アートプロジェクト『I'm here.』。秋の深まる山形に[絶/景]広がる。
東北芸術工科大学を卒業し、将来の活躍が期待される若手アーティストを紹介するアートプロジェクト『I'm here.』は今年で4回目。今回は夏の仙台、秋の山形、冬の東京という3地域での開催です。11月5日から17日までの13日間にわたって繰り広げられる秋の山形展、タイトルは『絶/景』。今年、本学デザイン工学部情報デザイン学科映像コースを卒業し、現在は研究生として在籍している西澤諭志さんの新作展と、最上郡の山間地域でフィールドワークを行っているグループ・実験跡地の活動報告を行います。
西澤さんは、『写真新世紀2007』で佳作を受賞し、2008年には全国の美術大学の卒業制作展からノミネートされる『アート・アワード・トーキョー』にも出品するなど、一躍、若手写真家の注目株となりました。そのきっかけとなったのが大学3年の時から撮り始めたという『絶景』シリーズ。そのシリーズのタイトルとは一見かけ離れた、無機質な事務机やロッカーなどを独特の視点で捉えた作品が本学の卒展でも話題となりました。かつては、街に出て普通に人物などを撮っていた時期もあったそうですが、「もっともっとありふれたもの、どこを撮っているのかわからないくらいありふれたものを撮りたい」という欲求に駆られていったのだとか。日常の光景の中にある面白さを撮りたいと、とにかくたくさん写真を撮りためています。
今回の新作展では6〜9点の展示を予定しているという西澤さん。この日は、2度目の打ち合わせのために『I'm here.』の会場となる(Ruupa)を訪れました。「ありそうでなさそう」といったコンセプトで挑んでいる新作のモチーフは雑然とした西澤さんの自室。デジカメで何枚にもわたって撮りわけた光景を一枚の写真に仕上げる作業の真っ最中です。制作途上の作品をテーブルに広げ、(Ruupa)を運営する「アカオニデザイン」のフォトグラファー三浦晴子さんに意見を求めました。三浦さんも本学で映像を学んだ第4期卒業生。後輩たちの活躍や成長を応援したいという思いから、『I'm here.』の開催にもとても協力的に動いてくれています。
現在、デザイン事務所のフォトグラファーとして活躍している三浦さんの目に西澤さんの作品はどのように映ったのでしょうか。率直な評価を聞いてみると「ありがちなシーンをおもしろく撮るという難しさに挑んでいるところがスゴイと思います。1カ月に前に見せてもらった作品から、次はこう来るだろうと予測していると真逆の方向に行ってしまったりするので面白いですね」。その上で、「ここまでやるのであれば、逆に"いかにも"といった構図があってもいいのでは」とアドバイスも。この『I'm here.』が今回、地元山形で開催されることについても、「山形に住んでいる人々に地元の大学で学んだ学生たちの成果を見てもらえるいい機会になるのでは」と期待を寄せていました。
『I'm here.』山形展、もう一つの取り組みは『実験跡地』による廃村での芸術活動報告や舞踊披露が行われます。『実験跡地』は現代GPプロジェクトで展開している森繁哉教授主宰のチュートリアル。ギャラリー絵遊+蔵だいますを会場に、連日アーティストトークなどのさまざまな企画を展開。さらに、舞踏踊家としても卓越した世界観を持つ森繁哉教授が、創作舞踊"工(つくる)"を披露することになっています。「家を建てることと踊りを踊ることは"創る"という意味においてとても共通していること」。地域性、風土を意識して止まない森教授の舞踊に激しく心打たれることでしょう。
『I'm here. Vol.2|山形展 [絶/景]』
会期=2008年11月5日(水)〜17日(月)
会場=(Ruupa)/ギャラリー絵遊 + 蔵だいます
主催=東北芸術工科大学(卒業生支援センター)
協賛=東北芸術工科大学校友会/卒業生後援会
企画=美術館大学構想室
http://www.tuad.ac.jp/museum/