過去照会

過去照会

土屋裕太郎 Yutaro Tsuchiya
[映像計画コース]

マエキタミヤコ 評
プライベートな感じと、それが公になる境が溶けるところが、見ていてグラッとくるのかなと思いました。

酒井忠康 評
誰が言った言葉か思い出せないのだけれど、カメラを向けた時に相手が構えないというのは、いわゆる先天的なカメラマンだという写真家の話。写真の技術や芸 術性はその人の評価につながるけれども、その前に、カメラを持った時に相手が構えないで自然に撮られてしまう。そういうところが彼にはあるね。だからイン タビューされている相手は、非常に気楽に楽しそうに話している。そういう意味で、気持ちの良い作品に仕上がったのだと思います。

(2009年度 卒展プライズ受賞作品)

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農人(のうと)

農人(のうと)

菱彩香 Ayaka Hishi
[情報計画コース]

マエキタミヤコ 評
まず、着眼点で時代を読んでいると思いました。休耕田や耕作放棄地に人を送ろうという地方行政や、「行きたい!」という若者、高齢化やリストラで退職した けどまだまだ元気に働ける人などいろいろな人たちにとって、今、農業をどうにかしなくてはいけないということがトレンドになっています。だから、たくさん 脚光を浴びれば腰を上げる人も出て、NGOやNPOも数多く増え、デザイナーたちもみんな協力してその表現も増えてきている。ファーマーズマーケットが表 参道で開かれたり、いろいろな地産地消の野菜コーナーができたりして、それぞれがブランド化している中で、ここ数年の時代の中でもこの作品はすごく抜き出 ていると思いました。それが、この山形の芸術大学の中にあったということに私は驚きました。特に、表紙の記号化された生物多様性のグラフィックがとても好 きで、「農人」というロゴの中に、トラクターや農機具らしきものや種らしきものなど、いろいろな人の今の農業を巡る関心事や心配事が入っているような気が して、すごく感動しました。

(2009年度 卒展プライズ受賞作品)

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私のもちものから考えるプロダクトデザイン

私のもちものから考えるプロダクトデザイン

管野一葉 Kazuha Kanno
[プロダクトデザイン学科]

宮島達男 評
時々、デザインというのは、本当に必要なのだろうかと考えることがあります。つまり、今の様々に意匠を凝らしたデザインというものは、豊かな国のごく限ら れたお金持ちのためだけに作られているのではないかという疑問です。世界人口の90%以上の人たちは、まず食べたい、まず寒さを凌ぐ衣服を着たいという生 存の欲求がある。その人たちの欲求を叶えるデザインというのはありうるのだろうか、と。そういう意味で、これは本質的な問題を突き付けた作品になってい て、ほとんどアートに近いのではないかと思いました。

(2009年度 卒展プライズ受賞作品)

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矢萩譽大 Takahiro Yahagi
[工芸コース]

宮島達男 評
伊藤公象という陶芸の大家を知っていますか? その人も土の自然の形を使って焼いた時のひび割れをテーマにしている人で、今回のあなたの仕事とよく似ていますね。「僕はその人のことを知らないで、自然 に作った」と言う若いアーティストがいますが、社会に出たらそれは通用しません。陶芸家として同じ世界、同じ時代にいるのだから、知らないことは〈罪〉と いうことを意識してほしいですね。自分と似た作品を作る人と、自分とはどう違うのか、常に意識しておかないと単なるコピーとして扱われてします。今回は賞 に入りましたが、社会に出る前に大学院で知識や技術をもっと詰め込んで、精進して欲しいですね。

(2008年度 卒展プライズ受賞作品)

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現在

現在

山本雄大 Masahiro Yamamoto
[彫刻コース]

酒井忠康 評
たいへん面白く見ました。素材の選択ですが、まずいろんな素材と対話するという考え方が大事だと思います。これは、あなたの仕事をかなり決定付けるところ があると思います。銃を作っているとそれに縛られ、人体を作っているとそれに縛られ、だんだん窮屈になっていくと思うのは、想像力の問題です。だから、 まったく異質な問題意識を同時に考えてみるのはどうでしょうか。例えば音楽を彫刻で捉えると、音楽の中の彫刻性とか、彫刻の中の音楽性とかを見つけられる と思います。この作品は緊張感があると思います。結論的な考え方ではなく、何でもやってみることが大切ではないでしょうか。

(2008年度 卒展プライズ受賞作品)

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CYCLE Ambulance -途上国を支援する為の移動体デザイン計画-

CYCLE Ambulance
-途上国を支援する為の移動体デザイン計画-

野口剛 Go Noguchi
[生産デザイン学科]

