芸工大では、初心者から経験者まで参加できる公開講座を多数開講していますが、今回取材したのは誰もが本格的な陶芸を楽しむことができる、陶芸講座。白い磁器に青の模様が美しい、染付けの器づくりの講座は全12回。作品は大学内の本格的な釜で素焼きして水分を飛ばした後、一筆一筆模様を入れて釉薬をかけ、約15時間かけて焼き上げます。参加者は、小さな箸置きから大きな花器まで思い思いのオリジナル作品を作るために、轆轤(ろくろ)の成形や一回目の釜出しが終了した作品に手を加え、それぞれの制作に集中していました。
広い工芸コースの実習室ではそれぞれがろくろに向かい合い、講師が工程を確認しながら必要に応じてアドバイスや制作の手助けを行っています。土を捏ねる作業に苦労している受講者に「力をかけなくても大丈夫。あまり練っても土が荒れてしまうので、まとめる時はゆっくりと大きく回転させて。」と声をかけていたのは、講師の丹羽さん。「土を練る時に行う"菊練り"は、粘度の中に含まれている空気を抜くために必要な基本的な技術です。最初は力加減が難しく、コツをつかむまで皆さん苦労していますね。慣れるまで何度もやって体で覚えるしかありませんが、受講者の皆さんは、自分の目標を持って制作しているので上達が早いと思います。」と話す丹羽さんは、丁寧に説明をしながら土のまとめ方まで指導していました。初めてこの講座に参加したという方も、6回目の講座ではだいぶ手慣れた様子で制作を進めています。
この講座の魅力は、電動ろくろや本格的な釜など工芸コースの充実した設備を使用できることはもちろん、指導する講師が多いのできめ細かく教えてもらえる点。講師の星野さんは「陶芸は、ちょっとしたことで穴が空いたり形が崩れたりするので、なるべく失敗しないように教えています。今回の、染付けの器は白磁が美しい陶器ですが、鉄分が入ると黒い斑点が出てしまったり、繊細な所があるので注意が必要です。絵を描き入れる際も釉薬を濃くすると焦げてしまったりするので、なるべくご自分が納得いく美しい仕上がりに導いていきたいです。」と話し、受講者が陶芸を楽しく感じられる講座になるようにしています。講師たちは一人ひとりのペースに合わせて気を配り、それぞれの目標に到達できるように指導していました。
受講者は、「ろくろの使い方が上達したい」「実用的な器を作りたい」とそれぞれの目標を持っていて、土曜日に行われる講座がいつも楽しみだそうです。陶芸講座に参加して6年目の方は、「社会人になると、これだけ集中できて"無"になれる時間はなかなか持てません。自分の作品の仕上がりに納得いかないと悔しくて、少しずつでも成長したいなと思うんです。」と語り、公開講座がきっかけとなって、陶芸が自分の生活の一部になっていることを教えてくれました。
次回、9月4日(土)〜9月18日(土)に全3回で予定されている陶芸講座は「楽焼き体験」。手とへらだけで成形する手捏ねによる陶芸で、素地と火の関わりが作品に直接的に反映される楽焼きは、染付けの器とはまた違った魅力がありそうです。