2011.09.21
ふらっぐしっぷ、飛翔!
2011年9月19日。せんだい演劇工房10-BOXで、『荒井良二とふらっぐしっぷ』最後のライブペインティングがおこなわれました。10-BOXがある若林区は、震災で大きな被害を受けましたが、同施設はいちはやく仙台の文化人・演劇人・アート系NPOによる支援活動拠点としてひらかれた場所です。
前日、七ヶ浜国際村でのワークショップのあと、「翌日の降水確率30%」との情報に意気揚々と仙台入りした荒井良二さん&ふらっぐしっぷ一行でしたが、深夜におよんだ設営も報われず、翌朝はあいにくの涙雨…。ふらっぐしっぷのフィナーレは、当初予定していたウッドデッキテラスから、BOX1に会場を移しての実施となりましたが、それでも、悪天候のなか200人以上の仙台市民に参加いただきました!
黒塗りの稽古場・BOX1に、荒井さんがこれまで塩竈と多賀城で描いてきたフラッグが掲げられました。真ん中には長さ4m/幅1mの『ふらっぐしっぷ』が鎮座しています。これは骨組みを角材で組み、綿布で覆ったもの=荒井さんのキャンバスです。舞台の上にはマスト用の布を垂らし、『荒井良二と連絡船』メンバーであり、この日のスペシャルゲスト・坂本弘道さんがチェロとともに控えます。
黒い空間/白い箱船に、荒井さんのビビッドな色彩が飛散すると、会場は一気にヒートアップ!坂本さんのアヴァンギャルドなチェロの演奏も、最後には火花まで飛び出し、いつもどおりの筋書きなしのライブペインティングとなりました。
はじめは荒井さんに圧倒されていた子どもたちも、誰に促されることもなく、自然に前に進みでて、一緒に手のひらで描きはじめます。変幻自在なチェロの演奏をバックに、絵具まみれになっていく舟と子どもたちの姿は… かなりシュールでした!
「キ レイゴト」ではなくて、〈描く〉原始的な衝動を見ている感覚。開放的なテラスでは、こういう展開にはならなかったと思います。「ほほえましい」とか「復 興」とか「応援」といったボジティヴな言葉では導きだせない、もっと深いところに流れている非日常の時間… 「いのち」とか「きおく」とか「ながれ」とか「あちら/こちら」といった言葉が次々と心象に浮かんできます。
白い舟の天板には、たくさんの野菜や果物が子どもたちの指で描かれました。満載です。そして舟の側面には、空と、山脈と、太陽と、夜と、星が描かれました。山々の尾根の上を、いくつもの「ふらっぐしっぷ」が飛んでいるのです。なんて不思議で心躍る、想像力の飛翔!
ペインティングの間々に、荒井さん自らギターを演奏しての〈ライブ〉もおこなわれました。吠えるように荒井さんが歌った『どこまでだって、いつだって』の歌詞がいまも耳に響いています。
わすれないよ わすれないよ わすれないんだ わすれないんだ わすれようとわすれてみたが わすれないんだ わすれないさ わすれないさ わすれませんよ わすれませんよ どこまでだって いつだって(A.R)
この歌は、きっとあの日の石巻での感情を綴ったものだと、僕は確信しています。
最後に、舟のマストに荒井さんは「ぼくらの」とだけ描きました(写真がなくてスミマセン)。
僕にとっての「ぼくらの」は、この日を一緒につくりあげた「ぼくらの ふらっぐしっぷ」。東北はたくさんの大切なものを失ったけど、それでも東北に居たままで、想像力と仲間がいれば遠くへ行ける。
また荒井良二さんと、宮城のみんなと、こんなマジカルな旅をしたいなぁ。
宮本武典(TRSOプログラムディレクター)