奈良にいってきた

 16日、奈良にいってきました。高取城の取材です。
 高取城は日本三大山城のひとつに数えられています。ということで、要するに、ちょっとした山登りをしてきました。車では途中までしかいけません。本丸は山の頂上付近にありますが、峠沿いに櫓や門が配置され、全体の縄張はかなり広くなっています。山道を歩いていると、ハイキングを楽しむ大勢の方とすれ違いました。みなさん、シニア層です。お元気ですね。私は途中で息が上がり、日頃の運動不足を悔やんだ次第であります。

 で、高取城のある高取町は明日香村の隣に位置します。
 ついでに、ということで、キトラ古墳と高松塚古墳を見てきました。キトラ古墳周辺は現在、公園化の最中でした。
 写真は高松塚古墳のてっぺんあたりです。

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 ところで、この取材、東京からの日帰りなのですね。
 始発ででかけて終電近くで戻ってきました。
 ハードですが、まあ、私どもの移動なんてこんなものです。

「骨の音が空に響くまで」

 教員にとって春休みというのはインプット期間である。家で寝転がって、延々と読書をしていたところで誰にも怒られないのである。怒ってよいのは編集さんだけである。すみません(複数の編集に向かっての謝罪)。今年はHunter×Hunterの連載も再開するというし、私も仕事をしよう。さておき、読む本も複数の種類があって、自分の中では以下のものが有機的に結合している。

1:研究書or論文 その1歴史学

2:研究書or論文 その2コンテンツ関係

3:上記にかかわる小説・漫画

4:単に自分の趣味

 有機的に結合というのは全部重なり合っているものから、全く重なっていないものまでいろいろあるということである。鉄な人がフィールドワークと史料調査を目的としながらも、ナントカ鉄道に乗車してキャッキャしているのとだいたい同じと思っていただきたい。鉄成分が少ないので詳細はよくわからないので違ったら申し訳ない。そして、ここに最近、5番目の分類が加わったのである。

5:授業で使う本

 教えるという行為はそのまま教わっているのと同じなのです、みたいなことが、まことしやかに語られるのを何度も目にしてきたが、自分が教員になってみるとまさしくその通りである。学生時代には塾講師をし、前に勤めていた大学では別の大学で非常勤講師をする機会があり、そして現在、東北芸術工科大学で教えていると森羅万象すべてが自分の視野を広げることにつながっていると感じる。ちなみに神羅万象チョコのウエハースはそれほどお気に入りの味ではないので、買うときに躊躇してしまう。それでも買ってしまう自分にはあきれるしかないし、それでよくわからないジジイのカードが出ると自己嫌悪がなぜか発生する。でも、それはそれで楽しい。

神羅万象チョコ 超完璧大全

 春休み中は授業で何を使おうかと頭の片隅で少し思いながら、ぼんやりと読み進めるのである。今現在読んでいるのは相沢沙呼『マツリカ・マジョルカ』である。ドMな方にはおすすめ。そして太ももとローファー。その前に読んでいたのは畑野智美『運転、見合わせ中』。何せ私は舞台となった沿線に住んでいるのである。まだ3月は半分残っているので、いろいろな作品に出会えるのを楽しみにしている。今日の東京の気温は20度をこえて暖かい。積ん読を崩すのだ。

マツリカ・マジョルカ<「マツリカ」シリーズ> (角川文庫)

運転、見合わせ中

BGM:Spitz「ハイファイ・ローファイ」

色色衣

物語・ストーリーを考えたい高校生、集まれ!春休みストーリー創作講座

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東北芸術工科大学の文芸学科では、3月26日(土)に高校生を対象にしたストーリー講座を開催します。

詳細は以下のとおりです。

【春休みストーリー創作講座】

開催日時 2016年3月26日(土)10:00~16:00
参加費  無料(特別ランチ付き)
応募条件 本や漫画を読むのが好き、自分で書いたり、物語を空想することが好きな高校生
会場 東北芸術工科大学 図書館(〒990-9530 山形県山形市上桜田3-4-5)
持ち物 筆記用具、メモをとるノート

スケジュール

9:45  集合、受付
10:00  開会、オリエンテーション
10:30 『長編ドラマをつくる(ワーク)』
…長編ドラマの基本的なパターンについてご説明した後、パターンに添ってアイデアを出し合いながらドラマを完成させていきます。先生と大学生スタッフが丁寧にサポートします。

