2015年12月18日、仙台市にある「FabLab SENDAI - FLAT」で『仙台クリエイティブ・カフェ vol.01』が行われました。主催したのは、人や物作りが好きな人たちの出会いを通じてイノベーションが起こることを期待し、ゲストを招いてフリートークや勉強会などを開催している「仙台クリエイティブ・クラスター・コンソーシアム」。第1回のゲスト講師には、本学彫刻コース卒業生でデザイナー、アートディレクターとして第一線で活躍中の髙谷廉氏、プロダクトデザイン学科学生の田中敦さんが対談者として登壇しました。
第1部では髙谷氏がアートディレクターを務めた仙台市のジェラートショップ「GELATO BRIO(*1)」のジェラートが振る舞われ、和やかな雰囲気の中イベントがスタート。髙谷氏が手がけた数々の事例を挙げ、飲食店のブランディング手法のほか、ファッションキャンペーン『FLOWER LUSH IN ROPPONGI HILLS(*2)』での訴求力あるアイデアの具現、『TAMEALS YOKOHAMA』のプロモーションで行った、SNSユーザーの拡散を狙った期待感を刺激する宣伝方法など、綿密なヒアリングと調査、彫刻コースで学んだ空間と質感を駆使した創造性でクライアントの希望を叶えるデザインについて語りました。
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第2部では本学プロダクトデザイン学科の田中敦さんが登壇。天童木工や秋田木工、岡村製作所との産学連携で取り組んだ、曲げ木を使った椅子のデザイン、設計、製作についての説明と、不要物として売られた品物が多く眠るリサイクルショップの倉庫から商品を買い取り、デザインに適正な価格を付け販売する活動などを紹介しました。「新しいものを創り出す立場にある自分たちには責任があります。デザインとはどういうものかを考えるきっかけを作り、長く使えるものを選ぶことで暮らしが豊かになることを伝えたいと思っています」と、ロングライフデザインに対する考え方を提示し参加者の関心を集めました。
芸工大卒業生である髙谷氏と現役学生である田中さんの対談が実現した第3部で、田中さんは髙谷さんが在籍していたgood design company について質問。髙谷氏は当時を振り返り、独学で学んだグラフィックデザインでは仕事のスピードについていけなかったこと、代表の水野学氏にそれを看破され3ヶ月で基礎を叩き込んだことを語りました。モデレーターの庄司みゆき氏が、第2部での田中さんのプレゼン能力の高さを讃えると、髙谷氏も同調し「優秀すぎてびっくり。僕が21歳の時はこんなにしっかりしていなかった」と会場の笑いを誘う場面も。また髙谷氏は、「ロングライフデザインやプロダクトには、多角的に検証し様々な人の意見や見方が必要。例えば今田中さんが興味ないことも遠ざけず見ていれば、自分のプロジェクトを見つめ返した時に違った見え方がすると思います。是非、たくさん遊んで学生のうちにしかできないことを経験して欲しいですね。自分の人生の大きな支えになるのではないかと思いますよ」と、後輩へエールを送りました。将来のビジョンを聞かれ「インターンシップで入っているオフィス家具メーカーでデザイナーとして働き、家具がどういう工程でできるのかを身に付け、自身のデザインスキルを高めた後に地元仙台で、家具、インテリア関連の仕事で独立をしたいです。自分の力を仙台に還元できるようなデザイナーになりたいと思います」と答えた田中さん。東京を拠点に活動している髙谷氏も「機能とビジュアルを兼ね備えたデザイン力を高めて仙台市の文化レベルを底上げしていきたい」と語り、共にデザインを通じて地域に貢献する意欲を示しました。
参加者からの質問コーナーでアートとデザインの違いを尋ねられた髙谷氏は、「どちらもオーダーがないと成立しないものなので、僕は区別していません。仙台七夕の飾りを手がけた際、伝統的な形を踏襲しつつ解体して再構築する創造性が評価されて、大手デベロッパーに彫刻のデザインを依頼されたんです。デザイナーとして、また彫刻をやってきた者として認めてくれたんだと思うとすごく嬉しかったですね。そんな経験もあり、近年は特にアートとデザインの境目はあまりないなと感じています」と返答。また、クリエイティブに関わる参加者に対して「なぜクリエイティブが必要か? 今日より明日を良くするためです。自分の明日、子どもの明日、今日より美しいもの見たいじゃないですか。どんな小さなことでも考えることを止めなければイノベーションを生むきっかけになると思うので、考えることを止めず、アートディレクターになったことで何ができるかをイメージし頑張ってほしいと思います」と声をかけ、参加者に刺激を与えました。対談終了後は熱気に満ちた雰囲気のまま交流会へ。一流のクリエイターと未来のデザイナーを囲み、活気に溢れたひとときとなりました。