「社会イノベーション進行形」をテーマに、2009年に開催された第四回サスティナブルデザイン会議。今年はさらに明確な方針が得られることが期待されています。

テーマは「ローカル・サステナブル・コミュニティ」第5回サステナブル国際会議が2月26日、27日に開催されます。

サステナブルデザイン国際会議
Destination 2010-2022

植松豊行/1948年生まれ、香川県出身。武蔵野美術大学造形学部産業デザイン学科卒業。1971年松下電器産業株式会社入社。2002年にパナソニックデザイン社社長に就任し、在任中にブランドの確立と松下産業株式会社のV字回復に貢献。日本におけるサスティナブルデザインの第一人者。

環境問題を起点に、私たちの考え方や暮らし方、文明、文化へと議論のテーマが広がりをみせているサステナブル国際会議。第5回を迎える今回は山形で開催され、地方から見える新しい価値観に基づいた自然な暮らしの実現を提唱します。今回の会議の意義について、サスティナブルデザインの第一人者で本学デザイン哲学研究所教授である植松豊行教授にお話をうかがいました。

★サステナブル国際会議とは
サステナブル国際会議の第一回目は、2006年。エコプロダクト展によって産業界から着眼されはじめていた2005年頃、山本良一先生の「ものづくりの原点であるデザインもサスティナブルに考えるべき」という提言があって、環境庁、経済産業省の賛同のもと開催されました。私は当時、パナソニックデザイン社の社長をしていたので、そこでプレゼンテーションさせていただききました。

まず、私はサスティナブルデザインとは「人と環境に配慮し、社会の発展と調和する社会システムやものづくりをする取り組み」と定義しています。今、私たちが直面している課題として、2050年には地球人口が92億に膨れ上がる将来や、現在の地球人口69億7000万人の3分の1がご飯を食べられていないという現状、世界の多くの建物が日本レベルの建築基準を満たしておらず大きな災害に耐えられない、という状況があります。私たちの暮らしや進化を抑制することなく、どのように環境と人とを調和させていくか、環境負荷をいかに減らしていくか。この極めて難しい二律背反を着地させていく方法がサスティナブルデザインです。そこでは、価値観も変わるべきで、産業も伴って大きく変化していくでしょう。今回のサステナブル国際会議では、単なる活動報告ではなく、ものづくりの最先端を担う方々がどうするべきかの命題をだし、解を問う段階にきています。新たな価値観を感じる会議を、是非やりたいと思っています。

★「環境」プラス「人」を考える
山本良一先生が言う「ポイント・オブ・ノー・リターン」(帰還不能地点)を過ぎた今、環境をいかに延命させるかを考えなければなりません。そして、日本は世界に類を見ない急速な高齢化を迎えます。人口統計表でみていくと、我々の20年後は超高齢化。しかし、堺屋太一さんは「チャンスですね」と言いました。どの国よりも早く超高齢化を迎える日本が、それらを解決する社会システムのイノベーションをおこせば、それは大きな競争力の源となるからです。高齢化社会に対応したユニバーサルデザインで社会を作ること、その考え方で社会全体を構築していくことは、絶え間ない産業の創造、新たな雇用の創出につながります。今までできたことができなくなる、という高齢者に対して、ユニバーサルデザインは社会貢献できる機会を増やしていくことになります。そういった面でユニバーサルデザインとサスティナブルデザインは協力し合う関係にあります。環境と人は両輪。環境だけにスポットを当てるのではなく、一緒に考えていく必要があります。

★山形で開催されること
昨年6月アレックス・カーさんを山形にお招きしました。山形にある棚田の美しさに感銘を受けたアレックスさんから「真の美しさとは何か」という問いかけと、それに対する「何か施設を作って人を集めるのが観光ではない」という価値の主張がありました。ありのままの風景、その環境で生きる人の姿の美しさを感じることこそが観光だということですね。地域から見える新しい価値観のひとつです。今回の山形開催にあたっては、地域での活動もフォーカスし、人と環境の考え方の中で、サスティナビリティ、ユニバーサルデザイン、エコデザインなどの核をどう地域で活性化させるかが活発な議論のしどころになると思います。また、ものづくりを志す学生が集まる芸工大で、この会議ができることはとても有意義なことです。

世界を代表する山本良一先生の、極めてレベルの高い講演や、インド哲学を勉強している詩人でハーブ研究家のベニシア・スタンリー・スミスさんが語る、市民の視点から見た新しい価値観などに触れることができる、多様性に富んだ2日間になります。環境と人を融合させて、ものづくりと発展をどう両立させていくか、という世界的に注目される問いに解が得られる会議になるでしょう。

『第5回サステナブルデザイン国際会議』参加者募集中!
●基調講演会 
日時:2月26日(土)9:30−18:00(9:00 受付開始)
会場:東北芸術工科大学 本館3 階201 講義室
定員:300名(英日逐次通訳、日英同時通訳)
●分科会
日時:2月27日(日)9:30−18:00(9:00受付開始)
会場:東北芸術工科大学 本館3階各講義室
定員:200名[50名×4部屋](逐次通訳)
WEB:http://www.sustainabledesign.jp/
●お問合せ
サステナブルデザイン国際会議事務局(有限責任事業組合エコデザイン研究所内)
TEL:03-6826-1511
東北芸術工科大学 デザイン哲学研究所
TEL:023-627-2307

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