山形鋳物、平清水焼き、木工細工などの展示販売を行っている物産紹介室。伝統あるものづくりの技術と心が"今"に伝わっています。

日常の中の芸工大

伝統の"ものづくり"に新たな息吹
〈山形まなび館・MONO SCHOOL〉が開館しました。

萩原尚季さん/2001年大学院デザイン工学専攻ビジュアルコミュニケーションデザイン科卒。コロングラフィック設立を経て、2010年株式会社コロンを設立。山形まなび館・MONO SCHOOLの企画運営委託事業者認定を受け現在に至る。

見慣れた街並の中に、少しずつ変化していく風景があります。2010年4月28日、山形市の中心街で長く学び舎として親しまれてきた、山形市立第一小学校の旧校舎が〈山形まなび館 MONO SCHOOL〉として生まれ変わりました。山形まなび館は、ものづくり支援を主軸に中心市街地の活性化を図ることを目的とした事業で、企画運営は芸工大OBである萩原尚季さんが代表取締役を務める株式会社コロンで行っています。萩原さんは「山形には、長く受け継がれてきたものづくりの技術と作品がありますが、伝える場所が十分だとはいえません。MONO SCHOOLの"MONO"は第一小学校の"1"と、ものづくりの"もの"をかけた意味を持っていますので、この場所でものづくりの心と技術に触れて、デザインをより身近に感じてもらえたらいいですね。」と、地域に根ざした施設として山形まなび館を発展させていく考えです。

座り心地の良い椅子がある観光案内所。市民や市立図書館から寄贈された雑誌・書籍があります。

山形まなび館の中には、訪れた人がくつろげるカフェや、山形鋳物などの魅力的な伝統工芸品を展示販売している物産紹介室、観光案内もしているライブラリーには図書館や市民から寄贈された、アート関連の雑誌・書籍が並んでいて、誰でも自由に閲覧することができるようになっています。また、コミュニティスペースとして利用できる多目的ルームや、芸術文化など幅広い創作活動を行う個人・団体向けに貸し出しをしている交流ルームも開放。「開館後、多くの方に足を運んで頂いています。第一小学校のOBという方や散歩のついでに立ち寄った方、お子さん連れの若いご夫婦など年齢層は幅広いです。」という萩原さん。山形まなび館を運営するにあたっては『ロングライフデザイン』の考え方を根幹に据えているそうです。

山形鋳物を制作する過程で出る廃材を利用して作られた箸置きはクジラ型。ランチョンマットもコロン作です。

「新しいものを作るだけがデザインではありません。質が良く丈夫なものを、古いからといって捨てるのではなく何度も活用することを考えるのもデザインのひとつです。山形市内は、銅町、鋳物町など鋳物の産地が名前にもなっているほど、ものづくりが盛んな場所。山形まなび館に来ることで山形が育んだ良い物に出会い、長く使うことの素晴らしさに気づいてほしいと思っています。」と、デザインの視点を持って企画運営にあたっています。

可愛いピクトグラムが配された館内のサイングラフィックもコロンでデザインしています。細かい部分へのこだわりも注目です。

山形まなび館の大きな正面玄関と高い天井は開放感を感じさせ、足になじむ床と心地よく声が響く鉄筋建築の佇まいはノスタルジック。この深い存在感は山形の風景に馴染んでいて、萩原さんの考えとしっかり同期しているように見えます。今後は、絵本作家・荒井良二さんとの企画展やミサワクラス、花小路トランクとのコラボレーション(荒井良二展−山形じゃあにぃ2010)も決まっており、山形の街に根付いた普遍的なデザインの力が、この場所を中心にさらに広く波及していくことになりそうです。

懐かしく優しい小学校の教室の雰囲気を、色濃く残したカフェスペース〈穀雨カフェ〉。運営しているのは、芸工大卒業生でじゃぽんデザイン事務所を設立した吉田勝信さんと飯塚咲季さんの2人。飯塚さんは農家と提携し、規格外になった野菜を仕入れ毎週水曜日と土曜日に販売をしています。〈穀雨カフェ〉で提供しているのは、そんな山形産の新鮮な無添加野菜や果物ジュース、村山市にある山形ガールズ農場で作られた野菜プリンの他、山形ではおなじみの"やまべ牛乳"など、ほっとするメニューが並びます。和箪笥の引き出しを外して棚にした内装や店子ロッカーなど、見どころも盛りだくさんです。

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