「こういう小説家講座、東京にありますか?」
「残念ながらないと思います。山形に来るしかないでしょう」
長年世話役をつとめている「山形小説家・ライター講座」や「せんだい文学塾」の終了後に、以上のような会話をよくする。聞くのはほとんど東京在住の作家志望者や文学ファンである。講師(有名作家)の名前にひかれて(講師の話を聞きたくて)、東京からわざわざ山形や仙台に訪れる人たちだ。
そういう人たちの顔を見ると、なぜ作家の生の話を聞くためにわざわざ東北に来なくてはいけないのか? という疑問がのぞいている。その気持ち、よくわかります。日本の中心ともいうべき東京に作家たちはたくさん住んでいるのに、なぜ東京に小説家講座はないのか? と思うでしょう。一人の評論家や作家が講師をつとめるカルチャーセンターの講座はあるけれど、山形や仙台講座のように、毎月異なる作家(それも有名作家)が講師をつとめる講座が、どうして東京にないのかと思うのは当然です。そして、どうして往復2万3000円近い新幹線代(夜行バスだとその半分以下)も払って、東京から山形や仙台に来なくては行けないのか、とも。
なぜ東京に小説家講座がないのかはわかりませんが(理由はある程度想像できますが、ここには書きません)、東京に存在しない以上、山形と仙台に通うしかないでしょう。
東京から来る人の話ばかり書いていますが、実際は、山形講座には全国からつめかけています。遠くは福岡や徳島、北海道や京都からも通っている人がいます。山形講座出身作家の深町秋生は作家デビュー前は勤務先の大宮や福岡から通っていましたし、福岡在住の受講生だった佐伯琴子さんは昨年『狂歌』で第10回日経小説大賞を受賞したばかり。そう小説家講座からぞくぞく作家が生まれています。
あなたがもしも文芸や創作に関心があり、将来作家や編集者になりたい高校生なら、山形の大学を選ぶといいでしょう。授業も充実していますし、何よりも、東京から通う必要もなく、毎月名だたる作家や日本を代表する編集者に会えるのですから。
(以下、2019年度の山形小説家・ライター講座とせんだい文学塾の概要をのせておきます。)
■2019年度「山形小説家・ライター講座」概要(敬称略)
4月28日(日)太田愛(『相棒』脚本家&小説家)
5月26日(日)あさのあつこ(野間児童文芸賞&島清恋愛文学賞作家)
6月23日(日)穂村弘(歌人・評論家・エッセイスト。伊藤整文学賞&若山牧水賞)
7月28日(日)今村翔吾(角川春樹小説賞作家)
8月25日(日)三浦しをん(本屋大賞&直木賞作家)
9月22日(日)佐藤多佳子(本屋大賞&山本賞作家)司会・紺野仲右ヱ門
10月27日(日)朱川湊人(直木賞作家)司会・黒木あるじ
11月24日(日)角田光代、井上荒野、江國香織(直木賞作家たち)
12月8日(日)阿部智里(松本清張賞作家)司会・紺野仲右ヱ門
1月26日(日)川本三郎(文芸評論家。読売文学賞&毎日出版文化賞)
2月23日(日)酒井順子(講談社エッセイ賞作家)
3月22日(日)有栖川有栖(本格ミステリ大賞作家)司会・三沢陽一
※午後2時より。場所は山形市遊学館(10月、11月、12月は文翔館)
※高校生以下無料。学生1000円。一般2000円。
※ホームページは三つ。順に講座紹介、前半の講義録、後半のトークショー。
http://bungei.pixiv.net/yamagatakouza
https://pixiv-bungei.net/archives/category/serial/ymgt-kouzadayori
https://pixiv-bungei.net/archives/category/serial/ymgt-sugao
■2019年度「せんだい文学塾」概要(敬称略)
※タイトルは後半のトークショーのテーマです。
http://sites.google.com/site/sendaibungakujuku/
4月20日(土)青崎有吾(鮎川哲也賞作家)「書き手と読み手の二重人格」
5月25日(土)あさのあつこ(野間児童文芸賞&島清恋愛文学賞作家)
「表現 プロとアマは違うのか」
6月29日(土)熊谷達也(直木賞作家)「視点の決め方と使い方」
7月(※休み)
8月24日(土)三浦しをん(直木賞作家)「描写と説明」
9月21日(土)平松洋子(ドゥマゴ文学賞&講談社エッセイ賞作家)「食をめぐる文章について」
10月26日(土)朱川湊人(直木賞作家)「演劇の書き方から学ぶ」司会・黒木あるじ
11月23日(土)角田光代、井上荒野、江國香織(直木賞作家たち)
「3人の読み方はこんなに違う パート4」
12月(※休み)
1月25日(土)中条省平(文芸評論家)「小説を読むというテクニック」
2月22日(土)佐伯一麦(野間賞作家)「小説を書き続けるために」
3月21日(土)有栖川有栖(本格ミステリ大賞作家)司会・三沢陽一
「小説を書く、ミステリを書く」
※午後4時半より(11月は午後2時より。1・2・3月は午後4時より)。
※高校生以下無料。学生1000円、一般2000円。
※場所は仙台文学館(8月は仙台市市民活動サポートセンター、11月は宮城学院女子大学)