日本画コースで経験した感性を、新しい農業へ。
自然と人を見つめ、地域に新たな活力を。

月山と鳥海山に囲まれた庄内砂丘。湯野浜海岸からほど近い鶴岡市下川字窪畑に窪畑ファームはあります。渡辺綾さんは、昨年美術科日本画コース大学院を修了後、微生物を活用した農業を行っている株式会社山本組アグリ事業部に就職。同社が経営する農業生産法人、株式会社窪畑ファームで、生産から加工、パッケージ、販売までを行う新しい農業経営形態に身を投じています。もともと接客業が好きで、その土地で穫れた産物の美味しさを伝える仕事をしたかったという渡辺さん。大学が主催した企業説明会で窪畑ファームに出会い、就職を決意しました。「庄内砂丘といえばメロンが有名ですが、それは先人たちが砂丘を開拓し、品種改良を重ねて作り上げてきたもの。窪畑ファームも同じように野菜が元気に育つ培土を作り、農作物を育てて販売し、雇用を豊かにして地域を支えていこうとしています。土地に縁を持ち、地域と密接に関わる仕事ができると思いました」。現在は、ブログなどで商品紹介をするほか、手書きの『窪畑だより』で窪畑ファームの現在を伝えたり、お礼状に山や海、黒松林の美しい風景画を入れるなど広報担当として才能を発揮しています。

学生時代には、「だがしや楽校」や片桐隆嗣教授のチュートリアル「みつけたむぎの」など、様々な地域を訪れワークショップや作品展の実施に関わっていた渡辺さん。その中で、鶴岡市で交流をしながら地域の魅力を再発見していく活動をおこなった際、まちづくりに熱心な温かい町だという印象を持ったそうです。また、三瀬夏之介教授のチュートリアル「東北画は可能か?」で、地域に入り込みアーティストとして活動した経験も、渡辺さんの生き方に影響を与えました。「山をテーマにした作品を描く上で、山岳信仰についての知識を蓄えたいと思い、出羽三山がある庄内地方に興味がわきました。山が人々にとってどういう存在で何を育んだのかを考え表現したことと、農産物がどういう場所で育っているかを伝えることは少し似ていますね。学生時代は制作に活かしていた感性を、今は仕事に活かしています」という渡辺さん。山岳信仰に対する興味関心を未だに持ち続け、ふと見える山の姿やスケール感に心を震わせては、昔から綿々と続く山と人との色濃いつながりに思いを馳せています。秋には出羽三山神社へ4日間の修行に入り、非日常の神秘的な世界と、普段過ごしている日常の世界がひとつながりに存在することを体感しました

渡辺さんは、「みちのおくの芸術祭 山形ビエンナーレ 2014」の東北画や、出身校である宮城野高校卒業生の展示会、温泉施設のギャラリー装飾など、仕事の傍ら制作活動も精力的におこなっています。「今後はもっと鶴岡の地域に入っていきたい」と、想いを語る渡辺さん。鶴岡市で「やまがたこどもアトリエ」を主宰する吉田祐子さんや結城ななせさん、タウンマネージャーとして商店街を中心としたまちづくりを行っている橋本匡史さんなど、本学卒業後、鶴岡で活動をしている先輩たちの名前を挙げ、より深く地域に根付く意欲を示しました。渡辺さんは、自然と人とのつながりを見つめながら活動の幅を広げようとしています。

 

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