伊藤さんが小物づくりと山の製作・彩色を担当したという「下金澤町」の山車。今年のお題は「助六由縁江戸桜」という歌舞伎のワンシーン。町内の人々が協力し合って1カ月以上の時間をかけて作り上げた力作だ。

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地元を思う気持ちが原動力、伝統の「新庄まつり」に燃えた夏。

この祭りの盛り上がりを地域経済にもつなげたい。
そんな思いで大学で得た知識や人脈をフルに活用。

「新庄まつり」の圧巻とも言えるのが、ライトアップされた山車が幻想的な光と影を織り成す宵まつり。20数台の山車が一堂に会して練り歩くパレードはさすがの迫力と風情。多くの観光客を魅了し、リピーターも多いという。

250年以上の歴史を誇る「新庄まつり」の若き担い手の中にも芸工大OBの姿がありました。「新庄まつりは原風景、自分の一部」と語る伊藤充さんがその人。伊藤さんが愛して止まない「新庄まつり」とは、歌舞伎や歴史物語の名場面を再現した山車20数台が街中を練り歩く絢爛豪華なお祭り。町内ごとに毎年趣向を凝らした山車を手作りし、その心意気を競い合います。今年、伊藤さんの町内「下金澤町」では歌舞伎「助六由縁江戸桜」の山車を製作。伊藤さんは小物や山の製作と彩色を担当。その出来栄えはご覧のように見事で、場面構成のよさと作り込みの丁寧さ、綺麗さで好評を得たそうです。

新庄の人々が祭りにこれだけの情熱を傾けるのは、地元に対する愛着や誇りがあればこそ。現在、新庄商工会議所で経営指導員として働いている伊藤さんもそんな生粋の新庄人の一人なのでしょう。地元企業の経営をサポートしたり、地域の活性化のために講演会やイベントを企画運営したり、その熱心な仕事ぶりからも地元新庄への思いが感じ取れます。

この経営指導員という仕事、実はかなりの知識と経験が必要とされる仕事のようで、伊藤さん自身、芸工大を卒業しておいて本当によかったと実感する日々なのだとか。伊藤さんがどんな大学時代を過ごしたかというと、よく遊びもしたが、基礎はしっかり学んでおこうと午後の演習はかなり真面目に出席していたといいます。そこで学んださまざまな手法や知識、そして4年間で築き上げた人脈が今は大いに役立っており、確かな手ごたえを感じているようです。

伊藤充さんは、新庄市出身。デザイン工学部情報デザイン学科で情報計画コースを専攻。卒業後は地元新庄の商工会議所に勤務。経営指導員として会員企業の事業経営の支援や地域と産業の発展を目的とした講習会やイベント、商品企画などを担当している。夏祭りの最後を飾る「新庄祭り」をこよなく愛し、豪華絢爛の山車づくりなど祭りの運営にも深く関わっている。現在30歳。

特に、ゼミの河北教授とは意見を衝突させながらも多くのことを学んだといいます。最も印象に残っている衝突(?)は、伊藤さんの卒業制作に関すること。ちなみに、伊藤さんの卒論テーマは「幼稚園における体育館・グランド連結計画」。そのコンセプトで衝突したのではなく、床の色で揉めたのだというのですから、なんとも微笑ましいではありませんか。

また、大学時代にやっていた音楽活動が、現在のイベント企画などに生かされているとも。音楽イベントを企画・運営することで実社会との関わりを持ち、経験を通してビジネスを学んだといっていいでしょう。

芸工大での多彩な学びや経験をそれぞれの地元に持ち帰り、さまざまな成果や変化をもたらす、そんな伊藤さんのような存在が今後ますます増えて、地域の活性化に貢献してほしいものです。これからも伊藤さんは日々の仕事を通して地域との関わりをより密接なものにし、さらに年に一度の「新庄まつり」では音楽活動で培った爆発力を発揮するのでしょう。
今日も世界のどこかで芸工大パワーがひょっこり芽を出しているかもしれません。

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