8月24日、せんだいメディアテーク1階オープンスクエアにて、プレイベントの「荒井良二 ライブ&ペインティング&トーク&ブックフェア みちのおくだ門」を開催し、のべ500人の来場者を迎えました。メインとなったのは、今回の山形ビエンナーレで芸術監督を務める、絵本作家の荒井良二氏の4時間を超えるライブペインティング。スティールパン奏者トンチの演奏が、会場を森の静寂と獣の気配が感じられるような不思議な空気に包む中、東北の、そして山形ビエンナーレへの入り口がつくられていきました。
当日は、荒井氏と総合プロデューサーの根岸吉太郎学長の対談からスタート。対談前には根岸学長の誕生日を祝うサプライズがあり、学生スタッフ「やまわろ」とスクールラボ受講生が趣向を凝らしたケーキ、来場者のバースデーソングに会場の雰囲気が和みました。対談では、根岸学長が、震災以降、「キッズアートキャンプ山形」や「山形じゃあにぃ」で荒井氏が進めてきた制作に触れ、荒井氏の制作が芸術の“狭間”でおこなわれているような印象を持っている、と発言。荒井氏は「芸術と人との境界がない“淡い”領域」で創作することが、自身にとっても魅力的なものだと振り返りました。「現代芸術には作家が見る人に突きつけてくる芸術と、距離をもってそれを見る人が自分を無にして受け止めなければならない作業があって、それが“分からなさ”になっていますよね。山形ビエンナーレには、もっと密接に人と関わっていくアーティストが荒井さんの元に集まってきているような気がします」という根岸学長。荒井氏の創作スタイルや存在が、山形ビエンナーレが持つ柔らかな空気感に影響していることがうかがえる対談となりました。
公開制作「みちのおくだ門」は、大分、東京、仙台など日本各地で人々と共に様々な「門」をつくる、荒井氏のプロジェクト「旅する門」のひとつ。みちのおくへの旅の入り口として、メイン会場の文翔館に展示される象徴的な作品です。制作に参加したのは、仙台の子どもたちと「みちのおくラボ」の受講生。プロダクトデザイン学科卒業生でTIMBER COURTを立ち上げた、家具職人の相田広源氏は、箱状の木枠を用意し組み上げていきました。制作の合間には、会場の風景を切り取りモニターに映し出した、音楽部門ディレクター岩井天志准教授と、プログラムディレクター宮本准教授、招待アーティストである山伏の坂本大三郎氏のプレゼンテーションや、トンチや根岸学長を交えた対談も。自然の中に誘うように奏で出したトンチのスティールパンが、鳥のさえずりから獣の咆哮に変わるとき、制作はクライマックスへ。濃密な創作の空気が会場を満たした最後の30分間、荒井氏と子どもたちが絵具や紙、毛皮を貼付けていった箱は大きな「門」に組み上がり、明かりが灯って『みちのおくだ門』は完成しました。
最後は、坂本氏の法螺貝が鳴り響く中、会場の全員が『みちのおくだ門』をくぐり、イベントを締めくくりました。全てが即興で行われた4時間もの公開制作のプロセスを共有し、「みちのおく」への旅の入口をくぐる体験は、自然に東北や芸術とつながる、機会となったと言えます。
g*gのビエンナーレ特別号は、ビエンナーレ会場にて100円で販売しています。紙面記事も充実の内容ですので、ぜひご覧下さい。
山形ビエンナーレ2014は、2014年9月20日〜10月19日までの開催です。詳しくはこちらのオフィシャルサイトをご覧下さい。