11:50 午前の部 終了、昼食 …昼食は特別ランチをプレゼント。
13:00 『ショートストーリーをつくる(講義)』
…2つの「異質なことば」を組み合わせてショートストーリーに発展させていきます。まずは先生がレクチャーを行います。

14:00 『ショートストーリー(ワーク)』
…レクチャーに沿って、午前中のワークショップと同様にアイデアを出し合いながら、ショートストーリーを完成させます。
16:00 閉会

創作講座の概要と目標

長編はパターンを覚えて、そこにさまざまな自分の経験を盛り込んでいけば、ある程度まとまったものができますが、短編(ショートストーリー)の場合、「作品」としての自立性が高いため、より論理性と構築力、発想力が求められます(長編のワークを午前中に行うのはそのためです)。

「長編ドラマをつくる」では『ストーリーの文法』を、『ショートストーリーをつくる』では「アイデアの発想の仕方、論理的な展開の仕方」を身に付けていきます。

仙台駅、山形駅から無料バスを運行!

仙台駅と山形駅から会場までの無料バスを運行します。仙台便は事前予約が必要です。講座と併せて予約してください。なお、乗車場所は右図を参照してください。

●行き
・山形駅→本学 8:55→9:10 | 9:35-9:50
・仙台駅→本学 8:30→9:40

●帰り
・本学→山形駅 16:15→16:30
・本学→仙台駅 16:15→17:25

お申込み・お問い合せ

【 氏名/学校名/学年/電話番号/メールアドレス 】を明記して、メール・申込みフォーム・電話のいずれかの方法でお申し込みください。

・メールでのお申し込み先
東北芸術工科大学 春休みストーリー創作講座担当
nyushi@aga.tuad.ac.jp

▼申込みフォーム:https://emob.jp/m/fi.php?d=1&i=6772&a=tuad

大学の紹介ページはコチラ です。
http://www.tuad.ac.jp/2016/03/56222/

お仕事のご紹介

昨年夏ごろからずっと携わっていた本についてご紹介します。

 

【東工大サイエンステクノの理系脳を育てる工作教室』

 

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がっつり文系の私がなぜかこのような本を編集してしまいました。

これは東京工業大学の学生サークル「サイエンステクノ」が、小学生向けに教えている工作をまとめた本です。

100人以上もいるサイエンステクノさんは、年に70回くらい工作教室を行っているそうです。

この本はもともと、サイエンステクノの学生の親御さんが編集者で、その方が企画し、主婦の友社が発行したというものです。私の会社であるCRAZYが編集制作を担当しました。

写真で工作の手順を解説しているのですが、なんせ撮影が大変。

工作とはいえほとんどが動くものなので、細部のバランスなどもきちんとしないと、思い通りに動いてくれません。

さらに、動くモノの撮影というのも非常に苦戦しました。

動きを写真で表現するのは難しいのです。

 

当初から、子どもに親しみやすい本にしよう、というコンセプトだったので、表紙にも登場している「サイテくん」や「コウサクくん」「リカちゃん」というオリジナルキャラクターのイラストをつくり、ワイワイと楽しく工作ができるような誌面づくりを目指しました。

子ども向けの本のデザインには、いくつかセオリーがあります。

・おしゃれなデザインよりもごちゃごちゃガチャガチャした表紙デザイン

・角をとがらせず丸みを帯びた誌面デザイン

・多くの色を使う

編集的にも、キャラクターをつくる以外にも、ルビを入れる、文字を大きくする、写真をはっきりさせる、想定読者と同世代の子どもを出すなど、子ども向けならではの工夫があります。

読者層によってさまざまに考え尽くしてつくること。

これが編集の基本です。

そんなことを再考させてくれたお仕事でした。

 

 

「私、輝きたいんです!」

 今現在、スマホを修理に出している。音声部分が不調なので近所のドコモショップに持っていき修理へと旅立ってもらった。その間、スマホなしでも仕方ないか、ぐらいの気分でいたら、代替機を貸してくれるという。当たり前である。確かにその間のソシャゲをどうするのだ。誰がスクストをやるというのだ。隊長がいないと大変だろう。あの世界も。しかし、借りた機種は普段使っているのとは違う会社のものであり、そのため使い方を色々といじりながら覚えている。何を言いたいのかというと撮ったはずの写真が保存されていない。具体的には一枚だけ撮れており、あとは破損していた。どうやら、私の機種だと撮影したあとは放置しても自動保存されているのが、これは違うようである。

