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学生以上に一般市民の姿が目立ったシンポジウム会場。4人のパネリストの発言に熱心に耳を傾けうなずく人、要所要所でメモをとる人・・・、それぞれがテーマと向き合った2時間半でした。

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東北ルネサンス会議2008〜芸術・平和・人類〜

異ジャンルで活躍する表現者たちが語り合った
「いま、芸術はなにをなしうるか」

2008年11月22日、東北芸術工科大学201講義室にて『東北ルネサンス会議2008〜芸術・平和・人類〜』を開催。学生のみならず多くの一般市民が集まりました。先に行われた俳優・林隆三氏による朗読「烏の北斗七星(宮沢賢治)」の感動さめやらぬ中、写真家・大石芳野氏、映画監督・松浦雅子氏、アートディレクター・北川フラム氏という第一線で活躍する錚々たるメンバーによるシンポジウムがスタート。赤坂憲雄大学院長がコーディネーターを務め、「いま、芸術は何をなしうるか」というテーマのもと果敢な意見交換が繰り広げられました。

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大石芳野氏(写真家) ベトナムやカンボジアなど、戦争・内戦後の惨状を世界に発信。子どもたちの平和を願って撮り続けています。

まず、本イベントの一環として同時期に本館7階ギャラリーで写真展「戦世(いくさよ)の子どもたち」を開催していた、ドキュメンタリーカメラマンの大石氏が発言。戦世の子どもたちの写真をバックに、ベトナムやカンボジア、アフガニスタンで出会った子どもたちが置かれている悲惨な現状を語り始めると、会場はそれまでとは一転、緊張した雰囲気に。しかし、そんな中でも子どもたちは希望の光を失っていないと大石氏は続けます。子どもたちは大人よりも希望を見出す能力に長けているのでは。その言葉にだれもが心を打たれた瞬間でした。

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松浦雅子(映画監督) CMディレクターとして活躍の後に映画監督に。脚本も担当し、女性監督ならではの繊細な作品にも挑戦。

続いて、東北には何かがあると感じて、一昨年、福島県の白河市に移り住んだ映画監督であり、CMディレクターとしても活躍している松浦氏が、自らの芸術論を展開。「なぜ芸術って必要なんだろう」「中学時代にクイーンの音楽に号泣したのはなぜなんだろう」、そんな実体験を踏まえ、頭の中でつくったものは人を動かさないという持論のもとに、音楽の力、芸術の力を、"心でつくったカタチ、他者を思いやるイマジネーション"と表現しました。さらに、「メッセージを伝えるという点では映画も芸術。こういう時代だからこそ、マスメディアの力を借りて伝えていこう。入り口はエンターテインメントでいい、楽しんだ後で何かが起こってくれれば・・・。そうした思いで作品づくりに取り組んでいます」と語ってくださいました。

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北川フラム(アートディレクター) 大地の芸術祭をはじめ、数々の文化事業をプロデュース。芸術による地域活性化で注目を集める。

松浦氏の芸術という言葉を受けて、北川フラム氏は人間の諸活動が芸術であるのに、日本では展示できるものだけを芸術として大切なことを捨ててきてしまったと指摘。「祭りとか床の間とか……、私たちが大好きだったはずなのに芸術じゃないといって大事にしてこなかったと。それらの現実を踏まえて、今は10年後とか先のことを考えるのではなく、じいちゃんばあちゃんたちに喜んでもらえることをやりたい」というのです。確かに、北川氏がプロデュースしている新潟での「大地の芸術祭」や「瀬戸内国際芸術祭(2010年開催予定)」は、それぞれの土地の歴史的背景やそこでの暮らしをとても大切にしているイベント。大地の芸術祭の作品のひとつ"棚田"の背景にある現実を語るなど、北川氏の話は冒頭から「芸術とは人間の営みと遊離して存在するものではない」ということを浮き彫りにするような内容でした。

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赤坂憲雄(本学大学院長/東北文化研究センター所長) 日本思想史・東北文化論を専門とし、東北一円をフィールドとし、埋もれた歴史や文化を掘り起こしている。

各パネリストの仕事や私生活で置かれている立場を反映するように、大石氏と松浦氏からは日本の子どもたちの状況を憂うる声が、そして北川氏からは高齢者や過疎地区への思いが多く語られました。

「東北には人間が生きる命・魂の原点が多く残っているような気がする。東北からみんなが吸収していく時代になるのでは」「バーチャルが席巻する時代だからこそ現場、生身、肉体がキーワードになる」などの発言を結びとし、赤坂大学委員長からは「このシンポジウムに結論はいらない。受け手がそれぞれに何かを感じてくれればいいのです」とのまとめ。改めて「いま、芸術はなにをなしうるか」というテーマとパネリストのさまざまな発言を反芻し、自ら考える機会を与えられたシンポジウムとなりました。

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