小山薫堂 評
ブルガリが「セーブ・ザ・チルドレン」というものを展開しています。ブランドがこのような支援をしている中で、エルメスやセリーヌなど、自転車を作ってい るブランドも多いようです。ブランドに野口さんの作品を作らせて、そのブランドが寄付をする形でこれを広げていき、ひとつのファッションとなったところ で、先進国でもファッションとしてこの形が広がりスタンダードになれば、もっと色々な人の支援が集まっていくのではないでしょうか。

宮島達男 評
1月にウガンダへ行き、エイズ孤児のワークショップを行なってきました。現地の子どもの夢は車を持つことです。車が憧れの対象であり、車を持っている人が とても少ない。その中で、自転車というのはとても良いと思います。なぜなら現地で地産地消できるからです。世界や開発途上国のことを思うまなざしが、素晴 らしいと思います。

(2008年度 卒展プライズ受賞作品)

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死神

死神

氏家正貴 Masaki Ujiie
[映像計画コース]

宮島達男 評
庄内映画村で撮っただけあると思います。おくりびと効果? とても素晴らしく、完成度の高い映像です。本人が言ったように、想像力の邪魔をさせません。な ぜなら、顔が半分切れていたり透明になっていたりするため、出演者のキャラクターを特定しない手法になっているからですね。映像をここまできちんと見せら れるのは、物語性があるからでしょう。そこに世界観が広がるため、面白いと思います。無理をして自分で物語を演出して作らなくても、このようなことが可能 であることを改めて感じさせてくれる作品でした。

小山薫堂 評
とても羨ましいと思いました。23年前に自分が制作した卒業制作は、とても稚拙でした。現在使われている機材とはまったく違っていて、編集も簡単にできま せんでした。パソコンで簡単に編集でき、安い機材でも撮れるというこの時代に生まれたことが羨ましいですね。

(2008年度 卒展プライズ受賞作品)

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Super Market -evident-

Super Market -evident-

佐々木綾子 Ayako Sasaki
[大学院 日本画領域]

宮島達男 評
山下清や宗方志功のようにオートマチックに描いていくさまが、エネルギッシュに画面から滲み出ています。色々なものがありながら、なお絵画の力を持ち得て いる。形に縛られているというわけではないのですが、きちんと流動的でもあります。作品は何枚かあり、色があるものと無いものがありました。今回、審査員 は線だけのものを評価したのですが、これに関して自分で答えを出して欲しいと思います。スーパーで働き、社会に触れて人々を観察し、そういう中から作品が 生まれているということ。芸術を社会でどう活かすか、という問に対して、考えてきた成果がここに出ているのではないでしょうか。

(2008年度 卒展プライズ受賞作品)

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踊る身体

踊る身体

花野明奈 Akina Hanano
[環境デザイン学科]

宮島達男 評
花野さんの建築デザインの魅力は、その土地から湧き出た建築が存在し得るはずだという信念から出発しているところです。建築家があるデザインを世の中に バッと提案して、次の人がその方法論が気に入らないからバッと壊していくような循環は不健全だ。山形でも東京でも、その土地固有のストーリーから立ち上 がってくる建築のエッセンスがあるはずで、それを私は追求したいという言葉を彼女から聞いた時、やはり制作する際に前提としてあるべき哲学が重要だと感じ ました。表面だけをとり繕って、他人と比べるのではなくて、今、自分が何を求めているのか、そのためにどんな素材を選んで、どのように構成していくのかを 皆さんも彼女のように真剣に考えてほしい。学生でありながら自分自身の2本の足で立って、オリジナルな思索を作品に見事に転換した希有な作品です。

(2007年度 卒展プライズ受賞作品)

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いくつもの世界が混在する

いくつもの世界が混在する

望月梨絵 Rie Mochiduki
[グラフィックデザインコース]

後藤繁雄 評
望月さんの作品は天然の才能なのですけれど、手前のテーブルの上にあるブックの仕上がりも抜群に良くて、自分の資質を理解した上で、ちゃんとレイアウトさ れていた。ここにはグラフィックコースの教員の方々の丁寧な指導の痕跡が見てとれますね。グラフィックの展示会場には全般的にそういう好ましい印象を持ち ました。商業的な指向性をもつグラフィックデザイン教育の範疇にも入っていないし、かといって「お前らは自由にアートしてろ」といった、曖昧な自由も与え ていない。ここが重要なところで、普通はどちらかに偏ってしまうのですよ。いい指導を受けている、若い人の隠れた才能を深いレベルから引き出しているなぁ と思いました。

(2007年度 卒展プライズ受賞作品)

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