舟越桂氏ご本人からそれぞれの作品に対する思いや解説のレクチャーを受ける学生ボランティアたち。美術の教科書や画集で周知していた作品とその作家を目の前に、興奮しつつも真剣に舟越氏の言葉に耳を傾けていました。

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広報誌〈g*g〉第4号の表紙は、「舟越桂」展の学生ボランティアガイドと、鑑賞に訪れたこども芸術大学の学生たち。

世界的彫刻家の圧倒的な存在感と世界観。
それらを身近に感じることができた稀少な体験。

子どもたちの興味を喚起するために、質問を投げかけて挙手をさせたり、発言させたり。この時ばかりはギャラリーも幼稚園のようなにぎやかさ。でも、子どもたちも作品には手を触れないなどのマナーはきちんと守って、立派な鑑賞ぶりでした。

昨年の10月12日から11月9日までのほぼ一カ月間、芸工大は異様な興奮に包まれていました。それもそのはず、あの世界的な彫刻家・舟越桂の企画展『自分の顔に語る 他人の顔に聴く』が7階ギャラリーで開催されたのですから。舟越氏が大切に保管してきた若き日の作品群や最新作など、計11点が紹介され、学内外で話題となり、たくさんの人々が鑑賞に訪れました。そして、その運営に学生有志がボランティアとして参加。作品を間近で何度も鑑賞できたばかりか、舟越氏から作品解説のレクチャーを受ける機会もあり、夢のような体験をしたのでした。

学生ボランティアは総勢50〜60人。作品の搬入・搬出、広報、会場での監視、ガイドなど、さまざまな役割を分担して企画展の運営を強力にサポートしてくれました。美術の教科書や画集を通して、美大生には周知の巨匠。その企画展を内側から見られるということで、このボランティアは学生たちにとって役得であったに違いありません。

「自分の好きな作品のところに集まりましょう」という呼びかけに応えて散らばった子どもたち。それぞれの作品ごとに学生ボランティアがつきそい「どんなところが好きなの?」「誰かに似てる?」などと話しかけていました。

表紙の撮影が行われたこの日、見学に訪れたのは「こども芸大」の5歳児18名。このように団体で鑑賞する場合は、学生ガイドが作品の解説などを行いながらギャラリー内を案内しました。先入観や固定観念のない子どもたちからは、とてもユニークで楽しい感想がいろいろと飛び出しました。「この人、疲れてる」「手が羽根みたいに見えるから天使だ」「遠くの花火を観てるの」「うしろに誰かいる」「ダンスをしているんだね」「宙に浮かんでいるんじゃなくて海を泳いでいるんだ」………。舟越氏の作品は子どもたちの感性を大いに刺激したようです。そして、その屈託のない言葉は新鮮な発見として学生ボランティアたちの心に響いたのではないでしょうか。

この日ボランティアを担当した学生のみなさん。憧れの舟越桂氏の企画展ということで、とても充実した表情で運営に励んでいました。今回のこの経験は、何らかの形で彼らの作品づくりにも影響を与えることでしょう。

この日ガイドを務めた3人の学生ボランティアに、舟越桂氏の作品や今回の企画展のことについて話を聞いてみました。

黒宮亮介さん彫刻コース3年 京都造形芸術大学の交換留学生)
以前から画集などで舟越氏の作品を見ては刺激を受け、尊敬していました。はじめて作品を目の当たりにしたときは、人間のオーラを感じたほどの衝撃。関西では舟越氏の個展や展覧会の開催が少ないので、ちょうどこの時期に芸工大に来たことを本当にラッキーだと思い、喜んでボランティアを買って出ました。

堀口愛縁さん日本画コース1年)
以前は立体作品にあまり興味が持てなかったのですが、美術館で舟越氏の作品に出会って初めて立体に強く惹かれました。そんな意中の作家とその作品が大学にやって来るという企画を知ってすぐにボランティアに志願しました。実際にお会いした舟越氏の印象は、とても親しみやすい人。それだけに作品の神々しさと結びつきにくく、より興味をそそられました。

関口恵美さん(彫刻コース1年)
舟越桂作品との出会いはよく覚えていないものの、作品はとても印象的でいつの間にかファンになっている自分がいました。舟越氏から直接レクチャーを受けたことで、「作品ひとつひとつをどう見られたいのか」という作家さんの思いが少しわかったような気がします。来場者から「あなたは、この作品をどう思う?」と、解説ではなく感想を求められ、少し困ったこともありました。

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