文芸ラジオイベント(9月30日)に向けて その1

 諸君、私はラジオが好きだ。諸君、私はラジオが好きだ。諸君、私はラジオが大好きだ。朝のラジオが好きだ。昼のラジオが好きだ。夜のラジオが好きだ。ロックで、ポップスで、お笑いで、トークで、情報番組で。この地上で放送されているラジオ番組はだいたい好きだ。この四月から伊集院光が始めた朝の番組を、全く活性化していない脳みそで聞くのが好きだ。授業のない曜日にたまむすびを、研究室でコーヒーを飲みながら聞いているのが好きだ。原稿を書きながら深夜番組を聞いたり、道を歩きながら録音したラジオ番組を聞いたりするのが好きだ。もちろん文芸ラジオが一番好きだ。

 文芸ラジオというタイトルをつけたように、雑多な情報がページをめくるたびに目に飛び込んでくるようにしたいという意識はある。それでも手掛けている人間がいる以上はある程度の偏りは仕方ないとは思っている。フラットでありながら尖がっていることはできないのだろうか。難しい。ハード。これは日常的に行っている会議では発言しないが、背景に押しやっている悩みの一つではある。情報が飛び込んでくることと、そこから読み進めていくだけの内容があることを同時に行っていくことは難しい。自分が雑誌を買う際には、たった一つの評論や論文が入っているだけで、たった一つの短編小説があるだけで満足できてしまう。やはり難しい。

 夏季休暇は原稿書きを主に行い、あとは仕事と積読の処理に明け暮れている。そして沙村広明の『波よ聞いてくれ』をようやく手に取った。Kindleだから物理的に手に取ったのではなくダウンロードして読んだというのが正解ではある。何でもいいのだが読むのに1年間かかったのだ。そしていつものことであるが、もっと早く読んでいればと後悔するのである。作品はラジオを主題にした物語だが、もはやカレー屋の話のほうが多い。いや、カレー屋というより主人公の姐ちゃんの話というべきか。キャラクターで物語を作り、引っ張っていくということを、テンポよくやっている。この会話だけで生み出すテンポの良さは見事すぎて感嘆しかない。そしてテンポの良さで見えにくくなりがちではあるが、話がどれだけ脱線しようとも主人公のキャラクターがぶれることはない。

 この主人公のように噛まないで喋るということは、かなり難しいのだが、それでも日ごろは教壇に立って話をする立場なので比較的訓練はされているかもしれない。と思ったあなた残念でーしーた。夏季休暇明けの教員は引きこもりからの脱却中で、それほどスムーズには話はできない。9月30日(金)に東京の信濃町にある芸術学舎にて開催される文芸ラジオ2号発売記念イベントで、ぜひその雄姿を見ていただきたい。入場無料である。そして中身の話までいかなかったので、続きは後日更新する予定である。