周辺地域を活性化する新たな商業施設『マーチエキュート神田万世橋』
旧万世橋駅リノベーションに芸工大が関わっています。

現在の中央線神田駅から御茶ノ水駅の間に万世橋駅が誕生したのは1912年。関東大震災による建て直し、太平洋戦争激化と利用客減少による休止を経て、鉄道博物館、交通博物館とその姿を変えてきた万世橋駅高架橋は、2013年9月に『マーチエキュート神田万世橋』へと生まれ変わりました。この旧万世橋駅高架橋再開発プロジェクトにおいてリノベーション計画を手がけたのは、建築・環境デザイン学科の竹内昌義教授です。「旧万世橋駅が持つ“時の重み”や、人々の記憶に残るレンガの“味”、アーチがつくる空間を大事に押し出すことを考えました。デザインを施してどうこうするのではなく、あるものを活かしてメリハリをつけるリノベーションです」と竹内教授。過分に手を加えることなく、歴史と文化をつなぐ再生へと手腕を発揮しました。街のランドマークとして親しまれた赤レンガの印象的な外観やアーチの美しさは、嗜好性の高いショップやカフェの存在感と溶け合い、ほかにはない雰囲気の商業施設となっています。

更に、リノベーションの途中に発見されたのが、物資難の時代に鉄道のレールを建物の構造としていた部材です。当時の遺産として保存することになり、雨水などで痛んでいたものを美術史・文化財保存修復学科と、附置機関の文化財保存修復研究センターで防錆・保存処理を実施。2階の通路にオブジェとして展示されています。半屋外での展示となるため、防錆の処置にはかなり苦労したようです。また、1912年の駅開業時に造られ、2006年の交通博物館閉館時に特別公開された以外には70年振りに一般公開された「1912階段」、1935年に造られた「1935階段」などの遺構もあり、東京駅のレンガなどに見られる「覆輪目地(ふくりんめじ)」が施された壁面やプラットホームに、当時のままの雰囲気を感じることができます。「週末になると観光目的の方はもちろん、ガラスに囲まれた展望カフェデッキで電車の写真を撮る鉄道ファン、昔の万世橋駅の姿を知る年配の方も懐かしんで足を運んでくれます」と語るのは内田尚壯店長。今回のリノベーションを通して発見された100年前の建築技術、歴史的価値を大事にしながら、地域の一員として街の活性化につなげたい考えを示しました。

また芸工大は、旧万世橋駅高架橋開発プロジェクトについて、リノベーションだけではなく多角的に関わっています。建築・環境デザイン学科の志村直愛教授は、2012年に改修途中のマーチエキュート神田万世橋や周辺地域を案内し、その魅力を伝える街歩きツアー「神田界隈まち探検」で講師を務めました。志村教授は現在、旧万世橋駅周辺から日本の歴史や文化を読み解くおもしろさを語り、多くの人に知ってもらうために万世橋の歴史をまとめた本の執筆を構想中。また、マーチエキュート神田万世橋内には卒業生がスタッフとして働いているショップがあるほか、企画構想学科の小山薫堂教授が代表を務めるオレンジ・アンド・パートナーズが企画に携わったソーシャルマラソン「神田シャルソン」では、スタートとゴール地点をマーチエキュート神田万世橋に設定するなど、芸工大との関わりも深まっています。

以前は、駅の利用客や多くの文化人で賑わっていたという万世橋駅周辺。マーチエキュート神田万世橋は今後、神田や秋葉原などの周辺地域と連携し、街のムードやにぎわいを創出する周辺エリア活性型の商業施設としてさらに歩みを進めていきます。

 

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