g*g Vol.26 WINTER 2014
昨年11月3日、廃校を舞台にした音楽祭「月山青春音楽祭2013」を西川町の旧西山小学校で開催しました。「日本に音楽文化を根付かせたい」ロックミュージシャン寺岡呼人氏の熱い思いから生まれた世代を越えた音楽イベントで、企画構想学科3年生が主体となり開催しています。学科の中心的なイベントになりつつあり、2013年度は、平原綾香氏、KAN氏のライブをはじめ、レコード展、懐かしい給食メニューでもてなす食堂など、多彩なイベントを企画し、運営。2世代3世代が集う最小単位としての“家族”をテーマに、世代を越えていっしょに音楽を楽しめる空間を提供しました。当日の盛り上がりのほんの一部を時系列でリポートします。
11月にしてはまずまずの天候にも恵まれ、午前9時に朝の会がスタート。寺岡呼人校長のあいさつで1日限りの音楽祭が開校すると、1日限りの生徒たちが続々と登校し、お目当てのイベント会場をめざして校舎内へ。80年代の音楽シーンを振り返る「MUSIC STUDIO 80’S」や手作り楽器のワークショップ「音のおもちゃ箱」、懐かしいレコードの音色を楽しむ「山のふもとのれこおど展」など、さまざまな企画で音楽と触れ合うことができました。そして、学校といえば給食が付きもの、「月山食堂」では幸せ料理研究家「こうちゃん」プロデュースの給食も登場し、限定50食の食券はあっと言う間に完売。今回のテーマ“家族”そのままに3世代そろった家族連れや親子、友だち同士、ご近所同士など幅広い年齢層の生徒たちでにぎわい、廊下ですれ違う来場者の表情は一様に笑顔でした。
各教室の賑わい賑わいもさることながら、やはり今回もメインイベントは豪華アーティストによる「いもに音楽堂」(体育館)でのライブ。ピュアな歌声が印象的な男性2人組ユニット吉田山田、第1回に引き続き出演のKAN氏は、アメフトのユニフォーム姿で登場し、月山青春音楽祭における“最多出場記録”をアピール。お馴染みの曲と楽しいトークで大いに会場を沸かせました。さらに、予定にはなかった寺岡校長のステージをお膳立てし、これにはJUN SKY WALKER(S)ファンも大興奮。そして、会場内には心地よい緊張感が漂い、いよいよ平原綾香さんの登場です。代表曲「Jupiter」をはじめ数々のヒット曲、新曲を披露し、圧倒的な歌唱力と気さくな人柄で観客を魅了しました。アンコールでは、会場からのリクエストに応えて「星つむぎの歌」をアカペラで、しかもステージを下りて観客の間近で熱唱。体育館ライブらしいアットホームで感動的なシーンで締めくくってくれました。
ライブ終了後、来場者の流れは一気に校舎2階の「山のふもとのれこおど展」へ。お目当ては、寺岡呼人校長と小山薫堂構想企画学科長によるトークショー。天童レコードサロン所有の1000枚のレコードが展示され、老舗レコード針メーカーの(株)ナガオカさんの再生機器で懐かしい音色を聴くことができたこの教室で、両氏所有のお宝レコードの自慢合戦や音の聴き比べを繰り広げました。そこからみえてきたのは、アナログレコードをこよなく愛する両氏の熱い思い。ハンドマイクならぬメガホンを持ってのシュールな対談シーンと両氏の軽妙なトークによって会場はずっとほのぼのとした笑いにつつまれていました。
「月山青春音楽祭’12」の大成功も、それを手掛けた先輩たちの苦労も目の当たりにしてきた今回の企画構想学科3年〈Cirius〉メンバーは、大きなプレッシャーと不安を抱えての準備期間だったようです。Cirius(シリウス)とは、学生たちが1年次に自分たちで決めた学年名。「星のシリウスのように私たちも社会に光(新しい文明)をもたらす存在になろうとネーミングしました。このイベントをきっかけに〈Cirius〉の雰囲気を変えて成果を残したかった」と語るのは代表を務めた小畑成美さん。机上の企画ではなく、実際に人を、モノを、お金を動かすイベント運営を経験したことで得た自信と反省。自信は今後の就職活動に活かし、そして反省は後輩たちに伝えて音楽祭の継続・成長につなげてほしいと考えています。また、家族をテーマにしたことで、寺岡呼人校長がめざす、世代を越えてずっと音楽を楽しむという文化に一歩近づけた、そんな手応えも得られたようです。
会場を訪れた人々の表情が「みんないくつになっても本当は音楽が大好きなんだ」そんな当たり前のことに気づかせてくれる音楽祭。「月山青春音楽祭」を第3回、第4回……と継続させることで少しずつ音楽文化を根付かせていきたいものです。