山形市内にある多田さんのオフィス「ペティートデザインルーム」にて。夢のあるイラストが紡ぎ出されるにふさわしい少しメルヘンな空間。食育絵本「ぺこぺこぺろり」の制作秘話をにこやかに語ってくれた。

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子どもたちを夢中にする絵本「ぺこぺこぺろり」で自らの夢にも近づいたイラストレーター。

人と人との結びつきが深い山形だからこそ、
たくさんの出会いと仕事にも恵まれて・・・。

「ぺこぺこぺろり」は、食の大切さや食に対する感謝の気持ちを育む絵本。主人公のそうた君のもとにぺこぺこ村からの招待状が届いて冒険がはじまる。何度見ても読んでも、新しい発見が楽しめるようにと工夫が凝らしてある。

山形県が子どもたちの食育のために出版した絵本『ぺこぺこぺろり』は、2003年度グラフィックコースの卒業生である多田和絵さんと坂東准教授が原作・デザインを担当しました。男の子が冒険をしながら野菜や魚など嫌いな食べ物を好きになっていくというストーリー。「ぐんぐん」「にょきにょき」などの擬音語・擬態語を多用し、子どもたち自身が読んでも読み聞かせしても楽しい一冊となっています。保育園や幼稚園、図書館、小学校などに配布され、たくさんの親子に愛読されているそうです。主人公のそうた君をはじめ、魚や野菜、動物たちがとても優しいタッチで描かれており、多田さん自身の持つ柔らかな雰囲気が絵本にも現れていました。

これらが多田さん愛用の画材。最近ではコンピュータ上で描くことが多いそうだが、イラストレーターとしての原点はここに。

多田さんは地元山形市出身。中学生の時に芸工大が開学し、大好きな絵やデザインを地元で本格的に学べるようになったことを喜び、迷わず志望校に。多田さんは山形が大好きで、できるだけこの地を離れたくなかったそうです。大好きな山形らしい風景は『ぺこぺこぺろり』の中にもさりげなく描かれていました。自然豊かでのどかで刺激も少ない、こんな山形ではチャンスも少ないのではと思われがちですが、人と人の結びつきが密な地方ならではのルートで多田さんにはさまざまな仕事が舞い込んで来るのだそう。

多田和絵さんは、2003年度6期生として情報デザイン学科グラフィックコースを卒業。現在、山形市内にオフィスを構えてグラフィックデザイナーとして活躍中。昨年からは、芸工大の非常勤講師も務めている。山形市出身。

多田さんが絵本づくりに携わったのは今回が二度目。芸工大に在学中、東京からの依頼を受けて絵本制作に参加していました。その忙しさのピークがちょうど就職活動の時期と重なり、就職の機会を逸してそのままフリーランスのイラストレーターに。でも、それが幸いし、現在は山形市内にデザインルームを構えてグラフィックデザイナーとして多方面で活躍しています。

多田さんの仕事ぶりはというと、そのイラストのタッチも媒体も実に多彩。自分のタッチと限定しない、求められるイメージに合わせて自在にタッチを操れるのが多田さんの強み。これまでの作品集を見せてもらうと、同じイラストレーターの手によるものとは思えないほどバリエーションに富んでいました。また、パンフレットのデザイン制作や企業のロゴマークデザイン、教科書の挿絵なども手掛けており、だれもが知らずに多田さんの作品を目にしているはす。

オフィスの窓に描かれた落書きもとってもキュート。窓辺に飾られた小物たちからも多田さんのセンスや優しさが感じとれた。

どんな分野も器用にこなしてしまう多田さんですが、「今後、いちばん力を入れていきたい仕事は?」と尋ねると、間髪入れずに「やっぱり絵本ですね」という返事が返ってきました。子どもが好きで、絵本の世界が好き。いつかは、依頼を受けてではなく、一から自らの発想で描く絵本を制作したいとそうです。作品を通して、次は多田さんのどんな一面に出会えるのか。おたのしみはまだまだ続きそうです。

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