「結」のバリエーションデザインでラッピングされたインフォメーションボックスの窓から顔をのぞかせる小谷さん。

卒展ポスターに採用されたことを受けて、
自らの卒業制作として本格的に取り組むことを決断

全学科生による撮影などパフォーマンスも含めて高評価
見事に卒展プライズに輝いた「結」プロジェクト

撮影スタジオに14学科の代武lが集まって「結」の文字を腕で組み上げているところ。センターで文字バランスを見ているのは中山ダイスケ先生。

毎年、学生の作品の中から選ばれている卒展ポスター。2009年度卒展のポスターとして選ばれたのが卒展委員でもあったグラフィックデザインコース小谷拓矢さんの『結』。これまでは、選ばれた学生の作品をベースにポスターとしての作り込みはプロに委ねられていたのですが、小谷さんは自らの卒業制作と位置づけることで最後まで関わり続けることにしたのです。卒展のポスターを卒業制作にすることで、卒展を私物化しようとしていると思われるのではないかとの葛藤もありましたが、より良いものに仕上げたい、がんばりたい、その思いの方が勝ったのでした。

卒展委員会の了承も取り付け、ミーティングを重ねてみんなの意見や先生のアドバイスを取り入れてより良い方向へ。自分の作品であり、卒展全体の顔となる作品でもあるという点で難しい舵取りを経験した小谷さん。それが今回いちばん勉強になったことでもあると言います。「一応、自分がデザインしたことにはなっていますが、いろんな人が関わってきてくれていて、さまざまな意見やアイデアを受け入れて調整していったプロセスも含めて自分の卒制なのだと実感。今後デザインしていく上でも今回のようなケースは絶対にあると思うので、完成品だけではなく「結」プロジェクト全体が本当にいい勉強になった」としています。

制作工程としては、スタジオに14学科からひとりずつ14名に集まってもらって「結」の文字を腕で組み上げて撮影を行うという大掛かりなものになりました。グラフィックという平面にとどまらない、全学科を巻き込んでのパフォーマンス性も評価されての受賞です。審査委員からは、「ポスター制作を先行していて、それにパフォーマンス性などを持たせて卒業制作にまで引き上げていった決断が素晴らしい」「人の輪が感じられる。それぞれ違った考えを持った人たちがひとつの話題の中で向き合っていくことは非常に有意義」などの講評が寄せられました。昨年の6月頃からずっと「結」に取り組んできたことで、それがカッコいいのか悪いのかもわからなくなり自信を失いかけていた小谷さん。審査委員をはじめたくさんの人々から好感触を得てようやくホッとした表情を見せていました。今後は、地方でデザインする意義についてより深く研究し、将来はグラフィックデザイナー、そしてディレクターをめざす予定。地元企業と取り組んだ産学共創での経験なども活かしつつデザインの現場で大いに活躍してくれることでしょう。

RECOMEND

2014.12.16

名もなきものに光をあてた、山形文化の核心『ヤマノカタチノモノガタリ[地域文化遺産の保存と伝承…

表紙のアート

2014.09.10

「みちのおくの芸術祭 山形ビエンナーレ」プレイベント「荒井良二 ライブ & ペインティング …

表紙のアート

2014.06.13

大学院洋画領域2年生の田中望さんがVOCA賞を受賞 力強い自然の流れと文化の集合を描いた「も…

表紙のアート

2014.01.15

g*g Vol.26 WINTER 2014:表紙のアート

表紙のアート

2013.07.15

g*g Vol.25 SUMMER 2013:表紙のアート

表紙のアート

2013.04.14

g*g Vol.24 SPRING 2013:表紙のアート

表紙のアート