 よく「大学教員は長期休暇のとき暇そうでいいですね」と言われる。あとは「長い休暇の時間は何をしているのですか」とも聞かれる。それほど暇ではない。大学教員は、授業期間は先生という顔をしているが、休暇中はそれぞれ作家や評論家、編集者、そして研究者として活動しているのである。したがって忙しい。もちろん、一切活動せずに休暇中は冬眠中の熊のようにしているだけのこともできる。そうなると大学教員という肩書きを外すと単なる人なのである。そんな状況になったら「俺を生ゴミに出してくれ!」(斉藤和義「男よ それが正常だ!」)という気分になるに違いない。

FIRE DOG

 そこで先日、学会発表をしたので休み中も研究者として仕事してますよ。という意味を込めて、写真を撮ったらゴミデータが保存されていたのである。学習院大学東洋文化研究所内の研究プロジェクト「日本・中国・韓国における歴史認識形成に及ぼすコンテンツの比較研究」によるシンポジウム「東アジアにおけるコンテンツとイメージ」にて「歴史コンテンツにみるイメージの歴史的展開」というタイトルで話をしてきた。いつもながら自分の話は研究者であることとオタクであることが重層化しているので、歴史学としてのコンテクストとオタク文化のコンテクストが混在してしまっている。そのため主眼としているテーマ性がかすんでしまい、わかりにくい内容になっている。学習院に来られるようなお年を召された方に通じたのであろうか。

 お岩さんや岩見重太郎、猿飛佐助、艦隊これくしょん、BRAVE10などを取り上げていったが、自分としては『花咲くいろは』について言及できたので非常に満足である。艦これは大和と陸奥についての話だったので、金剛を旗艦とする我が艦隊にとっては然したる問題ではない。というテンションを押し出していくから、わかりにくいのだ。ちなみに『花咲くいろは HOME SWEET HOME』は素晴らしい。脚本が素晴らしい。2015年度の授業でも取り上げたことを付記しておく。

劇場版 花咲くいろは HOME SWEET HOME (Blu-ray Disc初回生産限定特別版)

 

BGM:nano.RIPE「影踏み」

劇場版『花咲くいろは HOME SWEET HOME』主題歌::影踏み(初回限定盤)(DVD付)

高校生の皆さんへのメッセージ

いま我々が直面している現実は、 まだ誰も経験したことがない未曾有のもの。だから僕は、真っ白な原稿用紙に作品を書いていくように、何もないところから言語の力でクリエイトしていける学生を育てていきたいのです。もちろん文芸学科でもいわゆる文学部と同じように文学や思想について学んでいます。でも大きく違うのは、その目的。ここにいる学生たちは自分の書く作品をより良くしようと、「表現するための言語」を教えてくれる過去の文学と向き合い、文章力を鍛え、体の中にナラト ロジー(物語論)を埋め込んで卒業していくのです。作家になるのは至難の業だし、 言語というのは自分の人生を対象化することで出てくるものなので、時間だってかかります。でも書き続けていれば絶対どこかでデビューできると僕は信じています。

「大学案内パンフレット」より

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「僕のアーバンブルーズへの貢献」

 これでいったい何回目のブログ開設であろうか。アメリカではブログなるものが流行っているぞと日本にいる私の耳に届いたとき、世はテキストサイト全盛期であった。少なくとも私の視界範囲内では全盛であったのである。げらげら笑いながら面白い文章を読み、様々なサイトを巡り、時には当時はまだ少ないネット小説を読んだりもしていた。これがあるのにブログとか! weblogの略でブログとか! みたいなテンションだったのが、数か月後にはブログを開設し、自分でカスタマイズをしながら、よくわからんことを書き連ねていたことを覚えている。少し経つとアメーバーブックスの人からメールをもらい、面白いこと書いているからアメーバブログに全テキストを移行させて、そのまま出版しちゃいなよ!と「YOUしちゃいなよ!」みたいなノリの勧誘が来たりしたが、学生だった自分は面倒だったので返事もせずに放置していたことを思い出す。のちにそのアメーバーブックスの編集長が東北芸術工科大学芸術学部文芸学科の学科長になり、私の上司になるとは全く考えていなかった。考えようがないではないか。

