世界最高水準の省エネルギー住宅
『山形エコハウス』が完成しました。
環境省が募集した「21世紀環境共生型モデル住宅の整備事業」において、全国20事例のモデル住宅のひとつに選抜された「山形エコハウス」がついに完成しました。この事業は、家庭での二酸化炭素排出量を削減し、環境負荷を抑えた快適な暮らしを実現する、未来に向けて今から始める住宅構想を目的としています。
東北芸術工科大学は、建築・環境デザイン学科が中心となり設計段階からアドバイザーとして参画しています。建築・環境デザイン学科の学生たちは、市有林から使用する木材の現地調査、加工・設計・建設に至るまで、一連のプロセスを体験しながら学習しました。今後は活用方法についても関わっていく予定です。
そして、設計を担当しているのは、羽田設計事務所の金子裕司さん。「芸工大大学院のOBだということもあって設計を任せられ、とても嬉しく思っています。基本設計から現場の管理、最終検査の後の引き渡しまで担当するのは初めてなので、難しいことも多かったですが、今後につながるいい経験をさせてもらいました。」と感想を聞かせてくれました。
山形エコハウスは世界最高水準の省エネルギー住宅であり、様々な技術と環境に対する考え方が、ぎっしりとつまっています。例えば、外気の影響を受けずに、少ないエネルギーで室内を快適に保つために設定したQ値(断熱性能の計算値)は0.6。これは国内でもトップレベルの数値で、「断熱性能を上げるために気密シートの徹底的なチェックをするなど、住宅の中に隙間ができないように最も気を配りました」という金子さんの言葉にも頷けます。山形の住宅では100mmほどの厚さが一般的だという断熱材も、山形エコハウスは内外合わせて300mmも入っています。
また、ドイツから取り寄せた木製のサッシに三重のガラスをはめ込んだ窓には、3mmのガラス3枚の間2カ所に16mmずつアルゴンガスが入っていて、熱を通しにくい空気層が形成されています。山形エコハウスの内部の壁や屋根には、壁内部の断熱の様子が分かるように工夫が施され、これらの仕組みを実際に見られるようになっています。
土台には白アリに強いという唐松が使用され、その上に60mmの厚さの杉が敷かれていますが、どちらも山形産のもので地産地消によるCo2削減にも配慮しています。コンクリートの基礎の中にも断熱材が入っていて床下に温水パネルが敷かれているため、厳しい山形の冬も快適に過ごせるようになっています。このようにして、山形エコハウスはローカルな土地環境に対応した最高水準の環境共生型住宅を実現しています。
「本当は、計測したデータだけではなく一日でも実際に住んで快適さを感じてもらうのが一番良いと思うのですが、まずは見ていただいて環境に配慮した住宅への意識と関心が高まればいいですね。これからのことを考えれば必ず必要になっていくことですから。」と金子さんは語ります。山形エコハウスは今後NPO法人の管理で一般公開され、未来の住宅に関する情報発信拠点として環境共生型モデル住宅の普及を目指します。みなさんも是非、山形エコハウスへと足を運び、最先端のエコロジー住宅設計による「地球にやさしく、住む人にやさしい」住宅をご覧ください。