女将さんの場合
g*g2号の表紙を飾った「ひじおりの灯」の灯籠の絵を手掛けた日本画コースの大学院生と卒業生が、スケッチ旅行で肘折温泉を訪れたのは6月初め。天候にも恵まれ、小松淵や地蔵蔵、銅山川、朝市など肘折温泉の初夏の風情をたっぷり深呼吸することがでたようです。学生たちは温泉街にある旅館に分宿、ここ「西本屋」さんには、大学院2年の竹田陽子さんと中田朝乃さんが宿泊しました。その女将さんである西谷栄久子さんが、今回の芸術市民。「昔ながらの肘折温泉の魅力を、学生さんたちがどんな新しい表情に描いてくれるのか、とても楽しみにしています」と大きな期待を寄せて、学生たちを見守ってくれました。
「西本屋」さんは、昔ながらの湯治の宿ということで、年配のお客さまが多いとのこと。温泉はもとより、料理も体に優しいものをと配慮されているのだそうです。館内の雰囲気もどこか懐かしくて心地よくて、竹田さんと中田さんもすっかり寛いで、温泉界隈の散策を終えてからはじっくりデッサンに取り組んでいた様子。女将さんもその没頭ぶりに芸術家の片鱗を感じたそうです。
そんな女将さんのご主人とお子さんもなかなかの芸術家。館内の所々でお二人が描いたというかわいい金魚の絵が目をひきました。詳しく話をうかがうと、金魚はこの旅館のトレードマーク、金魚を眺めながら入浴できる温泉宿として親しまれているのだそうです。絵心のある温泉旅館の女将さんと日本画コースの院生たち、そのふれあいの中で互いに良い刺激を得たことは確かのようです。
彼女たちの絵が完成し、その絵が灯籠となって各旅館の軒先を照らしています。初夏の宵、昔ながらの温泉街の新しい表情、アートが灯る温泉街を眺めに出かけてみてはいかがでしょうか。