ミサワクラスのリビングダイニングにラグを広げ、作品を振り返るRコモンズのメンバーたち。左から、立花泰香さん(洋画領域版画専攻OB)、根本裕子さん(工芸領域陶芸専攻OB)、望月梨絵さん(ビジュアルコミュニケーション領域OB)、黒宮亮介さん(芸術文化専攻彫刻領域大学院)。手作りの風合いがあたたかい、大きなラグの中央には「R」の文字が。

日常の中の芸工大

日本のアート、美大の未来を探る〈NIPPON ARTNEXT 2010〉に、
Rコモンズが「山形」を持ち込んで、外苑ピクニック。

明治神宮外苑に完成した芸術教育拠点「外苑キャンパス」のこけらおとし展として、昨年9月23日から一週間にわたって開催された〈NIPPON ARTNEXT〉。姉妹校である京都造形芸術大学の学生、アーティストとともに、日本のアートの未来、美大のネクストを探る様々なシンポジウムとトークライブ、卒業生・学生・アーティストの作品展示が行われました。

Rコモンズのウェブサイトで使用している絵柄をプロジェクターで写し、デザインを起していきます。穂積繊維工業社長の指導のもと、いくつかの糸を選び、ハンドフックで打ち込むようにして糸をかけていきます。

芸工大からは、Rコモンズの他、有志の学生が多数出展。Rコモンズとは、七日町の廃ビルをリノベーションした2つのアパート「ミサワクラス」「花小路トランク」に住む、19人の芸工大生と卒業生のユニットです。彼らRコモンズが出展したのは、『ピクニック』をテーマにした、共同生活を送りながらライフスタイルそのものを創造するRコモンズらしい作品。制作したのは「R」の文字が大きく入ったラグや陶器の食器などで、会場ではカレー作り対決のパフォーマンスを披露。熊の剥製や旗、テーブルを持ち込み、ミサワクラスでの暮らしの雰囲気をそのまま外苑キャンパスで繰り広げました。

作品のアイコンとなったラグは、Rコモンズのウェブサイトでイラストを担当している望月梨絵さん(ビジュアルコミュニケーション領域OB)によるデザイン。「自由であることがRコモンズの良さ。山形から東京に場所を移しても、遊んでいるような感じがだせれば」と語る望月さんは、展示会場に掲げられた旗の制作も手がけました。ラグの制作は中山町で良質の絨毯製品を生み出している穂積繊維工業による協力のもと、一日で仕上げました。選んだ糸を、ハンドフックで絵を描くように植え付け織っていく作業工程はハードだったものの、メンバーにとって新鮮な体験となったようです。

今回の作品を考えるにあたっては、会議を重ね「自発的にやりたいことの集合体が強い」「山形をそのまま持っていこう!」という結論に至ったといいます。根本裕子さん(工芸領域陶芸専攻OB)は、自身のスキルを活かしピクニック用の食器セットを制作。「一緒に暮らす家族のような人たちが使うことに限定し、テーマに沿って前向きに作ることはいい経験になりました。個人的にとても楽しかったですし、それぞれができることを結集させて遊ぶことができたと思います」と笑顔で語っています。

上:いつものように協力してカレー作りをするRコモンズのメンバー。ミサワクラスVS花小路トランクで対決をするも、どちらも美味しく決着はつかず。中:根本さんが制作した食器に盛られたカレーが、ミサワクラスのテーブルの上に並べられていきます。下:ラグの上できままにくつろぎ、展示自体を楽しみました。

もともと料理が好きなことから、カレー作りで"シェフ"を担当した黒宮亮介さん(芸術文化専攻彫刻領域大学院)は、「それぞれに役割を決めてしまうことはしたくありませんでした。いつもと違う場所にピクニックに行く時は、得意な料理を持ち寄ったり、楽しめるグッズを持ってきたりしますよね。山形をそのまま持っていくような『ピクニック』では、そんな一人ひとりのテンションが大事でした」と、今回の作品を振り返りました。

展示当日は、ラグを広げ、ミサワクラスのテーブルに集い、いつものメンバーが思い思いに時間を使ってリラックスした雰囲気だったといいます。多くのメンバーがいるRコモンズのマネージメントをしている立花泰香さん(洋画領域版画専攻OB)は、「カレーを作り始めた時点で、もう『ミサワ』の雰囲気になっていて、何の違和感もありませんでした。ただ、取材する人や家族連れが見に来た時には、少しいつもと違っていましたね。入ってくる人によって空気が変わる感じもおもしろかったです」と、当日の様子を教えてくれました。

「日本のアートはどこへ行くのか?アートにできることは何なのか?」という問いかけに、どこでも楽しんで自分たちの空間にするという、表現に対するしなやかな姿勢を表したRコモンズ。今回の作品に関わったメンバーにとっては、自分たちのいる場所を再確認し、未来を肯定する力強い経験となったのではないでしょうか。

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