池上冬樹の50冊(解説を担当した文庫本から)

 5月25日、東北芸術工科大学でオープンキャンパスが開催された。
 文芸学科の会場では、各教員の「教員の本棚」が設けられたが(「オープンキャンパスと忘れがたき本たち」参照)、そのほかに各教員が選んだ「お薦め50冊」の棚も作られた。「教員の本棚」は品切れ・絶版本でもOKだったが、こちらは新刊本が条件だった。
 何を選ぼうか迷ったけれど、読んでほしい文庫本がたくさんあるので、宣伝をかねて、自分が解説を担当した文庫本を50冊選んでみた。会場の都合で、ほかの先生方の本と紛れてしまったので、ここで僕がリストアップした50冊をあげてみることにする。

■池上冬樹の50冊(解説を担当した文庫から50冊)

▼文学賞およびミステリ・ベストテン第1位に輝いた名作(15冊)
・阿部和重『シンセミア』(講談社文庫)※伊藤整文学賞&毎日出版文化賞
・荻原浩『オロロ畑でつかまえて』(集英社文庫)※小説すばる新人賞
・恩田陸『夜のピクニック』(新潮文庫)※本屋大賞
・小池真理子『欲望』(新潮文庫)※島清恋愛文学賞
・佐藤賢一『王妃の離婚』(集英社文庫)※直木賞
・中島京子『かたづの!』(集英社文庫)※柴田錬三郎賞ほか2賞
・宮部みゆき『理由』(新潮文庫)※直木賞
・横山秀夫『第三の時効』(集英社文庫)※「この警察小説がすごい」オールタイム1位
・連城三紀彦『隠れ菊』(集英社文庫)※柴田錬三郎賞
・渡辺優『ラメルノエリキサ』(集英社文庫)※小説すばる新人賞
・ベン・H・ウィンタース『地上最後の刑事』(ハヤカワ文庫)
 ※アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀ペイパーバック賞
・ボストン・テラン『神は銃弾』(文春文庫)※「このミステリーがすごい」第1位
・ジョン・ハート『ラスト・チャイルド』(ハヤカワ文庫)
 ※アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長篇賞&英国推理作家協会賞最優秀賞スリラー賞
・トム・フランクリン『ねじれた文字、ねじれた路』(ハヤカワ文庫)
   ※英国推理作家協会賞ゴールド・ダガー賞&LAタイムズ文学賞
・ローリー・リン・ドラモンド『あなたに不利な証拠として』(ハヤカワ文庫)
  ※「このミステリーがすごい」&「週刊文春ミステリーベスト10」第1位

▼現代の古典および古典的名作(8冊)
・福永武彦『幼年 その他』(講談社文芸文庫)
・開高健『青い月曜日』(集英社文庫)
・『冒険の森へ・傑作小説大全 第3巻/背徳の仔ら』(集英社)
 ※大藪春彦『野獣死すべし(付・復讐篇)』黒岩重吾『裸の背徳者』所収
・ウイリアム・アイリッシュ『幻の女』(ハヤカワ文庫)
・グレアム・グリーン『ヒューマン・ファクター』(ハヤカワ文庫)
・トレヴェニアン『シブミ』(ハヤカワ文庫)
・ジョン・ル・カレ『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』(ハヤカワ文庫)
・スティーグ・ラーセン『ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士』(ハヤカワ文庫)

▼ベテラン作家の傑作(10冊)
・伊集院静『新装版 三年坂』(講談社文庫)
・北方謙三『抱影』(講談社文庫)
・川上弘美『夜の公園』(中公文庫)
・高樹のぶ子『マルセル』(文春文庫)
・辻原登『寂しい丘で狩りをする』(講談社文庫)
・宮本輝『草原の椅子』(新潮文庫)
・森村誠一『地果て海尽きるまで』(ハルキ文庫)
・リー・チャイルド『アウトロー』(講談社文庫)
・ピエール・ルメートル『傷だらけのカミーユ』(文春文庫)
・デニス・ルヘイン『過ぎ去りし世界』(ハヤカワ文庫)

▼人気作家の出世作(8冊)
・有川浩『植物図鑑』(幻冬舎文庫)
・伊坂幸太郎『ラッシュライフ』(新潮文庫)
・石田衣良『池袋ウエストゲートパーク』(文春文庫)
・熊谷達也『山背郷』(集英社文庫)
・高見広春『バトル・ロワイアル』(幻冬舍文庫)
・法月綸太郎『新装版 頼子のために』(講談社文庫)
・宮部みゆき『本所深川ふしぎ草紙』(新潮文庫)
・ユッシ・エーズラ・オールスン『特捜部Q 檻の中の女』(ハヤカワ文庫)

▼隠れた名作(9冊)
・井上荒野『ママがやった』(文春文庫)
・大沢在昌『ライアー』(新潮文庫)
・奥田英朗『沈黙の町で』(朝日文庫)
・北方謙三『擬態』(文春文庫)
・片岡義男『花模様が怖い 謎と銃弾の短篇』(池上冬樹編、ハヤカワ文庫)
・佐々木譲『夜にその名を呼べば』(ハヤカワ文庫)
・佐藤正午『身の上話』(光文社文庫)
・瀬尾まいこ『優しい音楽』(双葉文庫)
・葉室麟『千鳥舞う』(徳間文庫)
                                       
 以上の本の一冊一冊に思い入れがあり、詳しく紹介したい気持ちが強いので、いずれ紹介できればと思う。数えてみると、文庫解説は400冊を超えるので、50冊は8分の1にすぎない。品切れ・絶版になってしまったものにも歴史的な名作がたくさんあるし、いまや新古書店やアマゾンでも簡単に入手できる時代に入ったので、そちらもとりあげていきたいと思っている。お楽しみに。