版、2018年)

ここからゲーム研究へと移行する。TRPGは思いのほか学生にも人気があり、逆に受講生の皆さんが自らの遊んだゲームやプレイ動画を教えてくれることになった。

6:榊祐一「物語としてのゲーム/テレプレゼンスとしてのゲーム――『バイオハザード』を例として」(押野武志『日本サブカルチャーを読む ― 銀河鉄道の夜からAKB48まで』北海道大学出版会、2015年)

デジタルゲームの研究も取り上げてみた。『バイオハザード』をプレイしている学生はさすがに少ない印象ではあったが、映画の影響か作品自体の認知度は非常に高く、その点は驚いた。

7:三宅陽一郎「デジタルゲームの地図をめぐって」(『ユリイカ』52-7、2020年)

地図研究は地理学などにおさまらない学際的な分野だと思う。地図的な現象は、我々の生活にも、そしてゲーム空間にも存在し、それをどう認識しているのか、どう考えるのかが問われている。

8:久米依子「少女小説の困難とBLの底力」(大橋崇行・山中智省『小説の生存戦略 ライトノベル・メディア・ジェンダー』青弓社、2020年)

さてここから話がまた違う方向になる。少女小説とBL小説を端的に比較しており、ある意味、著者の思考を把握できる論考であった。

9:相田美穂「腐女子とオタクの欲望/身体/性」(金井淑子『身体とアイデンティティ・トラブル』明石書店、2008年)

10年以上前の論考なので、現在と状況がそれなりに違っている。その点を含めて、歴史的な意味を踏まえて考察するには面白い内容であった。

10:石原千秋「語り手という代理人」(『読者はどこにいるのか 書物の中の私たち』河出書房新社、2009年)

ここから文芸学科らしく文学理論に寄せていった内容になる。語り手の問題は学生の皆さんが毎年、批評のレポートに書いてくるので、それなら取り上げようと思った次第である。

11:小池隆太「物構造論からみる宮崎駿監督作品」(岡本健・田島悠来『メディアコンテンツスタディーズ』ナカニシヤ出版、2020年)

物語構造の話も文芸学科の必修で取り上げているので、学科の学生には復習となる。この論考は宮崎駿監督作品を取り上げており、受講生には把握しやすかったように見えた。

12:山中智省「遍在するメディアと広がる物語世界――メディア論的視座からのアプローチ」(大橋崇行・山中智省『小説の生存戦略 ライトノベル・メディア・ジェンダー』青弓社、2020年)

では現在の小説をめぐる状況はどうなのかを考えてみた。メディアミックスやアダプテーションをめぐる状況は、さまざまな作品で見られるので、考えるべきポイントであろう。

13:中村三春「宮崎駿監督映画における戦争の表象—『風の谷のナウシカ』から『風立ちぬ』まで」(西田谷洋『文学研究から現代日本の批評を考える』ひつじ書房、2017年)

ここからは具体的な作品やクリエーターにフォーカスした論考を読んでいく。宮崎駿監督作品は受講生も接したことがあり、取り上げやすいのだが、それもいつまで続くか……と思いながら毎年取り上げている。

14:畠山宗明「中味のない風景 新海誠と風景の「北関東性」をめぐって」(『ユリイカ』48-13、2016年)

新海作品はよく「背景や風景がきれい」と言われるし、学生のレポートでも書かれるので、それではと思い、取り上げた論考になる。

15:受講生により最終課題講評会

というわけで14回分、さまざまな論考を読んだので、今度は皆さんが書いてみようとなる。

〇過去の文芸論5
文芸論5と文献リスト(2017年度)
文芸論5と文献リスト(2018年度)
文芸論5と文献リスト(2019年度)

