左上/改装前の「上の湯」、左下/改装中で緑のシートに覆われた「上の湯」と、その界隈の旅館の軒先に飾られた絵灯籠。右/肘折温泉の代表者も交えて、竹内ゼミ内での打ち合わせ風景。

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広報誌g*g第2号の表紙は、
新しいノスタルジーが薫る肘折温泉の夕暮れ。

開湯1200年の温泉街にアートが灯り、
集いの湯が瑞々しい感性で生まれ変わる。

竹内昌義准教

今回の肘折プロジェクトには、建築・環境デザイン学科の先生や学生たちも深く関わっています。「ひじおりの灯」の八角形灯籠のデザインや建ち並ぶ23軒の旅館に灯籠を取り付ける金具の意匠を担当し、そして、肘折温泉でもっとも親しまれている共同浴場「上の湯」のリノベーションを手掛けているのも建築家の竹内昌義准教授とそのゼミの学生たちなのです。そこで、広報誌<g*g>ではお伝えすることのできなかった「上の湯」リノベーション計画についてご紹介していきましょう。

「職人さんの話が聞けてよかった」と古川さん

竹内ゼミの人々が肘折温泉を訪れたのは5月の連休明けの頃。東北ルネサンス・プロジェクトの一環として動き出した「プロジェクトin肘折/肘折温泉街まるごと美術館」の中で、建築・環境デザイン学科として何ができるか、そんな調査を兼ねての訪問でした。そこで、竹内ゼミの人々の心に留まったのが「上の湯」リノベーション計画。温泉街の中心にあって多くの人々が入浴に訪れる「上の湯」は、その長い歴史の中でさすがに老朽化が進み、改築は避けられない状態となっていました。古いけれども、その古さにこそ味があって、温泉情緒を醸し出していた「上の湯」。その情緒を損なうことなく、利用する人の快適性や待つ間の楽しさを演出したいと、学生たちが率先してリノベーション計画への協力を買って出たのです。

「明るく心地よい空間にしたかった」と石山さん

このリノベーション計画に実質的に参加したのは、竹内先生とこの6名の学生たち。なかでも、畠山さんと古川さんが中心となって学生主体の活動が行われています。

「上の湯」に出向いて現状を調査し、学生たちが共通して感じたことは、建物の中に光が十分入らないということでした。そこで、リノベーション計画の最大の課題となったのが、光を如何に屋内に招き入れるかということ。さまざまなアイデアを持ち寄り、絞り込んで図面を引き、模型を作り、それをたたき台として肘折温泉の代表者や実際に工事にあたる地元の職人さんとの検討が重ねられました。

「肘折温泉の秘湯らしさがいい」と菊池さん

地元の人々が思い描いていた改装計画と、竹内ゼミが提案するリノベーション計画の間には、少なからず隔たりがあり、そのすり合わせにも時間と神経を費やさざるを得ませんでした。もちろん、そこには予算の制約もあり、また番台で働く女性の切実な要望などもあるわけです。誰よりも「上の湯」で過ごす時間の長い、番台で働く女性の言い分はやはり無視できません。

「番台のおばさんの言い分が印象的」と佐藤さん

紆余曲折を経て計画は工事段階に入り、g*gの表紙では緑のベールで覆われていた「上の湯」もお盆の頃にはその全容を明らかになるはず。どのように肘折の温泉街に溶け込み、温泉街の新しい顔としてどのような情緒を醸し出してくれるのか、各方面から大きな期待が寄せられているようです。

竹内先生がデザインし、庄内地方の建具組合の職人が、自慢の伝統工芸『組子』の技術で組み上げた八角形の灯籠が照らし出す肘折温泉の街並みに新生「上の湯」が姿を現すことによって、この山間の温泉街には、どこか懐かしくも新しい風が吹き抜けることでしょう。

「古い旅館との調和を大切にしたい」と亀岡さん


「大変だったがいい経験になった」と畠山さん


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