現代GP[芸術工房ネットワーク]
現代GP(文部科学省現代的教育ニーズ取り組み支援プログラム)「芸術とデザインによる廃校活用と地域教育」の一環として、県内各地の廃校に芸工大生が出没し、さまざまな活動を展開しています。6月中旬の週末、遠藤牧人教務主事が芸工大生たちを引き連れて山形県朝日町上郷地区を訪れたのもその活動のひとつ。学生たちは、学部学科を越えたチュートリアル「実験表現研究会」のメンバーで、秋に旧上郷小学校で開催する展覧会「上郷採祭」の準備として、小学校に泊まり込んで合宿制作を行っています。
この日は、上郷地区の人々と交流を深めようと「大田植えとお話の会」が催され、前日に地元のお母さんたちと芸工大生がいっしょに作った笹巻きなどが振る舞われました。旧上郷小学校での展覧会は、昨年度の「ノアの方舟」に引き続いての活動ですが、このように地域の人々と膝を交えてじっくりと語り合うという試みは今回が初めて。上郷の人々も芸工大生たちも最初はどこかよそよそしかった会話も徐々に打ち解け、少しずつ両者の距離が縮まっていきました。
とりわけ元気いっぱいに地区の人々の中に溶け込んでいたのは、美術科洋画コース3年の飯塚咲季さんと美術史・文化財保存修復学科3年の吉田勝信さん。
1年の時からこのチュートリアルに参加しているという二人は、昨年の「ノアの方舟」にも参加。地域の場所を借りて制作活動や展示をするということから一歩進んで、よりその地域の自然や人々に親しんで、「そこから生えてきたかのような芸術をめざしたい」と考え、この日のような交流会が実現したのです。
上郷の人々の温かさに触れ、すっかり上郷に魅了され、これからもずっと何らかのカタチでこの地に関わっていきたいという二人。外部の人間だからこそ分かる、感じる、気づく・・・上郷の良さをどんどんフィードバックしていきたい考えのようです。卒業後に自立していくことを考えたとき、ここ上郷地区での体験の数々は、いい予行演習であり大きな財産になるわけですから、せめてもの恩返しということのようです。
では、芸工大生を迎え入れている上郷地区の人々はどう感じているのでしょうか。上郷地区の村山吉房区長さんは、若い学生さんたちが地元を行き来してくれるだけで活気が生まれると歓迎してくれているようです。「今は廃れてしまった地元の行事なども芸工大生の訪問をきっかけに復活してくれればと期待している」のだそう。現に、今回の「大田植え」も芸工大生との交流会がきっかけとなって復活した、しばらく行われていなかった地元行事でした。
学生たちの試行錯誤すら、地元の人々の受け止め方によっては地域活性化のきっかけになり得るということではないでしょうか。
夏の制作期間を経て、秋には展示会を予定しています。上郷地区からどんな作品が生まれるのか、ご期待ください。