『MONSTER』と深夜バスと『怪物事変』

高校生のときに読んだ浦沢直樹さんの『MONSTER』に「砂糖の味を忘れればいい」というセリフがある。殺しのターゲットである男性がコーヒーに角砂糖を五つ入れるのを殺し屋が見てしまい、「美味しいわけないだろう」と興味を示してしまったがゆえに、ターゲットを殺せなくなってしまったというエピソードである。個人的にはいつも飲んでいるカフェオレは無糖で、研究室で飲むのも同じく砂糖を入れないのだが、授業や会議を頑張らねばと思うときは微糖の缶コーヒーを買っている。微糖と言いながら甘いので、その甘味とカフェインで「頭がよくなる気がする」と『よつばと!』のとーちゃんのようなリアクションをしているのだ。悦に浸っているともいう。せいぜいそのぐらいなので確かに角砂糖を五つ入れるのに対して、疑問を持つのは理解できる。とはいえ缶コーヒーの微糖は角砂糖でいうと、何個分なのかすら知らないので、まあ、五個も尽力すれば飲めるのかもしれない。

そういうことを20年ぶりに乗車した夜行バスの中で考えていた。大学生のときの帰省以来ではあるが、最近のバスはどこまで進化したのかという好奇心からの乗車ではなく、地震で交通機関の利用が制限されてしまったからである。先日の地震により新幹線が不通となってしまったため、選択肢が「山形から夜行バス」、「仙台まで移動し在来線(もしくは夜行バス)」、「新潟までバスで移動し新幹線」の3つになってしまい、近郊から夜行バスに乗車するのを選んだのだ(もっと選択肢はあるだろうとは思うけれども)。どうせ眠れないだろうと思ってはいたが、そうは言うものの目をつむれば気づいたらバスタ新宿にいるのではという淡い期待もしていた。淡すぎた。

結局、スマホのradikoでTBSラジオとニッポン放送をザッピングしながら、kindleで『魔法使いの印刷所』(もちんち・深山靖宙)や『怪物事変』(藍本松)、『ざつ旅』(石坂ケンタ)を読み、疲れたらスマホでテクテクライフをしていた。その意味では20年前より遊べるものが増えているため、以前のように所在なく暗闇の中で考えごとをするのはなくなったのは確かである。しかし相変わらず夜行バスは狭いままであった。『ざつ旅』はコロナ禍の影響下の物語が描かれ、『魔法使いの印刷所』ではコミケを模したマジケが中止となっている。夜行バスのなかでマスクをしたまま読んでいると、口の周辺が覆われているからか漠然とした不安に襲われてしまう。ぐっと目を閉じていてみても眠れるわけでもないので、ふたたび読書に取り組むしかない。『怪物事変』が面白いのは、主人公の価値観がなぜか画一的で、人間的な文化圏を背景にしていない直截的な判断を下し続ける点である。ほかの登場人物は人間社会に入り込んでいるから主人公とは違うと解釈しようにも「本質的に考えると人間社会に溶け込みすぎでは?」という人物もいるので、結局、主人公の特性なのであろう。その彼が自らと他者とを少しずつ区別するようになる契機が、自らが絡んで引き起こした出来事の影響だけではなく、仲間に関わるイベントでも変化を示している。

自己と他者、集団と社会という認識は、この作品の中でジャンプ的なコードに乗せられて描かれている。主要メンバーに焦点を当てたイベントを連続させ、彼らの物語を描き、 新しいステージに立つとレベルアップのためのイベントも引き起こす。そして登場人物が増えてくると全員を同じ場所で描くと混雑するのでキャラクターの出し入れもうまく回している。非常にわかりやすく手順を踏んで物語を目の前に出してくれるため、バスの中で安心して読めるのだ。その主人公の自我の芽生えと変化により、自己と他者の区別というよりは自己と集団化へのフェイズに少しずつ展開している。自己と所属する集団(この作品でいうと仲間)への認識について、「おはようございます」というラジオパーソナリティからの挨拶が右から左に通り過ぎていくほど動かない頭で思いはせていた。その際、頭の中で浮かんでいたのが、前述の『MONSTER』のセリフである。他者の文化的背景が認識できるようになってしまうと、自己のみで完結していた認識の中に他者が入り込んでしまう。その他者性により機械的に干渉することができなくなる。その過程は『MONSTER』ほどでないにせよ、緩やかに『怪物事変』でも描かれており、物語の普遍性と夜行バス内の見知らぬ人々の文化的背景について考え込んでいた。しかしバスタ新宿で降りるのは私を含め数名で、予想以上に多くの人々が終点のディズニーランドまで乗っていくとは思いも及ばなかったのである。