作並地域を温泉旅館から活性化
企画構想学科学生が手がける新プラン

山形と宮城をつなぐ国道48号線に位置する作並温泉は、1796年に開湯した歴史ある温泉。古くから仙台の奥座敷として多くの人々に愛されてきましたが、30年ほど前から宿泊客がゆるやかに減少し、震災以降は廃業する旅館も増えたことでさらに苦しい状況が続いています。本学は平成27年度から「作並地域活性化検証事業」に取り組んでおり、企画構想学科の学生たちが温泉旅館の宿泊プランを企画するなど、新たな動きをみせています。

作並地域全体の活性化を図るためには、地域資源や観光客のニーズを把握し、温泉旅館・ホテルに高い付加価値をつけてアピールしていくことが方向性の1つとして考えられます。企画構想学科の本吉裕之准教授は、作並温泉にある5つの宿泊施設に学生グループを配置し、それぞれの旅館・ホテルから魅力を発信することを提案。学生たちは実際に作並温泉に足を運び、地域の景観や人、各宿泊施設の魅力を掘り起こし、作並温泉が抱える問題解決に結びつく企画を練りました。調査の一環として担当するホテルに宿泊体験をしたという、企画構想学科2年の高橋実鈴さんは「お客様が観光地でどう動くか、行動の流れを見ることができましたし、宿泊客の目線で景色の良さを感じることができたのが収穫でした」と語り、鈴木麗さんは「1人ひとりのお客様をもてなす接客の大変さを間近で感じたのは新鮮な経験。サービスを受けた時のお客様の反応など、プランに活かしていきたいと思いました」と、作並温泉や担当する旅館・やホテルに対する理解を深めていきました。

11月には、各旅館と学生の交流芋煮会「絆咲く(作) 並大抵じゃない芋煮会」を企画。それぞれの新プランをプレゼンテーションした後に、味噌と醤油、2種類の味の芋煮を作り、共に味わいました。企画を担当した平田奈々さんは「旅館同士の交流があまりないということが分かってきたので、地域を一緒に盛り上げるために企画しました。私たちの提案の場にもなり良かったです」と語り、芋煮の準備に苦労しながらも地域活性化のプロセスを踏んでいることを実感していました。芋煮を食べた後は、各旅館・ホテルの温泉を、手触りや香りで当てる効き湯や、回文の地として知られる作並に因んだ回文伝言ゲーム、サザエさんのメロディに合わせて即興歌合戦、クッキーの入った風船を取り合うレクリエーションを行い、楽しく交流を深めていきました。武田知華さんは「最初はぎこちない雰囲気だった旅館の人たちが、和気あいあいと楽しんでくれて良い空気が作れたと思います」と、地域活性化の土台作りに手応えを感じていました。

10月には、楽天株式会社トラベル事業国内営業部東北営業グループの神作健司さんを、12月には、じゃらんリサーチセンターの加藤史子さんを迎えて、観光産業の現状や温泉地における若年層旅行客へのアプローチの重要性などの講義を開講。12月の講義では、19歳から23歳が無料で様々な体験ができるアプリサービス『マジ部』の実例を通して加藤さんが感じた、地域や業界全体が連携と競争をして取り組む必要性を伝えました。質疑応答では、学生たちが作並で感じたお金に関する課題に対して「企画実現のためには論理的に説明することが必要。不安になっている方には、その不安を数値で具体化して分解していきます。例えば空いたスキー場で回り続けているリフトに無料で19歳を乗せたら、費用はかかりませんが食事や宿泊、機材レンタル代などの付帯収入がありますよね。お客様の事業構造に気づけば、低いリスクでリターンを得る提案もできます」と、作並での取り組みに役立つ実践的なアドバイスをしました。また2016年1月には、オークラニッコーホテルズ予約センターの方をお招きし、
お客様への「おもてなし」について考える授業が予定されています。

このような研究とプレゼンテーションを繰り返し、現在、既にいくつかの旅館・ホテルで新プランが開始しています。また、ホームページの改善案をまとめたり各旅館の名物を作る商品開発も進めています。学生の企画構想により作並温泉が活性化していく今後の展開が楽しみです。

 

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