横山さん自らも楽しまれるという茶道の
道具3点を評価していただきました。
今回、出品された横山さんは、こよなく漆芸を愛する、ごく普通の、でもとてもパワフルな奥さま。昨年、芸工大の公開講座に仙台から通われたという行動派。とても明るい性格が幸いし、講座のお仲間ともすぐに打ち解けて、山形駅までの帰り道を送ってもらったりと、県境を越えての通学も苦にならないほど、とにかく楽しい漆芸の日々を過ごされたようです。
趣味で工芸を始めるというと、陶芸などがポピュラーですが、横山さんはどうしても漆塗りに挑戦したかったのだとか。家で長い間眠っていた漆のタンスや器たちが、使う人の思いに応えるように見事に再生したことに感動し、それ以来ずっと漆工芸品に魅了されているのだそうです。漆というと、どうしても「かぶれ」の印象が強く敬遠されがちなのですが・・。実際、横山さんも漆塗りを始めたばかりの頃は、少なからずかぶれに悩まされたといいます。それでも決して漆芸を止めたいとは思わなかったのは、知れば知るほど漆の魅力は奥が深かったから。
そんな横山さんは公開講座修了後も当然、漆芸を続けたいと思っていました。ラッキーなことに、講座で講師を務めていた中村彩子先生は仙台で「漆studio S」を主宰しており、横山さんは地元でより気軽に漆芸を習い続けることができるようになったのです。現在は、週2回のペースで教室に通い、今回出品された茶道具のほか、漆と蒔絵、漆と螺鈿(らでん)を組み合わせたブローチづくりなどにも果敢に挑戦しています。「漆studio S」に横山さんを訪ねたのは、日曜日の午後。彩子先生と楽しそうに語らいながら螺鈿のブローチ作りに励んでいました。「続きは、この次ね」と先生が終わりを告げると、横山さんはもう次の時間が待ち遠しいとカレンダーを見てさっそく予約を入れていました。
横山さんがこんなに楽しそうに漆塗りに打ち込んでいるのは、彩子先生の人柄によるところも大きいのかもしれません。とにかく気さくで一生懸命、アトリエの雰囲気や展示されている作品にもセンスの良さが現れていました。「漆というと赤と黒のイメージが強いと思うんですが、実は、本当にさまざまな色や表情が出せるんです。その良さを若い人にもわかってほしいですね」と力説。彩子先生自身まだ若いのですが、芸工大の工芸コースで漆芸に出会い、大学院に進んでさらに学びを深めたいと大学院でも漆芸を専攻するほど、その魅力に目覚めてしまったのだそうです。
一般の人にとっては、敷居が高くて馴染みにくい漆芸も、彩子先生を介すととても身近で親しみやすい存在になるような、そんなオーラを放っていました。