 学生時代に書いていたブログはサービス自体がなくなり、ウェブ上からは完全に消え去っている。自分自身でバックアップもとっていないので見ることはできないし、何を書いていたのかも覚えていない。そのあとも、いくつかのブログを作り書き連ねてきたが、だいたい途中で終わっている。いまだに続いているのはtwitterぐらいである。あれはいい。短い。それに比較してブログを更新するために、広大な、それはそれは広大な、twitterに比べると幅広い記入部分を見るとげんなりする。ここに文字を埋めることを拒否したくなっているので、仕方なく、論文執筆で慣れているwordを立ち上げてしまったぐらいである(なのでこれはwordで書いている)。

 したがって学科のブログであろうとも続かないかもしれない。特に忙しくなったら、三行で更新しそうである。今北産業である。写真と一行のコメントがつくだけになったら、何か忙しいのだな、と推察してほしい。できればそっと微笑むぐらいはしてほしい。Twitterとかで余計なことはつぶやかないように。

 学科のブログなので中身のない話だけしておしまいだとつまらないので(そしてどこからか怒られそうなので)、私が担当している授業の話をしよう。2015年度ではいくつかの授業を担当したが、通称「選」と呼ばれている授業を受け持っている。前期の火曜日の昼ぐらいにやっているので、東京で用事があると前日まで都内におり、夜に山形に到着するというスケジュールとなり少し疲れた顔をしている時間帯である。その「選」は教員が選んだ短編を学生とともに読み、要約し、内容把握していくという一年生向けの基礎的なものになる。教員が選んだ作品を読むから「選」と呼ばれている。この授業を担当するにあたって私が決めた個人的なルールがあって、

1:毎年、違う小説を取り上げること。
2:エンターテイメントであること。
3:様々なジャンルを取り上げつつも、授業内に流れがあること。

というものがある。少し後悔をしている。なぜこのようなことを決めてしまったのかと。最初は毎年違う作品だけではなく作家自体も変えようかと思っていたが、これは却下した。却下してよかった。ほっとしている。このルールを却下したおかげでこのままいくと3年連続で北村薫氏を取り上げることになり、ファンとしては喜ばしい限りである。3つ目に挙げた「流れ」というのは結局のところ独りよがりではあるのだが、何となくのジャンル分けというやつである。例えば2015年度の初回から第4回目までは以下のものを取り上げた。

東川篤哉「ゆるキャラはなぜ殺される」(『宝石ザミステリー 冬』2014)

宝石 ザ ミステリー2014冬

北村薫「砂糖合戦」(『空飛ぶ馬』創元推理文庫、1994)

空飛ぶ馬 (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書)

似鳥鶏「今日から彼氏」(『まもなく電車が出現します』創元推理文庫、2011)

まもなく電車が出現します (創元推理文庫)

坂口安吾「ああ無情」(『明治開化 安吾捕物帖』角川文庫、2008)

明治開化  安吾捕物帖 (角川文庫)

 ミステリィである。そして私の好きな「日常の謎」と「ライトミステリィ」を意識してみたわけだ。授業内では数十分でわかるミステリィの歴史みたいな話もしたが、同時に似鳥鶏作品の表紙で描かれている眼鏡っ子は柳瀬さんでよいのか問題にも言及した。できれば眼鏡はかけていただきたい、柳瀬さん。もちろん真面目な話もしていて、「砂糖合戦」がただ会話をしているだけなのに、なぜこれほどまでに面白いのかも喋った。これは面白くもないことを脈絡もなく喋っているだけの短編を読まされ、書いた学生に対して制作意図を聞くと「日常系です」と答えられて閉口することへの対策である。そして4回目は少し毛色を変えて、翻案とは何かということを考えるために坂口安吾を取り上げた。もちろん、この翻案作品といえば「UN-GO」である。授業内でも流したが時間がなくて続きは自分で見て、となってしまったのは残念。疲れたので今回はここまで。

UN-GO 第1巻 初回限定生産版Blu-ray

BGM:小沢健二「ある光」

ある光

編集とは何か

はじめまして、野上勇人です。

私は2015年度から文芸学科に参画し、主に編集系の授業を担当しています。

長い間、編集者として仕事をしてきましたが、作家や漫画家に比べて、編集者とは何をする人なのか、一般に見えにくい存在です。かくいう私も大学3年生まで、その存在すら知りませんでした。

そんな未確認生物「編集者」ですが、世の中に出ている本は、実は編集者が企画して、それを作家や漫画家に書いてもらっているものが多いのです。

「山川さん、こんなテーマで小説を書きませんか?」

「川西さん、こんな取材をしてそれを小説にしませんか?」

「石川さん、こんな内容で評論を書けませんかね?」

「池田さん、こんな本の書評を書いていただけませんか?」

「玉井さん、幼なじみに萌えたことってあります?」

というように、書き手(=専門家)に書いてほしいことを提案するのは、編集者の重要な仕事です。

そのあたりの仕事は、ともすると「かっこいい」のかもしれません。

しかし編集者の仕事はそこで終わりません。

原稿を書いてもらったら、それをチェックして、整理して、デザイナーに渡して、校正紙ができてきたら書き手に渡して、自分もチェックして、修正を入れて、またデザイナーに渡して、データを修正してもらったら印刷会社に渡して、また校正紙ができてきて、また書き手に渡して、自分もチェックして、修正を入れて……。

そうした細かいやりとりもすべて行います。

書き手、写真家、イラストレーター、漫画家、デザイナー、DTP制作会社、印刷会社などなど、多くの人の中心にいて、それぞれをつなぐ役目をするのが編集者です。本ができたらプロモーションもします。新刊リリースも制作します。

かっこいいだけではなく、泥臭い仕事でもあるのです。

そんな役割を果たす編集者がいないと、本は世の中に出て行きません。

私はそんな仕事が好きでずっとやってきました。

本当に大変な仕事ですが、そのぶん、本ができて世の中に出たときの感慨はひとしおです。

書き手の皆さんにとって出版とは、もしかすると「裸になる」とか「世の中に晒される」という感覚なのかもしれませんが、編集者にとっては「さあ皆さん、この本を読んでみてよ!」というように、我が子を晴れ舞台に送り出すような感覚です。その感覚には魔力があり、とり憑かれるとやめられなくなります。私も20年近く編集者をしてきましたが、いまだにその魔力にとり憑かれたままです。

そういう感覚をぜひとも若い人たちに教えたい。

文芸学科の授業には、そんな気持ちで取り組んでいます。

 

はじめまして

 はじめまして。文芸学科の教員の川西です。
 大学では、創作をメインに教えています。

 創作を教えることなどできるのだろうか? と思われるかもしれません。できるかできないか、やってみないとわかりません。というわけで、文芸学科の創設から五年、やってきたのですが、そのつたない経験からすると、技法を教えることはできます。
 語弊があるかもしれませんが、技術は機械的に繰り返していれば、やがては身につきます。すぐに、というわけにはいきません。なんにせよ、技術を習得するには地道な粘り強い努力が必要です。

 技術を習得する過程でセンスも身につけられるはずです。技術を使うにはセンスが必要なのですね。必要は発明の母、というわけで、求められる感性は技術を習得する過程で磨かれていきます。センスが伴わないと、技術が使える、とは言えないのです。

 さて、では、創作への情熱とかテーマ性とかはどうなるのか、と言いますと、技術が身につけば、書きたいものも見えてくる、と私は思っています。正確に言うと、自分が今持つ技術で書けるものが見えてくる、となるでしょうか。書きたいけれど、今の技術では書けないもの、は、はっきりと全貌をつかむことができません(当たり前ですが)。高いレベルを目指しつつ、今、書けるものを書いていれば、やがて、書けなかったものが書けるようになるはずです。

 私自身、修行の過程にあります。書きたいけれど書けないものがあって、それが書けるように(怠けながらも)書き続けています。

 文芸学科の4年間でどれくらいのレベルまで達するのか、それは人によって異なります。早く書けるようになれば良い、と言うものでもないと私は思います。それぞれの人に適したスピードはあるのではないでしょうか? 怠けずに(私は反面教師です)、こつこつと書いていれば、しかるべき時にレベルに達するはずです。

 不放逸にて精進せよ。

 お釈迦さんの遺言です。言い遅れましたが、私は僧侶でもありますので、この遺言を自分への戒めと励みにしています。ま、実態は、放逸にて不精進だったりするのですが……。怠らず、精進を続けられるようになりたいものですね。

 というわけで、初回から思いがけず長文になってしまいました。
 次は短文にしたいと思います。
 それでは、また。

文芸ラジオのラジオ 第6回

2016/01/26 に公開 東北芸術工科大学芸術学部文芸学科が発行する文芸誌『文芸ラジオ』の編集部がお送りす­るラジオです。編集部の教員(池田雄一、玉井建也、野上勇人)が喋っています。今回の­内容は1:文芸ラジオの編集の様子、2:東北芸術工科大学卒業制作展の話、3:PHO­TO FESTAについて、4:第154回芥川賞直木賞の雑感、です。

 

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